平成31年度入学式を執り行いました
4月4日に秋田キャンパスの講堂にて、平成31年度秋田県立大学入学式が執り行われ、学部生425名、大学院生82名が入学を許可されました。
小林淳一学長は式辞の中で、ビジネスモデルの転換やAIの進展など社会環境の様々な変化を挙げながら、「課題の多い世の中だからこそ萎縮することなく、むしろチャンスと捉え、この秋田県立大学で自分を磨き、知力、体力をつけ、将来に備えて欲しい」と式辞を述べました。
また新入生を代表して、生物資源科学部の渡部亜衣理さん(秋田県/聖霊女子短期大学付属高等学校出身)が「先輩たちとともに本学の無限の可能性を切りひらいていきます」と力強く宣誓すると、在学生を代表してシステム科学技術学部の梶原美紀さんが、「秋田県立大学には、学生自主研究や学生チャレンジサポート制度等、挑戦できる機会が沢山あります。様々なことにチャレンジして充実した大学生活にしてください。」と歓迎の言葉を述べました。
【学長式辞全文】
秋田県立大学に入学された皆さん、おめでとうございます。秋田県立大学の教職員を代表して、皆さんの入学を心から歓迎致します。また、皆さんのご家族はじめご関係の皆さまにも、心からお祝いを申し上げます。
秋田県立大学は、21世紀を担う次代の人材育成と、秋田県の持続的発展に貢献することを理念として、1999年に創立され、本年で開学21年目を迎えました。この間に本学を卒業した卒業生総数は約7,200名になり、現在さまざまな分野で活躍しています。今年の6月7日には、創立二十周年を記念して式典・祝賀会を行います。また、これに先立ち午前には一般の方も参加できる特別公開講演会をこの講堂で開催します。講師としては、2015年ノーベル生理学・医学賞を受賞した北里大学特別栄誉教授の大村智先生をお迎えします。先生は、微生物が生産する有用な天然有機化合物の探索研究を45年以上行い、これまでに480種を超える新規化合物を発見し、それらにより感染症などの予防・撲滅、創薬、生命現象の解明に貢献されています。大勢の方に、ご参加いただければ幸いです。
さて入学生の皆さん、皆さんがこれから生きる世界はどうなっていくのでしょうか。従来、ビジネスを行う場合の利益の源泉である付加価値は、製品の性能や機能にありました。つまり製品であるハードに価値を付け、そこから利益を生み出すというビジネスモデルを続けてきました。このモデルには、良いものを作れば売れるという発想が前提にあります。しかし、最近は、そこが変わってきています。世の中にはものが溢れ、必要なものは充分あります。従って良いものを作っても必ず売れると言う保証はなくなりました。家電製品、パソコン等がその代表です。顧客は、その製品が欲しいのではなく、それを使うことによって自分の満足を得ようとしているわけです。つまりこれからのビジネスとは、使われるシーンを想像しそれに必要な環境や情報を提供する事です。たとえば、目的地に行く場合、短時間で、あるいは最も安くというニーズに対して答えを提供します。スマートフォンやタブレットが欲しいのではなく、情報が欲しいわけです。従って、ニーズを解決するアイデア、ソフトウエアに付加価値を求めるビジネスが主流になってきています。このことは一見簡単そうに見えますが、ニーズを発見する創造性とそれを解決するスキルが強く求められます。
もう一つ特徴的なことを申し上げますと、AIつまり人工知能の進展です。半導体デバイスは、約2年で性能が倍になっていきます。そしてそれに伴ってより高度なソフトウエアが開発されます。シンギュラリティー、つまり私達を取り巻く社会の変化が連続的ではなく、ある時点から不連続に進展したように感じられ、私達の想像をはるか超えた時代が現れるとも言われています。皆さんが将来就職した時、その仕事が常に続くわけではなく、仕事内容、質が大きく変わっていくことを意味しています。AIを上手く使いながらAIでは出来ない創造性の高い仕事が求められることになります。この様な時代背景の中で皆さんは将来仕事をし、生活していくことになります。課題の多い世の中だからこそ萎縮することなく、むしろチャンスと捉え、この秋田県立大学で自分を磨き、知力、体力をつけ、将来に備えてほしいと考えます。
皆さんに大学生活を送る際、是非心にとめて頂きたいことを二点お伝えします。一つ目は、大学生としてしっかりと自分を磨くマインドを持つことです。大学は高校とは全く違います。大人に向けての準備段階に入ります。自分で考え行動することができます。失敗してもかまいません。失敗したら反省し修正すればよいのです。その繰り返しを通し皆さんは成長します。将来の夢を見つめながら主体的に学ぶ姿勢が大事です。本学には、学生自主研究制度が開学以来あり、全国的にも有名です。教員の指導のもと1、2年生から研究の感覚を、体験を通し身につけます。また数学や物理でつまずいた場合は、皆さんの先輩が教えてくれる「駆け込み寺」と言う仕掛けもあります。学生生活全般に対して、本学の教員、職員はきめ細かく皆さんをサポートしますから、安心してください。一方、友達を作るのも大事なことです。サークルや、ボランティア活動も盛んです。自分で学ぶ以上に友達から得るものは大きいです。
二つ目は、秋田を知って欲しいと言うことです。東京への一極集中がますます加速しています。その結果、地方では人口減少が進み、秋田県はその先進県です。この流れを少しでも止めるためにはどうすればよいか、待ったなしの状態です。そのためには、地方というものを徹底的に分析し、その価値を明らかにしていくことが求められています。秋田は歴史的に見ると資源立国です。かつては鉱山資源、石油、さらにはあきたこまちで有名なお米、そしてこれからは、風や地熱等の再生可能エネルギー資源が秋田を支えていくことになると考えます。また自然災害が最も少ないところでもあります。この様な風土で暮らす人々は心に余裕があり暮らしが豊かです。従って、皆さんには、秋田の自然、そこで生活する人たちとの出会いを通して感じる人間性、様々な行事の奥深さ、それらに感動し心の豊かさを養ってください。秋田の良さを実感することによって将来に向けての豊かな人生の価値観を身に付ける事ができます。そして、卒業する時には、秋田県立大学に入ってよかったと感じることを願っています。
最後に大学院のことに少し触れておきたいと思います。本学のような理系の大学においては、学部卒業後に大学院に進学して、修士課程以上を修了することが求められるようになってきました。それは、専門分野の深化により、専門性を十分身につけるには、学部の四年間の教育だけでは足りなくなってきているためですが、前述したような社会の大きな変化に柔軟に対処できる能力を大学院で十分身につけて欲しいとの願いもあります。皆さんの先輩たちの多くが、大学院を修了することにより、学部卒の場合に比べ、より専門性を活かせる上級の職種に就いて、さまざまな分野で活躍しています。ぜひ大学院進学のことも選択肢に入れて、一年生の時から大学生活全体の設計を心がけて下さい。
皆さんがこの秋田の地で勉学に励むと共に、大学でしか味わうことのできないたくさんの体験、思い出を作り、卒業時には成長が実感できるような大学生活が送れることを祈念し、学長の式辞とします。
学長 小林 淳一