【FROM NEXT STAGE】社会で活躍する卒業生インタビュー 

百目木幸枝さんプロフィール

2009年  生物資源科学部 生物生産科学科卒業
2011年  北海道⼤学⼤学院⽣命科学院修了
 〃     科学系ベンチャー、株式会社リバネスに入社。8年間、東京都と大阪府で勤務。
2019年  ⾃然の中での⽣活に憧れを抱き、北海道へ移住
2022年  北海道網⾛郡美幌町「さいこうファーム」を立ち上げ、ライター業「再考編集室」と兼業
    家族は、旦那様と2019年生まれの長男、2022年生まれの次男、そして猫1匹

農業について

 実はオホーツク地⽅は、⼗勝地⽅に次ぐ農業地域で、広⼤な⼤地で最新式の農業が⾏われています。私たちが農業を⾏う美幌町も⼩⻨やテンサイ、ジャガイモなど「畑作三品」と呼ばれる作物を作る農家が多く、平均農地⾯積は30haほどです。私たちは、2019年に第三者継承で美幌町に移住し、3年間の農業研修を経て、2022年に新規就農を開始しました。農地⾯積が6ha程度のため、畑作ではなく露路での野菜作りをしています。メインはブロッコリー、スイートコーン、⾷⽤ジャガイモ、サツマイモなどです。市場出荷はしておらず、近隣のスーパーや飲⾷店への出荷、通販などを⾏っています。この辺りの農家さんと⽐べると、規模は⼤きくありませんので、付加価値をつけた野菜の出荷やブランド化を目指しています。2023年には、東京の⾼級スーパーへの出荷を⾏うことができ、目標への第⼀歩を踏み出しました。2022年は⾬が降りすぎて⼤苦戦、2023年は暑すぎて⼤苦戦、と農業の難しさに直⾯する⼀⽅で、作ったものを誰かが⾷べてくれることに対してやりがいを感じています。
 

ライター業について

 まだ明⽂化されていない、⾃然の美しさ、⼈の温かみなどを⾔葉にして発信する「再考編集室」という編集・執筆ユニットを夫とともに⽴ち上げ2020年から活動しています。企業の求⼈記事、WEBコンテンツの作成、SNSの運営、美幌町のふるさと納税応援サイトでのコンテンツ作成など地域〜都市圏まで様々な企業様とお仕事をしています。また前職の経験を活かして、サイエンスライターとしても活動をしており、企業の科学メディアや、国の情報発信サイトのコンテンツの作成などを⾏っています(海外とのやりとりも)。地方はライター不⾜なので、需要があり、いつも⾯⽩い出会いに恵まれます。また、農業とライターの2つの仕事を⾏う私たちを地域の⽅々が⾯⽩がってくれ、様々なお話をいただくことができます。
 


ライターとしても活動


収穫したトウモロコシをホリエモンさんが
カレーパンに使用してくれました

⽣活について

 2人の息⼦達が⽣活のすべてを⽀配しています。家事、育児、農作業に追われ、気がつくと寝落ちし、夜中に目を覚ましては、ライターの仕事を進める毎⽇です。何事も思ったペースでは進まず、やきもきすることもありますが、少しずつ成⻑する息⼦たちの姿に癒やされます。縁もゆかりもない⼟地への移住でしたが、近隣の皆さんが本当に優しく、息⼦たちはたくさんの温かい⼈たちとの繋がりと⼤⾃然の中ですくすくと成⻑しています。ぜひ、夫が毎⽇記録しているブログで私たちの⽇々の様⼦を御覧ください。
 

