学生自主研究「福島県における放射線量の分布と気圧・気温・風との関係」が秋田魁新報に掲載されました

 生物資源科学部生物環境科学科2年の鈴木ことみさん(福島県楢葉町出身)が取り組んでいる、令和5年度学生自主研究 「福島県における放射線量の分布と気圧・気温・風との関係~秋田県との違いに着目して~(指導教員:井上誠准教授[専門:気象学]」が秋田魁新報に掲載されました。

「放射線量と気象を研究「復興に貢献したい」福島楢葉町出身の鈴木さん」3月9日付け秋田魁新報電子版
 
 小学1年生の時に東日本大震災が発生し、直後に発生した原発事故により古里を離れて長期避難を余儀なくされた経験のある鈴木さんは、将来は地元福島の復興支援に携わりたいとの思いから、井上准教授が担当する「気象学」や「地球科学」の授業を受講し、地圏・大気・水・土壌や気象データの解析手法など幅広い知識と技術を習得しました。気象や環境などの面白さと奥深さに魅了されたことを契機に、現在、井上准教授の指導のもと、大気中の放射線量と気象条件との関連を調査する「学生自主研究」に取り組んでいます。

 鈴木さんは、気象観測やデータ解析等を通じて、風向や風速、気温や湿度といった気象条件が、空間放射線量の値にどう影響するかを明らかにするため、福島県内7地点と秋田市の計8地点における放射線監視装置(モニタリングポスト)の観測データ、および地元の福島県楢葉町と秋田市(秋田港セリオン)で自らが観測した空間放射線量や気象データとの比較や解析を行いました。

 これまでの解析では、空間放射線量の高い範囲が、原発事故発生当時の風向きに従って帯状に分布していることなどが明らかになりました。これらの研究成果は今後、除染エリアの決定や除染作業の短縮など、効率的に除染作業を進めるうえでの貴重なデータとしての活用が期待されます。

 今後は、分析範囲をさらに拡充し、風向きと放射線量との関係性を解析することにしております。さらに、風だけではなく、原発事故発生当時の気象条件(例:同じように風が吹いていたとしても雨が降ってた場合、空気中の放射性物質が雨とともに地上に落ちる可能性がある等)も考慮しながら細かく解析を進めることにしています。

鈴木ことみさんのコメント

 秋田から楢葉町の実家へ高速道路で帰省する途中、除染で出た廃棄物の黒い袋が並んでいる光景を目にすると、復興はまだまだなんだと実感させられます。私が解析したデータと考察を使って、復興を進める上での除染作業の効率化などに役立てることができれば嬉しいです。これまでの様々な支援に感謝しつつ、一刻も早くかつての街並みを取り戻すために、自分に何ができるのか考え、将来にわたって行動し、自分が故郷の復興に力強く貢献できるよう頑張ります。

井上准教授のコメント

 鈴木ことみさんは、学業にも趣味にも真剣に取り組む学生です。空間線量率の測定原理を学んだ上で自ら観測することを決め、公的機関のデータと比較して得られた信頼できるデータに対し考察を行うなど、この分野の技術を磨いて研究をどんどん進めていきました。目的達成のために何をすればいいのかを自分で考えることができ、自分で決めたことは最後まで責任を持ってやり遂げることができます。また、興味の範囲が広く、会話の引き出しが多いのも彼女の魅力です。環境・気象の議論のほか、野球・音楽の話でも盛り上がり、最新の情報をたくさん教えてくれます。地元・福島を中心とした東北地方の地域活性化に貢献できる人材として期待しています。
 

研究指導する井上誠 准教授と

秋田港セリオンで空間線量等を観測


ヤクルトスワローズの熱狂的なファン!!


データ解析に加え観測手法を習得することも研究の目的


趣味はバンドの"追っかけ"とギターの弾き語り!!


研究グループ名は「つばくろうのへや」

学生自主研究

 学生自主研究は新入生と2年生が行うことができる本学独自の研究制度です。学生は研究テーマを決定し、グループを組織し、計画を立てて実施することになります。また、指導教員が必要なアドバイスを行い、実験スペースや機材、そして研究資金(1件あたり15万円程度を限度)を交付して、学生の研究をバックアップします。この制度は主役が学生自身です。入学前から興味を持っているテーマやこれから自分が取り組もうとする分野などに積極的に取り組むことができます。