令和5年度秋田県立大学卒業式・大学院修了式を執り行いました

 3月22日(金)、秋田キャンパス講堂において、多数のご来賓並びに保護者の皆様方のご臨席のもと、「令和5年度秋田県立大学卒業式・大学院修了式」が執り行われ、学部生391名、大学院生102名が決意と希望を胸に卒業・修了し新たな一歩を踏み出しました。

 式では、学生の代表が福田裕穂学長から学位記や修了証書を受け取りました。
 福田学長は、新型コロナ感染拡大によりキャンパスにも大きな影響が出た学生生活を振り返り、「新型コロナウイルスパンデミックに直面し、学生生活が制限されましたが、それを乗り越えこの卒業・修了の日を迎えらました。その努力に心より敬意を表します。皆さんが実践した不自由さの中での勉学や学んだ「知」は今後も、新しい実践を生み出し困難を乗り越える武器になるはずです。国際情勢や地球規模での環境変動など、今、世界は転換期にあります。(アップルコンピューターの創業者Steven Paul Jobsの言葉を引用し)Stay hungry, Stay foolish!!予測不能な未来をリードしていくのは皆さんです。これまでの経験が使えない分、とりわけ挑戦が必要です。健康に留意され、それぞれの環境の中で成長し、社会で活躍してください。」と述べ、学生たちを激励しました。

 また、卒業生・修了生代表のシステム科学技術学部 知能メカトロニクス学科の小藤 美咲さんは「今から4年前、新型コロナウイルスの影響で、入学式が中止になりオンライン授業から始まった大学生活は入学前に思い描いていたものとは全く異なるものでした。新たな環境の中での慣れないオンライン授業やこれから大学生活を共にする友人と会えない期間が続くことに、日々不安を感じ戸惑うことも多々ありましたが、教職員の皆様や先輩、そして友人たちのサポートのもと、充実した大学生活を送ることが出来ました。今後、私たちが社会へ貢献できるよう責任と自信を持って、それぞれの目標に向かって精進します。」と答辞を述べました。

 式の終了後には、友人や後輩らと記念撮影をして、別れを惜しむ卒業生らの姿が見られました。皆様の新しい門出を心よりお祝いいたします。
 


卒業証書・学位記授与


卒業証書・学位記授与


卒業証書・学位記授与


卒業証書・学位記授与


学生表彰


学生表彰


学長告辞


来賓祝辞 佐竹秋田県知事


送辞 生物環境科学科 須佐 拓真 さん


答辞 知能メカトロニクス学科 小藤 美咲 さん


学歌斉唱


学歌斉唱


姉は卒業!! 妹は今春、本学に入学!!


大学院修了生

学長式辞全文

 卒業生のご家族の皆様、ご来賓の皆様、本日は秋田県立大学の卒業式・大学院修了式にご出席いただき、まことに有難うございます。

 本年度、システム科学技術学部において231名、生物資源科学部において160名が学士号を取得し、大学院システム科学技術研究科では68名が修士号、3名が博士号を、生物資源科学研究科では、29名が修士号、2名が博士号を取得し、大学を卒業、大学院を修了します。大学を代表しまして、皆さんの卒業及び修了を心からお祝い申し上げます。

 皆さんは、小学校入学から数えて、短い人で16年、長い人では21年の学生生活を終えて、いよいよ社会へと羽ばたきます。長い間の勉学、本当によくがんばりましたね。また、この長い勉学の期間を支え続けた、保護者をはじめご家族の皆様に心よりお喜びを申し上げます。この間、皆さんはこれまで誰も経験したことのない試練を受けました。高校から大学生活のまさに青春真っ只中に、3年以上にわたって新型コロナウイルスパンデミックに直面したことです。このために、さまざまな行動が制限され、とりわけ人と人との接触が禁止され、かつてない不自由を余儀なくされました。そうした厳しい状況でも、皆さんは、インターネットやさまざまな通信ツールなどを柔軟に活用しながら勉学に励み、この卒業・修了の日を迎えらました。その努力に心より敬意を表します。この皆さんの未曾有の経験はこれから社会に出て必ず活きるものと思います。

 さて、卒業にあたって、本学での学びを思い出している人も多いかと思います。皆さんは何を学びましたか。大学で皆さんは、真の「知」を学んだはずです。解答のある課題の解き方を中心に学ぶ高等学校までの勉学と違い、大学の勉学は、自主研究や卒業研究に代表されるように、解が示されていない社会や学問上の課題に正面から向き合い、その解答を得るべく努力する、というものでした。解答に向かう道が用意されていない中で、手探りで道を作っていく作業でもありました。こうした、真の「知」を身につけ、見出すためのアプローチは、社会において最も重要な作業です。この本学での学びは、社会における皆さんの行動の道しるべになるはずです。ぜひ大学での楽しかったあるいは苦しかったこの営みを思い出し、社会での活動に活かしてほしいと思います。