県⼤⽣時代の思い出

 秋⽥県⽴⼤学に⼊学してよかったと今でも思います。理由は3つ。
  1つ目は、在学1年目から研究環境に⾝を置くことができたことです。学生⾃主研究では1年次から2年間、植物資源創成システム研究室(指導教員:山本好和 名誉教授)で、「四葉のクローバーの組織培養」を⾏いました。半年以上上⼿くいかず、試験管がカビだらけになり困り果てましたが、1年⽣の冬休みに試験管の中に脱分化した組織を⾒つけて、暗い培養室の中、⼀⼈で喜んだことを覚えています。研究の⾯⽩さを早い段階で知ることができ、その後のキャリアへのモチベーションにつながりました。様々な分野を知りたかったため、3年⽣からは植物遺伝育種研究室に所属し、モデル植物であるシロイヌナズナを使った突然変異体の原因遺伝⼦の解明について研究しました。目に⾒えない植物の体の中でどのような変化が起こっているか、担当教員の渡辺 明夫 准教授とたくさん議論して、考えていったことや、だんだんと原因遺伝⼦を絞り込み、最終的に遺伝⼦を決定できたこと、得られたデータの意義を第三者にも分かる様にプレゼンや卒業論⽂を作り込んだことなど、⼤変でしたが本当に達成感を感じる⽇々でした。これらの経験が⼤学院進学のモチベーションにもつながりました。
 


植物遺伝育種研究室 前列一番右が百目木さん


卒業式 前列右から2番目が百目木さん

 2つ目は、圃場実習です。櫻井 健二 教授や 藤 晋一 教授など、多くの先⽣⽅からご指導いただき、トマトやスイカなどたくさんの種類の作物栽培を体系的に学びました。農業技術の素晴らしさや、科学的な⾯⽩さを知ることができました。例を挙げるとキリがないのですが、台風前にトマトの⽀柱の誘引を補強せず、風に倒れたトマトの前で、⾃然の厳しさや、準備や対策の⼤事さについて櫻井先⽣に教えていただいた事を強く覚えています。現在、就農に⾄ったのも、これらの経験が⽣きています。

 3つ目は、つながりが今に⽣きていることです。たくさんの先⽣⽅や先輩、後輩、友⼈たちと仕事やプライベートを通して連絡を取り合っています。離れてはいますが、みんなそれぞれの場所で新しい挑戦をしていることが私の励みにもつながっています。最近 だと、藤 晋一 教授川上 寛子助教(当時、⾃主研究時代からの後輩)がはるばる美幌町まで訪ねてくれて、病気が発⽣したブロッコリー畑で対策⽅法について教えてもらいました。
 


圃場実習の様子


(左)川上 寛子助教 (中)藤 晋一 教授

将来の目標や夢について

まずはシーズン中、安定した品質を保ち、野菜の栽培ができる様になることが目標です。スーパーに当たり前に野菜が並んでいる状況は全国の農家さんたちの努⼒の賜物だと思います。次にブランド化や商品化です。オホーツクは11⽉〜4⽉まで作物の収穫が難しいので、ジャガイモやサツマイモなどを使った商品を作り、冬季の売上と雇⽤を確保したいと考えています。美幌町やオホーツクを代表する商品やブランドを作ることで、地域に少しでも貢献ができればと考えています。 また、農泊や農業体験ができる場にしていきたいです。美幌町は道東の交通の要所ですが、観光コンテンツがあるわけではありません。⼥満別空港から⾞で15分と都市圏からのアクセスがいいため、国内外からのお客様にこの⼟地の豊かさや魅⼒を体感していただく場を作りたいと考えています。そして、将来的に、さいこうファームをいろんな⼈が集まる実験室のような場にすることです。 ひらがなで「さいこう」にしたのは、様々な想いを込めたためです。

・「最⾼」︓最⾼の品質を追求する野菜づくりを目指したい。
・「菜興」︓農業を軸に地域に活⼒を与える仕組みを⽣み出したい。
・「才光」︓⼈材育成・教育の場として⼈が育つ畑にしたい。
・「再交」︓地⽅と都会、⾷づくりと⼈、これまで離れてしまっていたもの達が再び交わる場をつくりたい。
・「最考」︓農学の実証研究ができる場をつくり、農学と農業の発展に貢献したい。
・「最幸」︓モノの豊かさだけではない⼼の豊かさが⽣まれる仕組みをつくりたい。

 野菜づくりを中⼼に、「⼈づくり、町づくり、未来づくり」をしていきたいと考えています。農業と⼈がもつ可能性を信じ、様々な挑戦を続けることが、私達の存在価値だと考えているからです。ぜひ興味がある⽅は、農場にお越しください︕

 さぁ︕いこう︕さいこうファーム︕

 インターンシップ、共同研究、共同開発、住み込みバイトなど絶賛募集中!