令和3年(2021年)小林学長年頭挨拶

 皆さん明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。皆さんはどのようなお正月を迎えられたのでしょうか。

 昨年はなんと言っても新型コロナウィルス感染症への対応ですね。大学としては、キャンパス内で感染者を出さないことを目標に運営してきました。皆さんには様々なご協力を頂き改めて感謝申し上げます。ここではコロナ感染防止で感じたことを二つお話しします。

①まずは、危機管理の大切さです。
 震災でもそうですが、私達の身の回りで予期せぬことが起こりますと、そこから回避しようと一人一人が好き勝手な動きをしますので、行動に混乱が起こります。コロナ感染も同じです。昨年4月時点では、大学の中でも教職員、学生がそれぞれバラバラに動きがちになりました。現状をどう捉え、同じ意識の上に立ち行動するかの危機管理の大切さを実感しました。そのために行ったことは、感染状況に応じ私達全員が共通認識を持つために、秋田県立大学の運営基準(BCP)の制定(4/23)です。0から5までの五段階としてレベルを規定し、それぞれのレベルで行動制限や授業様式を定めています。レベルがいくつと聞くとだいたいの行動様式が分かるというものです。そしてその行動様式を踏まえ、国や県が出す方針に基づいて本学の対応方針を定め、周知を図ってきました。このやり方が定着すると、感染状況に応じ国や県からその都度ガイドラインが出てきますので、それに基づき本学の方針を改定してきています。すでに方針としては、9回出しました。

②次は、コロナ感染によって私達の生活や、社会の仕組みが大きく変わっていくことが考えられるということです。
 コロナ感染は、私達が当たり前と思っている基本的な行動様式をことごとく否定しました。感染を防止するためには、ご存じのように今までのような対面でじっくり話し合い、コミュニケーションを図ることができません。新聞報道によれば、多くの企業でリモートワークが取り入れられました。リモートワークで最も重要なことは、自分が言いたいことを手短にまとめ、手際よく話ができるスキルが求められることです。学生には、学長特別講義を1年生全員に行っていますが、来年の講義ではこのことを分かりやすく説明していこうと考えています。また大学教育については、遠隔授業が普及することが考えられます。特に、大学が行う社会人教育に大きく影響すると考えられます。今までは、本学に来て受ける科目等履修制度程度でしたが、遠隔になると誰でもどこでも授業が受けられるようになります。飛躍的に社会人教育が普及していきます。これをどう捉え本学の特徴にしていくか、真剣に考えなければなりません。本学の中でも秋田キャンパスと本荘キャンパスという地理的問題がありますが、できなかった授業が可能となります。またやや変な話しですが、先生達の授業が色々な方に見られるようになると、講義のうまい先生に集中していく現象が起きるかも知れません。

 教職員の皆さんに是非お願いしたいことは、コロナによって何が変わるのか、自分の目線で考えてほしいということです。この変化を的確に捉えることは大変重要です。今年に入っても、コロナの感染はまだ収まっていません。今年はオリンピックが予定されていますが、どうなるか誰にも分かりません。感染しないようまだまだ注意深く行動する必要があると考えますので、皆さんよろしくお願いします。

 話は変わりますが、第3期中期計画は、折り返しの年になります。以前の中期計画では、職員が中心になって、目標達成に努力し、教員の皆さんからはやや遠い存在ではなかったかと思います。本来それでは、目標は達成できません。今回の中期計画では、項目毎、本部、部局のアクションプランに落としこみ、実施するようにしています。そしてその結果を自己評価委員会で確認し、次年度の計画に反映していく仕掛けができてきました。つまり、PDCAサイクルができているのが特徴です。県内出身入学生の35%確保、県内就職率を段階的に上げ中期計画終了時には30%にする、大学院定員の確保、地域企業との共同研究件数などの数値目標達成や教育改革等がターゲットです。

 また、私のスローガンである「信頼され愛される大学を目指す」については、秋田を活性化するために大学が自ら考え教職員一丸となって行う大きなプロジェクトの実行を掲げています。進捗について少しお話しします。

 一つ目は、スマート農業です。約2年間かけて計画したものを昨年知事、議会に計画を説明しいています。後押しをしてくれる議員さんも現れています。知事は、秋田におけるDX(デジタル トランスフォーメーション)はこの新しい農業で実現していくことが最も良いと考えているようです。我々としては、大きなチャンスになっています。今年1月には、内閣府に交付金の申請を県と一緒になって行います。

 二つ目は、航空機の電動化を見据えた小型軽量電動モータの開発です。これも一昨年内閣府の交付金の採択を得て進めていて、秋田大学との共同プロジェクトです。本学では、燃料ポンプシステムの電動化とメインエンジンの電動化をテーマとして推進しています。これらを開発するとともに、秋田の企業に技術を移し事業化していくこと、それに必要な人材開発が狙いです。今年はプロジェクトの中心となる開発センターを作っていく年になります。また、秋大とはこの電動化技術教育も含めて大学院において共同サステナブル工学専攻の設置を目指しています。

 三つ目は、上記にも関係しますが、全国的に秋田が注目されている洋上風力発電、つまり再生可能エネルギーを活用した秋田の活性化を考えています。地域における持続可能な社会を構築するためにはどうすれば良いのか、考えなければなりません。産業、暮らし、自然など対象は様々です。大学だけではなく、色々な立場の人を巻き込んで一緒に考えていくスキームを作りたいと思います。

 最後にお正月ですから少し面白いお話をします。
 昨年も言いましたが、休日、秋田にいる時は秋田市内を約1時間半かけて散歩します。その途中に誓願寺と言うお寺があります。山門の入り口に看板があり何かが書いてあります。普通お寺ですと仏教の教えやためになることが書いてあるのですが、ここは少し違っています。
一つ紹介しますと、
 ・70歳 そんなに生きたような 気がしない。
 どう解釈すれば良いでしょうか。
 単純に考えますと、あっという間でした、人生とははかないものということになります。少しひねると、70歳になれば、ワクワクするあるいは楽しい出来事がもっとあると思っていたがまだない。あるいは、もっと人間的に立派になるはずであるが、まだまだ未熟者である。といった自分自身への不満や焦りのようなものを感じます。皆さんはどう感じますか。
最後になりますが、皆様そしてご家族の皆様のご健勝を祈念し私の新年の挨拶といたします。

令和3年1月4日
理事長兼学長 小林 淳一