「秋田県立大学ビジョン2033」を策定しました

 令和5年9月12日(火)、秋田県庁において、福田 裕穂 理事長兼学長 が記者会見を行い、『秋田県立大学ビジョン2033 ―地域課題から世界へ―』を公表しました。

 本指針は、地域に根差した公立大学として、2033年の未来社会の創造に貢献すべく、本学が社会の改革の先導に立ち、「新たな知」の創成、および未来を担う人材を供給するための指針となるものです。

 今後も、教員と職員が協働し、大学が一丸となって、ビジョンの実現に向けて一層邁進する所存です。
 

趣旨

21世紀の1/4が過ぎようとしている今、世界では物流手段、インターネット技術、自由貿易などの進展によりグローバル化が加速されている。一方で、グローバル化の急速な進展に伴い、価値の多様化、社会や人間関係の複雑化、さらには地球環境の悪化が進み、今、世界は大きな転換期にある。このような転換期には、「新たな知」の創成を担う大学が主導してより良い社会を作り上げていく必要がある。

秋田県は課題先進県で、農業の高齢化、人口減少、地球温暖化による環境劣化など、世界共通の課題を抱えている。この課題解決は地域を活性化するだけでなく、得られた「新たな知」を世界と共有することにより、未来社会の創造を先導することができる。

そこで、10年後の2033年のあるべき未来社会を想定し、秋田県立大学はその未来社会の創造に貢献すべく、社会の改革の先導に立ち、新たな知を創成するとともに、未来を担う人材を供給することを目指す。このための指針である、秋田県立大学ビジョン2033を策定する。

秋田県立大学理事長・学長 

秋田県立大学ビジョン2033―地域課題から世界へ―

ビジョン 1:〔教育〕「知の器」を広げる − タフで、優しく、挑戦的に
世界の転換期にあたり、将来が見通せない状況となっています。転換期においては、国際的視野と、これまでの常識にとらわれない発想と行動が必要となります。本学では、こうした世界の状況にあって、未来の世界の中核として活躍できる学生の育成をめざし、「タフで、優しく、挑戦的に」をモットーにして、学生の知の器を広げる教育を行います。

ビジョン2:〔研究〕未来の知を創成し、地域の課題解決/国際共創の中で知を鍛える
転換期においては、既存の知識を学ぶだけでは不十分で、知の創造が必要です。新しい知のシーズは、個人の思いや好奇心をとことん追求した中で生まれます。大学の目標である、真理探究の精神をもち、広い視野、柔軟な発想、豊かな創造力のもと、これに挑戦します。一方で、世界が複雑になる中で、未来をつくる知の創出には、さまざまな知恵や技術の連携・融合が必要です。そのため、大学内の農工融合を推進するとともに、大学を超えた研究連携を推進します。知のシーズは社会の中で磨かれて初めて真の知となります。地域の課題解決に向けた先端研究を知のシーズの鍛錬の場として強力に推進します。同時に、国際的な競争、共創の中で知を鍛錬します。

ビジョン3:〔社会連携〕地域の課題解決から世界へ展開するローカルからグローバルへ
秋田県は課題先進県で、農業の高齢化、人口減少、地球温暖化による環境劣化など、世界共通の課題を抱えています。これらの課題解決に向けて、スマート農業、食の6次産業化、未来型の森林利用、グリーントランスフォーメーションなどの産・農・学・公共創研究を展開します。この課題解決は地域の新産業・新農業創出に貢献するだけでなく、得られた知を世界と共有することにより、未来の世界の創成を先導することができます。

ビジョン4:〔運営・経営〕多様性に富む場を形成し、大学を活性化する
激動する世界の中で、未来を志向する研究・教育の体制は、それに相応しいものに変えていく必要があります。分野融合研究の推進体制の構築、国際化に対応した組織変革、多様性に目を向けた制度改革を行います。改革を、スピード感をもって進めるためには、学長のリーダーシップが必要ですので、リーダーシップが発揮できる体制とそれをチェックする体制を整備します。

