本学教員及び学生の研究成果が国際学術誌「Scientia Horticulturae」に掲載されました

 このたび、生物資源科学部生物生産科学科植物生態生理研究室)の小川 敦史教授[専門:作物生理学]、大学院生、学部生の研究成果が国際誌「Scientia Horticulturae」に掲載されました。

 本研究は特許出願済みです。
 特願2024-019299 水耕栽培方法及び栽培装置 小川敦史  金俊輔  武藤大悟  木村涼夏  豊福恭子 2024年2月13日出願

 なお、本研究は本学の学部1・2年次を対象とした「学生自主研究」から研究がスタートし、その後、卒論研究や修論研究に発展し、その成果が学術論文および特許出願に至ったものです。 

論文情報

雑誌名: Scientia Horticulturae
論文タイトル:Irradiating roots of komatsuna (Brassica napus) with various light qualities affects growth and nutrient content in leaves, stems, and roots
著者:Shunsuke Kon,Kyoko Toyofuku,Daigo Muto,Suzuka Kimura,Atsushi Ogawa
☆DOI:https://doi.org/10.1016/j.scienta.2024.113179.

研究概要

 一般に、植物は根に光が当たらない状態で成長する。葉や茎の生長や成分に対する光強度や波長照射の影響は明らかになりつつあるが、根に対する波長照射の影響はほとんど不明である。そこで本研究では、水耕栽培した小松菜の生育とイオン・ビタミン含量に及ぼす7波長の光照射の影響を調べた。その結果、940nmの光照射は対照区と比較して根の乾物重を有意に増加させたが、他の光照射は葉、茎、根に影響を与えなかった。特定の照射波長において、葉および茎中のカリウム、マグネシウム、カルシウム、ホウ素、マンガン、亜鉛のイオン含量は、対照と比較して有意に増加した。葉と茎のイオン含量の変化は、ホウ素を除いて根のそれと一致していた。さらに、ビタミンについては、葉および茎中のニコチン酸、ピリドキシン、リボフラビン、アスコルビン酸、フィロキノンの含量は、対照と比較して照射下で有意に増加した。葉と茎の各ビタミン含量の傾向は根のそれと一致しなかった。また、照射によりイオンやビタミンの含量が対照に比べて有意に減少する場合もあった。これらの結果は、根、葉、茎に光受容機構が存在し、異なる波長の根への照射が小松菜の成長と栄養含量に影響を与えることを示している。

プレスリリース資料

【特許出願済み】野菜の「根」に特定の波長を照射 野菜の成長や栄養成分含有量に影響を与えることを発見!!
 


栽培装置


学部1年次から本研究に取り組む大学院の金 俊輔 さん

小川教授のコメント

 この研究では、普段光の当たらないところで生育しているコマツナの根に特定の波長(色)の光を当てると、直接光が当たった根だけでなく茎葉部(地上部)の成長や栄養成分含有量に影響を与えるということを明らかにしています。普段光りの当たらない根に光を当てるという発想と、それが植物の成長や栄養成分含有量に栄養を与えるという現象は非常にユニークであると思います。今後の展望としては以下の2点があげられます。
 1点目としては、基礎研究として根に特定波長の光を当てることが、どのようなメカニズム で成長や栄養成分含有量に影響を与えているかを明らかにする必要があると考えています。現在代謝物質や遺伝子発現の網羅的解析手法を用いてこのメカニズムを明らかにする研究に取り組んでいます。2点目としては、応用研究としてこの手法が植物工場などの施設栽培において取り入れられるようになればと考えています。現在は茎葉部(地上部)へ特定の色の光を照射して生産性や栄養成分含有量を高める栽培方法が行われている場面がありますが、これに合わせて本研究の成果である根にも特定の色の光を照射することで、さらに生産性や栄養成分含有量を高める栽培ができるのではと考えています。

小川教授

参考「世界の食糧生産に貢献&高付加価値野菜の栽培|生物生産科学科 植物生態生理研究室」