 私は昨年4月に学長に就任いたしました。就任後、教職員、学生、知事をはじめとする県の関係者、さまざまな市町村長、地域企業の皆さんと議論し、秋田県立大学ビジョン2033を作り、昨年9月に公表しました。各テレビ局のニュースや新聞にも取り上げられたので、知っている人も多いのではないかと思います。このビジョン2033は、10年後のあるべき未来社会を想定し、秋田県立大学がその未来社会の創造に貢献すべく、社会の改革の先導に立ち、新たな知を創成するとともに、未来を担う人材を供給することを目指すための指針です。この中で、教育、研究、社会連携、経営/運営の4つの分野のビジョンと21のアクションについて述べました。そして、教育のビジョンとして、「タフで、優しく、挑戦的に」を掲げました。私が学長として送り出す最初の卒業生となる皆さんにも、「タフで、優しく、挑戦的に」という言葉を贈りたいと思います。

 今、世界は転換期にあります。ウクライナ、中東パレスチナ、ミャンマーなど世界の至る所で戦争が起き、多くの人命が奪われています。こういった戦争で亡くなるのは子どもや老人や女性など弱い立場にいる人が多く、例えば、ガザの街が破壊され人々が亡くなられた方を悼む姿が映される映像を見るたびに本当に胸が痛くなります。特定の地域で起こっている戦争も決して対岸の火事ではなく、私たち自身の問題でもありますし、世界的な大戦争になる可能性すら孕んでいます。また地球規模での環境変動も明白になり、その影響がますます拡大しているように見えます。昨年夏に、秋田県では洪水やその後の記録的な猛暑がありましたが、これらも世界的な地球変動の一環だと思っています。地球環境の変動にしても世界の戦争/紛争にしても、これまで私たちが思い描いてきたバラ色の未来とは違っていて、世界は明らかに新しいフェーズに入ったのだと思います。未来の形はまだ見えていませんが、この予測不能な未来をリードしていくのは若者である皆さんなのです。平和で、互いの自由が尊重され、豊かに暮らせる社会を、ぜひ作っていってください。先が見えない中で、手探りでも前に進むためには、しかもそれを続けるためには、タフであることが必須です。それでも、突然の災害などが起きて、それまでのプランが台無しになることもあるかもしれません。その時にもしなやかに立ち上がるタフさが必要だと思います。私は、若い皆さんには私たちの世代にはない幾つもの素晴らしい技や精神があると思っています。私たちには、皆さんのようにすごいスピードで携帯の文字を打つことはできませんし、いとも軽やかにネットで人につながることもできません。人との関係では、若い人たちは、とても優しいと思っています。この優しさをどうぞ持ち続けてください。さらに一歩進んで、その優しさを、inclusiveness―SDGsの根本的考え方ですが、日本語に直すと、誰一人取り残さないという意味になります―この精神へと昇華させていただきたいと思います。平和で豊かな暮らしを創出するためには、このinclusivenessが必要なのです。

 最後に挑戦的であることについてです。皆さんは、Steven Paul Jobsを知っていますか。普通は、Steve Jobsと呼ばれています。iPhoneなどの発表会に、ジーンズ姿で颯爽と現れ、新しい機能を楽しげに発表していました。言わずと知れたアップルコンピューターの創業者で、パソコンの生みの親です。そのSteve Jobsが、2005年のスタンフォード大学の卒業式での祝辞の締めくくりに、社会に出る若者たちに向かって、挑戦的に生きてくださいとの願いを込めて、こんな言葉を投げ掛けています。Stay hungry, Stay foolish! 安定した世の中であれば、これまで積み重ねてきた知恵や経験を未来の行動に当てはめて実践すればいいのですが、予測不能な社会の中で、これまでの経験が使えない分、とりわけ挑戦が必要です。この状態は、実は、経験の少ない若い人にとってチャンスといえます。経験を積んだシニアとも、対等に勝負できますし、むしろ若いほど思考が柔軟だからです。その分かりやすい実例は、明治維新、Meiji Revolutionとも呼ばれる革命です。その原動力となったのは、強い意志を持った若者たちでした。

 大学院でさらに研究を続ける皆さんにも同じ言葉を贈ります。研究は挑戦と失敗の繰り返しで、たくさんの失敗に耐え、新たな挑戦へと向かうためにはタフさと挑戦のリンクが必要だからです。そして、その先にある、まだ誰も見たことのない新しい知を自分が真っ先に手にする喜びへとつながるはずです。
新型コロナウイルス感染症も5類対応となり、不自由さはかなり取り除かれてきましたが、社会は大学より不自由さが多いかもしれません。しかし、皆さんが実践した不自由さの中での勉学や学んだ「知」は、困難の中でも、新しい実践を生み出し困難を乗り越える武器になるはずです。新型コロナウイルスパンデミックを乗り越えた皆さんの社会での活躍を心よりお祈りします。

 最後に、県外に出られる皆さんは、秋田の良さを周りの人たちに宣伝してください。そして、なるべく多くの機会を作ってまた秋田にお出でください。卒業、修了される皆さんが健康に留意され、それぞれの環境の中で成長し、活躍されることを祈念し、学長の告辞とします。

 本日は卒業・修了、誠におめでとうございます。
  令和6年3月22日
 学 長 福田 裕穂