令和5年(2023年)小林学長年頭挨拶

 皆さん明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。皆さんはどのようなお正月を迎えられたのでしょうか。

 昨年は、ロシアがウクライナに侵攻するという大きな戦争が起りました。その影響もあって、穀物価格、石油などが高騰する事態が起きています。中国と台湾の関係も大変緊迫しています。グローバル化のもとで築かれた様々な協調関係が崩れ、自国主義に変化してきていることも気がかりです。また気象変動においては、さらに激しさを増し、世界中で大洪水、日照りによる水不足など極端な変動が常態化してきています。

 一方、新型コロナウィルスはなかなか収まりません。ワクチンが出来たことは有難いですが、ウィルスが変化を続け、感染の大きな波が続いていていつまで続くのか、全く見通しが立たない状態となっています。このめまぐるしい変化に対し私たちは大きな不安を抱えて生きていかなければならない状態になっています。その中で迎える2023年一体どんな年になるのでしょうか。希望を持ちながらも一人一人注意深く見守っていく必要があると思います。

 さて、本学についてですが、第3期中期計画は、6年目の年になり最終年度となります。今回の中期計画では私たち全員が取り組めるように、項目毎、本部、部局のアクションプランに落とし、計画を実施するようになっています。そしてその結果を自己評価委員会で確認し、次年度の計画に反映していく仕掛けができています。つまりPDCAサイクルがきちんと回っている状態になりました。これは結果だけを求めるのではなく、目標に向かって組織や個人が、改善していくプロセスを理解し、身に付ける事にも繋がります。

 毎年の年度計画については、秋田県地方独立行政法人評価委員会から、計画通り進められているとの評価を頂いています。しかし、数値目標の中で県内就職率を5年前の20%から段階的に上げ中期計画終了時には30%にすることに関しては、25%前後と未達です。そして大学院定員の充足率100%においては、博士前期課程は目標をクリアしたものの博士後期課程は約半分ぐらいと大幅な目標未達となっています。この目標はそう簡単にクリアできるものではありません。目標を達成するためにはその背景に潜む課題を明らかにして、そこから改善していかなければなりません。

 また、昨年は大学機関別認証評価を受けました。教育本部、企画・広報本部、部局の積極的な対応により、まだ最終の結果は明らかにはなっていませんが、大きな指摘もなく終了すると考えています。今後ますます大学としての教育研究活動の継続的改善のシステムであるPDCAサイクルの定着が強く求められることになっていくと思います。これは組織だけではなく、教職員一人ひとりの仕事にも大きくかかわってきますので、注目してほしいと思います。

 さて話は変わりますが、秋田版スマート農業を本学の大きなプロジェクトとして2年前から実行しています。周りの人たちの本学に対する見方が大きく変化してきていると感じています。

 まずは、好意的な評価です。県民、自治体、高校、産業界などいろいろな方から、秋田県立大学ではスマート農業を頑張って欲しいとか、県議会の議員さんからも応援したいとの話を頂いています。やはり皆さんは、秋田県立大学に農業に新しい息吹を吹き込んでほしい、そして中山間地域を活性化させ、若い人たちが活躍する姿を見せてほしいとの要望が大変多いと感じています。その延長線上で考えると、農業の本質を見極める活動をもっとたくさんしなければならないと思います。アグリイノベーション教育研究センター、生物資源科学部だけの問題ではなく、システム科学技術学部も同じくらい力を入れるべきではないかと考えています。

 世界的な規模で考えると、食糧問題は大きな問題であり、それぞれの国においては国家戦略になります。日本では食糧自給率がカロリーベースで38%ですので、もっと重要な課題と捉えるべきです。農業イコール農業生産だけではなく、農業生産×生きがい、農業生産×ビジネス、農業生産×環境、農業生産×DX、農業生産×過疎地域、農業生産×若者、等、農業について分析し新しい息吹を吹き込むことが本学の取り組むべき課題であり、本学の大きな軸となっていけるのだと考えます。次期中期計画ではこのことを盛り込んで行けたらと思います。

 最後にお正月ですから私が感じたちょっと面白いお話をします。どこかのTVであった話ですが、60歳近い女性の方の話です。町を歩いていたら、男性から声をかけられた。こんなこと生まれて初めてで大変驚いた。「マスクの威力」は凄い、と感じたそうです。

 最後になりますが、皆様そしてご家族の皆様のご健勝を祈念し私の新年の挨拶といたします。

令和5年1月4日
理事長兼学長 小林 淳一