平成30年度卒業式・大学院修了式を執り行いました

 3月20日、秋田キャンパス講堂において平成30年度卒業式が執り行われ、学部生382名、大学院生82名が新たなる決意と希望を胸に卒業・修了しました。
 学位記授与後、小林学長は告辞の中で、「これからは、ものの見方を違う視点から見直す、今までは無関係と考えられていたものを繋いでみる発想の転換と、そこに新しい価値を見いだす、そのセンスを磨いて欲しい。健康に留意され、それぞれの環境の中で成長し、活躍される事を祈念します」と卒業生・修了生を激励しました。 
 また、卒業生・修了生代表の渡邊 悠介さん(システム科学技術学部 機械知能システム学科)は、「秋田県立大学で培った知見や経験を活かして困難に立ち向かい、社会に貢献できるよう日々邁進します」と力強く答辞を述べました。
 

平成30年度卒業式

平成30年度卒業式

平成30年度卒業式

平成30年度卒業式

平成30年度卒業式

平成30年度卒業式

 
【学長告辞(全文)】 
 卒業生のご家族の皆様、ご来賓の皆様、本日は秋田県立大学の卒業式・大学院修了式にご出席いただき、まことに有難うございます。

 システム科学技術学部226名、生物資源科学部156名の卒業生の皆さん、卒業おめでとうございます。大学院システム科学技術研究科及び生物資源科学研究科において、修士・博士の学位を得られた82名の皆さんの修了を心からお祝い申し上げます。また、今日まで学生・院生の皆さんを支えてこられたご家族の方に、大学を代表して心からお喜びを申し上げます。

 本日卒業ないし修了される皆さんは、これから社会人あるいは大学院生として、様々な分野で活躍されることになりますが、それぞれの心構えについて始めに触れたいと思います。
まず企業等に入社される皆さんについてです。今までとは全く違う環境に身を置くことになりますので、焦らずじっくりと新しい環境に慣れていくことが大事です。まずは規則正しい生活をし、生活のリズムをしっかり作るように心がけてください。慣れるまで大変ですが、徐々に慣れてきますのでそう心配することはありません。会社は皆さんの態度に注目しています。そのポイントは二つあります。一つは、気持ちの切り替えがきちんとできているか、もう一つは、前向きな態度で仕事に取り組もうとしているかです。仕事がすぐに出来るとは思っていませんので、そこは安心してください。そこで、皆さんに是非やってほしいことを二つ述べておきます。

 一つは、相手に挨拶される前にこちらから心を込めて挨拶することです。簡単なことのようですが、初めて会う人や知らない人に挨拶することは意外に難しいものです。相手はどんな人だろうかとか、変に思われないだろうか等を考えると、タイミングを逸してしまいます。挨拶をされていやな気分になる人はいません。挨拶は人間関係を構築する第一歩ですし、これからの仕事において主体性を持つことの最も基本的な動作です。二つ目は、自分で気がついたことを素直に職場に提案することです。職場に配属になり仕事のやり方が分かって来たら、周りをよく見てください。いろいろな手順や決まり事があります。どうしてそうするのだろうかと疑問に感じる事や、こうした方が良いのではないかと言うことをまとめ、職場に提案して下さい。これは入社1年目の人だけに出来ることです。2年目になると慣れてしまって感じなくなってしまうからです。ここには、会社の仕事のやり方や働き方を変える大きなヒントが隠されている事がよくあります。この二つの点を心に留め実行してください。職場で認められ仕事がやりやすくなる秘訣です。

 一方、大学院へ進学する皆さんは、これからより高度な研究を行うことになります。研究には当然未知な部分があり、高いハードルが隠れています。それをどう乗り越えるか、その方法論を学ぶことが最大の目的です。乗り越え方は様々です。そこで起きている事柄を分析、整理し、戦略を練って立ち向かう事になります。道は一つではありませんので、焦らずじっくりとした気持ちが必要です。そして、自分一人で抱え込むことはありませんので、教員、あるいは先輩の指導を積極的に受ける事が大事です。一つひとつのハードルをクリアしていく時の喜びを是非体験してください。この苦労をすればするほど、実力が付くことになります。期待しています。

 さて、これから皆さんが働く社会の変化についてお話ししておきたいと思います。日本では、良いものを安く大量に生産し世界シェアを獲得することによって利益を確保するものづくり産業のビジネスモデルが長く続いてきました。家電製品や半導体メモリーであるDRAMがその代表格です。しかし日本が先頭を切って走ってきた時代はこれで良かったのですが、生産技術が確立していくと生産設備への投資力があればキャッチアップできてしまうことから、コスト競争になり、東南アジア諸国に生産拠点が移ることにより、日本においてこのビジネスモデルが破綻しました。見方を変えると、トレンドが明確でビジネスリスクの少ないビジネスモデルを選択したことが破綻の一番の原因だとも言えます。これを反省し企業は変わってきています。それがイノベーションによるビジネスモデルです。イノベーションとは、「新結合」、「新機軸」、「新しい切り口」、「新しい捉え方」、「新しい活用法」等のことです。よく言われる「技術革新」とは必ずしも等しくなく、「経営革新」の事です。従って、このビジネスモデルは、アイデアから社会的に意義のある新たな価値を創造し、社会を変革しながらビジネスを成立させるものです。新しい価値の創造をベースとしたビジネスは以前のビジネスとは異なり、簡単にキャッチアップできるものではありません。ものの見方を違う視点から見直す、今までは無関係と考えられていたものを繋いでみる発想の転換と、そこに新しい価値を見いだす、そのセンスが最も大切だと考えます。従って、これから活躍される皆さんにとっては、この考え方がもっとも大事だということを心に留め、このセンスを磨いてほしいと切に願います。

 次に、学び直しについて一言述べておきます。電子デバイスなどのハードが指数関数的に性能向上することにより、今まで想像もできなかった技術革新が加速度的に進展すると言われています。この事は皆さんが企業に就職したとしても10年後には皆さんが勉強した技術は陳腐化し、また人工知能の普及により、仕事の質が変わることを意味しています。また企業の戦略に基づきビジネス内容の変更や統廃合により、必要となる知識が変わって来ることも考えられます。この結果学び直しが必要となる機会が増えて来ることが想像されます。つまり、これからは常に勉強し続けなければならないことになります。まず、そこをしっかり認識することが大事です。そして、より早く何を学ぶべきか考えその対応策を考えるべきです。そして、大学は皆さんの要望に応えるために、学び直しの場を提供することが不可欠になります。現在のリカレント教育ではなく、真に皆さんが必要とする内容に対応した教育システムを考えていかなければならないと考えています。本学では皆さんが必要な時にいつでも本学で勉強できる体制を充実させていきますので、気軽に利用して下さい。私たちはいつでも皆さんをサポートします。

 最後に、県外に出られる皆さんは、周りの皆さんに秋田の良さを宣伝して頂くと共に、なるべく多くの機会を作ってまた秋田にお出でください。卒業、修了される皆さんが健康に留意され、それぞれの環境の中で成長し、活躍される事を祈念し、学長の告辞とします。
 
秋田県立大学 学長 小林 淳一