知を鍛錬する―秋田から世界へ、世界から秋田へ
理事長兼学長 福田 裕穂
学長挨拶
今、世界は大きな転換期を迎えています。これまで、世界はグローバル化が進み、その結果、人々の生活は豊かになり、多くの病気も克服され、安全で幸せな未来が待っていると、楽天的に考えてきました。しかし、この数年の間に、新型コロナウイルス感染が世界的に広がり、ロシアによるウクライナ侵攻により世界的なエネルギー・食糧危機が生じ、人間活動に伴う二酸化炭素濃度の上昇によって地球温暖化が進むなど、グローバル化に伴う深刻な危機が次々と世界を覆うようになってきました。グローバル化の明と暗が反転するかもしれない転換期において、真に必要なのは未来を創造する源となる“知”であり、その知を身につけ実践するタフな人材です。そして今こそ、大学が中心となって、未来を創造する源となる知とその知を担う人材を供給すべきだと考えます。転換期にあって、より良い世界を作るための“知”の創成と人材の育成は、抽象的な議論ではなく、それぞれの依って立つ地域での具体的な取り組みの中から生まれると考えています。秋田県立大学は、1999年に創設された新しい大学で、システム科学技術学部・研究科、生物資源科学部・研究科をもち、多数の優れた施設を抱える理系大学です。これまでに「真理探究の精神をもち、広い視野と柔軟な発想のもと、豊かな創造力で、21世紀を切り開いていく人材を育成するとともに、先端的な研究や技術開発を行うことで、秋田県の持続的発展に貢献する」を目標に、グローバルとローカルを共に見据えながら、知の創造と人材育成の実績を積み重ねてきました。その依って立つ秋田県は、自然に恵まれ、広い農地や森林などの資源を有し、電子部品・デバイスなどの未来型産業の発展している地域で、まさにローカルからグローバルへと展開する知の実践の場として優れています。
就任にあたって、私は以下の観点から秋田県立大学を発展させていきたいと考えています。
知の器を広げる―タフで、優しく、挑戦的に
大学には、知の器を広く深くすることが求められます。私は、知の器の大本である人を「タフで、優しく、挑戦的に」をモットーに育成したいと考えます。優しさは、包括性(Inclusiveness)を身につけ、多様な人を認めることから始まり、大学はそのため、ジェンダーバランスに配慮し、多様な人々が集い学ぶ場を整備します。国際的な視野も知の器を広くするために必要で、大学はこれを提供します。一方で、タフさと挑戦性は、以下に示す知の創造や鍛錬に挑戦し、繰り返し失敗する中で生まれるものです。学生だけでなく、私たち教職員も知の器を広げていくために、大いに努力したいと思います。知を創造する―0から1をつくる
転換期においては、既存の知識を学ぶだけでは不十分で、知の創造が必要です。新しい知は、個人の思いや好奇心をとことん追求した中で生まれます。大学の目標である、真理探究の精神をもち、広い視野、柔軟な発想、豊かな創造力のもと、私を含む構成員全員でこれに挑戦したいと思います。知を鍛錬する―秋田から世界へ、世界から秋田へ
知を鍛錬するためには、具体的な課題に向き合うことが必要です。秋田県は課題先進県で、地球温暖化、農業の高齢化、人口減少、森林利用など、世界共通の課題を抱えています。秋田県立大学は、こうした課題に対して、県、地元企業、農業者と連携し、その解決に向けた研究を続けてきています。今後さらにそれを強化し、学生をも巻き込んで、スマート農業、食の6次産業化、未来型の森林利用、デジタルイノベーションなどの新産業・新農業創設に向けた研究を行います。一方で、課題の成果を国際的に発信し、国際的な競争・協調の中で知を鍛えます。このようなローカルとグローバルの往復の中で国際的な拠点としての大学を確立したいと考えています。皆様のご意見は大歓迎です。皆様のご理解を得ながらより良い秋田県立大学をつくり上げて行きたいと考えていますので、ご支援をよろしくお願い申し上げます。
公立大学法人秋田県立大学
理事長兼学長 福田 裕穂
理事長兼学長 福田 裕穂
学歴
昭和47年3月 静岡県立浜松北高等学校卒業
昭和52年3月 東京大学理学部生物学科卒業
昭和54年3月 東京大学大学院理学系研究科植物学専門課程修士課程修了
昭和57年3月 東京大学大学院理学系研究科植物学専門課程博士課程修了(理学博士)
昭和52年3月 東京大学理学部生物学科卒業
昭和54年3月 東京大学大学院理学系研究科植物学専門課程修士課程修了
昭和57年3月 東京大学大学院理学系研究科植物学専門課程博士課程修了(理学博士)
職歴
昭和57年4月 日本学術振興会奨励研究員
昭和58年1月 大阪大学理学部生物学科助手
昭和62年9月 Max Planck Institute for Plant Breeding Research(ケルン市、西ドイツ)文部省在外研究員
平成元年2月 東北大学理学部生物学科助教授
平成6年5月 東北大学理学部生物学科教授
平成7年 10 月 東京大学理学部附属植物園教授
平成9年8月 東京大学大学院理学系研究科生物科学専攻教授
平成12 年 10 月 理化学研究所植物科学研究センター形態形成グループディレクター(兼務)(~平成 17 年3月)
平成25年4月 東京大学副学長(兼務)
平成29年4月 東京大学理事・副学長(~令和2年3月)
令和2年4月 京都先端科学大学バイオ環境学部バイオサイエンス学科教授・学部長
令和2年4月 日本学術振興会学術システム研究センター副所長(兼務)
令和3年2月 第 11 期科学技術・学術審議会委員(兼務)
令和5年4月 公立大学法人秋田県立大学 理事長兼学長 就任
昭和58年1月 大阪大学理学部生物学科助手
昭和62年9月 Max Planck Institute for Plant Breeding Research(ケルン市、西ドイツ)文部省在外研究員
平成元年2月 東北大学理学部生物学科助教授
平成6年5月 東北大学理学部生物学科教授
平成7年 10 月 東京大学理学部附属植物園教授
平成9年8月 東京大学大学院理学系研究科生物科学専攻教授
平成12 年 10 月 理化学研究所植物科学研究センター形態形成グループディレクター(兼務)(~平成 17 年3月)
平成25年4月 東京大学副学長(兼務)
平成29年4月 東京大学理事・副学長(~令和2年3月)
令和2年4月 京都先端科学大学バイオ環境学部バイオサイエンス学科教授・学部長
令和2年4月 日本学術振興会学術システム研究センター副所長(兼務)
令和3年2月 第 11 期科学技術・学術審議会委員(兼務)
令和5年4月 公立大学法人秋田県立大学 理事長兼学長 就任
専門分野
植物生理学、生体制御学