平成30年度入学式を執り行いました

平成30年度入学式を執り行いました

 

 

 4月5日に秋田キャンパスの講堂にて、平成30年度秋田県立大学入学式が執り行われ、学部生417名、大学院生81名が入学を許可されました。

 

 小林淳一学長は式辞の中で、世界中で広がる貧富の格差や秋田県の人口減少など国内外の問題を挙げながら、「課題の多い世の中だからこそ萎縮することなく、むしろチャンスと捉え、この秋田県立大学で自分を磨き、知力、体力をつけ、将来に備えて欲しい」と式辞を述べました。続いて来賓を代表して、佐竹敬久秋田県知事ならびに竹下博英秋田県議会副議長よりご祝辞をいただきました。

 

 また新入生を代表して、システム科学技術学部の三浦未来さんが「先輩たちとともに本学の無限の可能性を切りひらいていきます」と力強く宣誓すると、在学生を代表して生物資源科学部の佐藤美帆さんが、「縁あって秋田に来たわけですから、ぜひ秋田の人と交流をして、秋田の文化に触れ、秋田を第二のふるさとと思えるぐらい好きになって欲しいです」と歓迎の言葉を述べました。

 

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【学長式辞全文】

 

 秋田県立大学に入学された皆さん、おめでとうございます。秋田県立大学の教職員を代表して、皆さんの入学を心から歓迎致します。また、皆さんのご家族はじめご関係の皆さまにも、心からお祝いを申し上げます。


 秋田県立大学は、21世紀を担う次代の人材育成と、秋田県の持続的発展に貢献することを理念として、1999年に創立され、本年で開学20年目を迎えました。この間に本学を卒業した卒業生総数は約6,800名になり、現在さまざまな分野で活躍しています。
 
 さて、皆さんがこれから生きる世界はどうなっていくのでしょうか。世界経済が発達することにより、貧富の格差が増大しています。コンピュータの発達及びインターネットの普及により、情報やそれに基づく物流分野のマーケットが急拡大し、情報、物流産業を中心とする特定企業が市場を独占し、富の集中が昔では考えられないほど激しくなっています。その結果逆に貧困層が大幅に増え、働きたくても働けない若者が特定の地域だけではなく、世界中の至る所で出現しています。彼らの不満は、イスラミックステート集団を増大させ、戦争やテロ事件を起こしています。技術や経済が発達すればするほど、この現象はさらに顕著になることが予想されます。これに対処するためには、世界規模での政治の関与が不可欠ですが、各国の事情の違いにより、上手くまとまらないのが現状で、世界的不安定な状態が今後も続くことが懸念されます。


 日本の経済に目を向けると、日本の産業を引っ張ってきた自動車産業は、究極の省エネルギー化に向けての電気自動車の開発、及び自動運転技術の大競争時代に突入し、従来日本が得意としたものづくりの土俵とは異なる土俵で戦わなければならなくなってきています。つまり、日本での新たな産業のコア技術の確保が急務な課題となっていますが、アニメやゲームに代表される娯楽産業では、新しい発想が次々に生まれ、ストーリー性の豊かさ、映像技術の発展と相まって、日本の代表的な産業になりつつあります。日本人が持つ優位性とは何かを常に考えながら産業の発展を考えていかなければなりません。


 一方、AIつまり人工知能の進展は、皆さんが将来就職した時、その仕事が常に続くわけではなく、仕事内容、質が大きく変わっていくことを意味しています。AIを上手く使いながらAIでは出来ない創造性の高い仕事が求められることになります。


 また、東京への一極集中がますます加速しています。その結果、地方では人口減少が進み、秋田県はその先進県です。この流れを少しでも止めるためにはどうすればよいか、待ったなしの状態です。そのためには、地方というものを徹底的に分析し、その価値を明らかにしていくことが求められています。秋田は歴史的に見ると資源立国です。かつては鉱山資源、石油、さらにはあきたこまちで有名なお米、そしてこれからは、風や地熱等を利用した自然エネルギー資源が秋田を支えていくことになると考えます。また自然災害が最も少ないところでもあります。この様な風土で暮らす人々は心に余裕があり暮らしが豊かです。この利点をどのように人々に理解してもらい、定住に繋げるか本学にとっても大きな課題です。

 

 このような時代背景の中で皆さんは将来仕事をし、生活していくことになります。課題の多い世の中だからこそ萎縮することなく、むしろチャンスと捉え、この秋田県立大学で自分を磨き、知力、体力をつけ、将来に備えてほしいと考えます。

 

 私が皆さんにまずお伝えしたい事は、大学生としてしっかりと自分を磨くマインドを持つことです。大学は高校とは全く違います。大人に向けての準備段階に入ります。自分で考え行動することができます。失敗してもかまいません。失敗したら反省し修正すればよいのです。その繰り返しを通し皆さんは成長します。ただ向かう方向は、人それぞれ違いますから、自分でしっかり考えなくてはなりません。でもそんなに心配する事はありません。本学の教員、職員はきめ細かく皆さんをサポートしますから、安心してください。将来の夢を見つめながら主体的に学ぶ姿勢が大事です。本学には、学生自主研究制度が開学以来あり、全国的にも有名です。教員の指導のもと1,2年生から研究の感覚を身につけます。また数学や物理でつまずいた場合は、皆さんの先輩が教えてくれる「駆け込み寺」と言う仕掛けもあります。一方、友達を作るのも大事なことです。サークルや、ボランティア活動も盛んです。自分で学ぶ以上に友達から得るものは大きいです。

 

 この秋田についてもぜひ学んでください。大勢の学生諸君は、親元を離れ初めて秋田に来られた事と思います。今までと全く違う生活環境を体験することになります。人間の能力の中で最も大切なのは変化に対応できる力です。新しい生活にどう対応していくべきか考えるわけですが、上手に対応できる人は、物事を常にプラス思考で捉え、変化を楽しむ方向に持っていくことができます。秋田の自然、そこで生活する人たちとの出会いを通して感じる人間性、様々な行事の奥深さ、それらに感動し心の豊かさを養ってください。秋田はそれだけの魅力があります。そして、卒業する時には、秋田県立大学に入ってよかったと感じることを願っています。

 

 最後に大学院のことに少し触れておきたいと思います。本学のような理系の大学においては、学部卒業後に大学院に進学して、修士課程以上を修了することが求められるようになってきました。それは、専門分野の深化により、専門性を十分身につけるには、学部の4年間の教育だけでは足りなくなってきているためですが、前述したような社会の大きな変化に柔軟に対処できる能力を大学院で十分身につけて欲しいとの願いもあります。皆さんの先輩たちの多くが、大学院を修了することにより、学部卒の場合に比べ、より専門性を活かせる上級の職種に就いて、さまざまな分野で活躍しています。ぜひ大学院進学のことも選択肢に入れて、1年生の時から大学生活全体の設計を心がけて下さい。

 

 皆さんがこの秋田の地で勉学に励むと共に大学でしか味わうことのできない、たくさんの体験、思い出を作り、卒業時には成長が実感できるような大学生活がおくれることを祈念し、学長の式辞とします。


学長 小林 淳一