高橋秀晴副学長が「第59回県多喜二祭」で講演しました

 令和7年2月22日(日)、秋田県生涯学習センターで、大館市生まれのプロレタリア作家・小林多喜二(1903-33年)をしのぶ「第59回県多喜二祭」が開催され、本学の高橋 秀晴 副学長[専門:日本近代文学]が、「『一九二八年三月一五日』はいかに生まれいかに読まれたか―草稿ノートと同時代評が語ること―」と題して講演しました。

 「県多喜二祭」は、小林多喜二の命日(2月20日)に合わせ、小林多喜二の生涯と文学を学び、その志を広めることを目的に開催され、今年で59回目の開催となります。

 小林多喜二の文壇デビュー作である「一九二八年三月一五日」は、1928年3月15日に共産党の活動家ら関係者1568人が一斉検挙された「三・一五事件」を題材にした小説で、小樽での検挙と過酷な取り調べなど弾圧の様子を克明に描いています。


高橋 秀晴 副学長[専門:日本近代文学]

 日本近代文学者である高橋副学長は、2011年に刊行された「DVD-ROM版小林多喜二 草稿ノート・直筆原稿」を基に推敲の過程を分析しました。高橋副学長は、活動に身を投じた主要人物の心中の描写について、「組合で皆と一緒に、昂奮してゐる時はいゝ、然し、さうでない時は、子供や妻の生活を思ひ、やり切れなく胸をしめつけられた。」、「妻が又苦労するのかと思ふと、膝あたりから、妙に力が抜ける感じがした。」など大幅な挿入、加筆があったことに着目。その葛藤を慎重に描くことで、「観念的な人物像」からの脱却を目指し、「生きた人間を描こうとした意図が見て取れる」と解説しました。

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