平成29年度入学式を執り行いました

平成29年度入学式を執り行いました

 

 

 4月6日(木)に秋田キャンパス講堂にて、平成29年度秋田県立大学入学式が執り行われ、学部生406名、大学院生88名が入学を許可されました。
 
 小林淳一学長は式辞の中で、米国のトランプ政権の誕生や英国の欧州連合離脱、世界中で広がる貧富の格差やビジネスモデルの変化などを挙げながら、「皆さんは、このような時代の変化の中で生きていくことになりますが、萎縮することなく、むしろチャンスと捉え、この秋田県立大学で自分を磨き、知力、体力をつけ、将来に備えればよいのです」と式辞を述べました。続いて来賓祝辞として、中島英史秋田県副知事ならびに近藤健一郎秋田県議会副議長よりご祝辞をいただきました。
 
 また新入生を代表して、生物資源科学部 応用生物科学科の高橋茜さんが「先輩たちとともに本学の無限の可能性を切りひらいていきます」と力強く宣誓すると、在学生代表のシステム科学技術学部 電子情報システム学科の小野寺優希也さんがスティーブ・ジョブズの言葉を引用しながら、「現状に満足することなく未来を渇望する“貪欲さ”と、自分の能力や立場などを過信しない“愚かさ”の2つを忘れなければ、4年後には大きく躍進することができると思います」と歓迎の言葉を述べました。

 

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 【入学式の様子】

 【入学生代表宣誓】

 

【学長式辞全文】

 

 秋田県立大学に入学された皆さん、おめでとうございます。秋田県立大学の教職員を代表して、皆さんの入学を心から歓迎致します。また、皆さんのご家族はじめご関係の皆さまにも、心からお祝いを申し上げます。


 秋田県立大学は、21世紀を担う次代の人材育成と、秋田県の持続的発展に貢献することを理念として、1999年に創立され、本年で開学19年目を迎えました。この間に本学を卒業した卒業生総数は約6500名になり、現在さまざまな分野で活躍しています。
 
 さて、皆さんがこれから生きる世界はどうなっていくのでしょうか。
米国におけるトランプ大統領の誕生、イギリスの欧州連合からの離脱等、グローバル化する世界において、恩恵を受けにくい人達の存在、政治に対する閉塞感がその背景にあります。それはひとえに内向きな思考を強め、自国の繁栄を優先する行動や自分たちを守ってくれる強いリーダを求める傾向が多く見られることに繋がっています。そして、この様な国が増えていくと国同士の紛争が多発することが考えられます。


 また、貧富の格差が拡大しています。最近の統計では、世界人口のうち所得の低い半分に相当する36億人の資産額と、世界で最も裕福な富豪8人の資産額が同じだとするショッキングな報告がでています。(国際NGO「オックスファム(Oxfam)」)。本来資本主義は、自由な競争原理を認めていますが、情報、物流が世界規模で素早く大量に動くことにより、富の集中が昔では考えられないほど激しくなっています。これをどう是正し、富の再分配を実現していくのかが政治の大きな問題です。

 

 日本に目を向けると、良いものを安く大量に生産し世界シェアを獲得することによって利益を確保するものづくり産業のビジネスモデルが、東南アジア諸国に生産拠点が移ることにより破綻し、新しい価値創造に基づくイノベーションによるビジネスモデルが求められています。また、東京への一極集中がますます加速しています。その結果、地方では人口減少が進み、秋田県はその先進県です。地方のメリットを活かし、安定した豊かな暮らしをどう実現していけばよいのか、本学にとっても大きな課題です。


 一方、AIつまり人工知能の進展は、皆さんが将来就職した時、その仕事が常に続くわけではなく、仕事内容、質が大きく変わっていくことを意味しています。その他、地球温暖化を中心とした環境問題もあります。

 

 皆さんは、そのような時代の変化の中で生きていくことになりますが、この様な世の中だからこそ萎縮することなく、むしろチャンスと捉え、この秋田県立大学で自分を磨き、知力、体力をつけ、将来に備えればよいのです。

 

 私が皆さんにまずお伝えしたい事は、高校までの生活とはきっぱりと別れ、大学生活に向かうしっかりとしたマインドを持つことです。大学は高校とは全く違います。大人に向けての準備段階に入ります。自分で考え行動することができます。失敗してもかまいません。失敗したら反省し修正すればよいのです。その繰り返しを通し皆さんは成長します。ただどの方向に向かえば良いのかは、人それぞれ違いますから、自分でしっかり考えなくてはなりません。でもそんなに心配する事はありません。本学の教員、職員はきめ細かく皆さんをサポートしますから、安心してください。将来に夢を持ち自ら学んでください。本学には、学生自主研究制度が開学以来あり、全国的にも有名です。教員の指導のもと1,2年生から研究の感覚を身につけます。また数学や物理でつまずいた場合は、皆さんの先輩が教えてくれる「駆け込み寺」と言う仕掛けもあります。また、友達を作るのも大事なことです。サークルや、ボランティア活動も盛んです。自分で学ぶ以上に友達から得るものは大きいです。

 

 この秋田についてもぜひ学んでください。大勢の学生諸君は、親元を離れ初めて秋田に来られた事でしょう。今までと全く違う生活環境を体験することになります。人間の能力の中で最も大切なのは変化に対応できる力です。新しい生活にどう対応していくべきか考えるわけですが、上手に対応できる人は、物事を常にプラス思考で捉え、変化を楽しむことができます。秋田の自然、そこで生活する人たちとの出会いを通して感じる人間性、様々な行事の奥深さ、それらに感動し心の豊かさを養ってください。秋田はそれだけの魅力があります。


 本学のある学生が言っていましたが、秋田がすごいのは、何かやろうとすると地域の人たちが寄ってきて、自分が想像もしないいろいろな人を紹介してくれたり、一緒に参加しサポートしてくれる事だと言っていました。知らないうちに多くの人の繋がりができます。個人個人の繋がりが薄い都会ではなかなか難しい事です。このような体験は、相手を理解し、思いやる心をはぐくみ、自分の考えをはっきり伝える事に繋がります。必ずや皆さんが卒業する時には、豊かな人間性が形成される事でしょう。

 

 最後に大学院のことに少し触れておきたいと思います。本学のような理系の大学においては、学部卒業後に大学院に進学して、修士課程以上を修了することが、求められるようになってきました。それは、専門分野の深化により、専門性を十分身につけるには、学部の4年間の教育だけでは足りなくなってきているためですが、前述したような社会の大きな変化に柔軟に対処できる能力を大学院で十分身につけて欲しいとの願いもあります。皆さんの先輩たちの多くが、大学院を修了することにより、学部卒の場合に比べ、より専門性を活かせる上級の職種に就いて、さまざまな分野で活躍しています。ぜひ大学院進学のことも選択肢に入れて、1年生の時から大学生活全体の設計を心がけて下さい。

 

 皆さんがこの秋田の地で勉学に励むと共に大学でしか味わうことのできない、たくさんの体験、思い出を作り、卒業時には成長が実感できるような大学生活がおくれることを祈念し、学長の式辞とします。


学長 小林 淳一