大学院生がグローバルに学術研究を実践しています

 秋田県、日本のみならず、世界の多くの国々で、農村地域の少子高齢化が深刻化し、これまで集落やコミュニティで維持してきた集落活動が継続できないなどの問題点が指摘されています。大学院・生物資源科学研究科博士前期課程1年の鷲尾 環さん(地域計画学研究室)は、農村計画学の観点から研究を進めており、このような集落の活動を、1つの集落・コミュニティとしてではなく、複数の集落・コミュニティが連携・協力することで継続していく方法を模索しています。

 1月には研究活動の一環として、同研究室・生物環境科学科の川﨑 訓昭 助教[専門:組織経営学]が展開する研究チームの調査のためタイ王国を訪問、コンケーン大学で開催された国際シンポジウム「Sustainable development path of rural are in Asia」での成果報告や、コンケーン近郊のドンデーン村で、村長や農家等へのヒアリング調査を行いました。

 今回の訪問で鷲尾さんは、タイ、ラオスおよびカンボジアにまたがる農村部で、2022年より稲作依存からの脱却を目指した取り組みが進められようとしている現状を踏まえ、秋田県が取り組んできた稲作偏重型農業から園芸メガ団地を中心とした園芸農業への転換を巡る知見等をタイに情報提供しました。さらに、経済成長による都市化が進む中で、兼業農家世帯が増え、様々な集落活動が実施できなくなっており、これを持続していくための知見など、鷲尾さんのこれまでの研究成果を踏まえて提言を行いました。

 本研究は3年計画で実施され今年が初年度です。2年目となる来年度は、ドンデーン村全世帯を対象としたアンケート調査を実施することにしており、本調査によりドンデーン村を巡るここ60年の経済発展、都市化の進展による目まぐるしい変化が明らかとなることが期待されています。なお、鷲尾さんは今年9月、ワイン産地のフランスは南仏のモンペリエ大学を訪問し、世界の地方都市社会の社会構造の変容を調査・分析を進める予定です。

 本研究科では、海外で開催される国際学会での研究発表を目的に渡航する学生に対して渡航費を支援するなど、大学院生のグローバルな学術研究を奨励しております。

鷲尾 環さんのコメント

 初の海外調査でしたが、先入観は捨てて話を聞くことの大切さを改めて実感しました。日本の農村活動は男性が中心ですが、タイでは男女の役割に大きな差はありません。また、自治会・町内会のような仕組みもありません。対象者の家族構成や農家さんの栽培作物も日本とはやはり異なります。今回の訪問で、暮らしや文化の違いを知ることができ、貴重な経験になりました。
 今後は、タイに限らずの海外の農村での暮らしなどについて、詳しく知りたいと思います。日本の農村ではこれまで様々な共同活動が行われてきましたが、近年ではその活動が停滞・衰退しています。このことから、住民の主体性を引き出すための条件や方法について議論されています。では、海外ではどうなのでしょうか?共同活動に積極的に参加する国・地域も多数あると聞きます。主体性の獲得にこのような差が生じてしまう原因を調査したいと思います。まずは、英語で会話することを楽しめるようになりたいと思います(笑)
 

生物資源科学研究科 1年 鷲尾 環さん

タイ王国を訪問!!