今後のアクション

▶アクション1:〔教育〕
①自主的に課題を解決する教育の推進

学生の自主研究の推進、課題解決型のキャップストーンプログラムの導入などにより、課題解決能力を育み、タフで挑戦的な学生を育てる。

②国際性を鍛える教育の充実
海外交流の促進、国際教養大学との連携強化などを通して、学生の国際性を鍛える。

③農工連携教育の強化
システム科学技術学部と生物資源科学部の連携によリ、スマート農業、グリーントランスフォーメーションなどの先進融合技術に対する教育を推進する。

④教養教育の強化
総合科学教育研究センター機能を強化することにより、知の器を広げる教養教育を充実させる。

⑤起業家育成教育の推進
秋田県内の4国公立大学及び県外の研究・教育機関と連携し、起業家育成教育を推進する。

⑥大学院教育の強化
将来の知の創出に貢献するプロフェッショナルとして、修士人材、博士人材の教育を強化する。また、奨学金制度の見直し、英語入試の検討、大学院入試広報の充実などを通して多様かつ意欲ある大学院生の獲得をめざす。

▶アクション 2:〔研究〕
①知のシーズとなる独創的研究の推進

知のシーズを生み出す独創的な研究を推進する。また、研究の専門家による公正な評価と予算獲得のため、科学研究費などの競争的資金への応募を促進する。

②産業や農業との共創による知の実践研究の推進
地域産業や地域農業の課題解決に向けて、産・農・学・公(自治体)の連携による実践的研究を推進する。また、スタートアップ企業が学内でも活躍できる体制を整備する。

③農工融合研究の促進
グリーントランスフォーメーション、スマート農業、食の6次産業化、森林と産業との共存などの農工融合研究を促進する。このため、すでに設置しているアグリイノベーション教育研究センター(Agri-Innovation Education and Research Center: AIC)の体制を強化する。

④新たな知の創成プロジェクトの推進
新たな知を創出するために、国をも巻き込んだプロジェクトを推進する。実施中の電動化システム共同研究、COI-NEXT(技術x教養xデザインで拓く森林資源活用による次世代に向けた価値創造共創拠点)の推進に加え、Future Agriculture from Akita (FAGA)プロジェクト、地域中核大学プロジェクトなどを設立する。

▶アクション3:〔社会連携〕
①自治体・地域企業・地域農業団体との連携による地域課題解決への貢献

地域課題の解決に向けて、スマート農業、食の6次産業化、未来型の森林利用、グリーントランスフォーメーションなどの産・農・学・公共創研究を展開し、地域の新産業・新農業創出に貢献する。こうした組織対組織の産・農・学・公共創の推進に加え、コンサルティングや比較的少人数での共同研究を通して、地域産業や地域農業の発展に貢献する。また、地域産業の起爆剤としてのスタートアップ企業の設立を支援する。

②学生参加型地域活性化プログラムの推進
キャップストーンプログラムなど地域に密着した教育プログラムを実施し、地域と学生、地域と秋田県立大学との連携を強化する。

③リカレント、リスキリング教育を介した地域の活性化の推進
アグリイノベーション教育研究センター(AIC)なども活用し、多様な経験をもつ地域の人々にリカレント・リスキリング教育を行い、新たな時代に即した知の学びを支援する。これにより、地域の活性化に貢献する。

④地域への知の発信の強化
学内外の第一線の研究者による講演を広く地域に公開し、最新の知を発信する。また、地域のシニアを対象にした「いつでも青春キャンパス」などの体験型の知の発信を継続する。

▶アクション4:〔運営・経営〕
①大学運営体制の見直し

大学改革を、スピード感をもって進めるために、学長のリーダーシップが発揮できる体制とそれをチェックする体制を整備する。また、教職員が創造的かつ意欲をもって仕事に取り組めるように、業務の効率化や組織の見直しに取り組む。

②秋田国公立大学連携の強化
秋田の学術・産業・文化の発展に向けて、秋田県内の4国公立大学の連携を強力に推進するとともに、県外の研究・教育機関との連携を拡大する。

③大学入学者獲得に向けた取り組みの強化
意欲的な県内高校生獲得に向け高大連携を推進するとともに、時代に即した入試制度を導入する。また、留学生も含めた多様な学生の入学を促進する。

④4キャンパスの連携の強化
秋田、本荘、大潟、能代4キャンパス間の連携を強化し、人的交流や施設・設備の共有化を促進する。

⑤不断の大学内組織の見直し
将来のあるべき大学像を見据えて、不断の学内組織の見直しを行う。

⑥卒業生・支援者ネットワークの強化
大学の長期にわたる発展のために、卒業生・支援者のネットワークを強化する。

⑦広報活動の強化
意欲ある高校生を獲得するため、大学のプレゼンスを高めるため、また広く大学への支援を得るために、社会を先導する大学の姿を、積極的かつ平易に広報する。