平成27年度卒業式・修了式を執り行いました

平成27年度卒業式・修了式を執り行いました

 

 

 3月23日(水)、秋田キャンパス講堂において、平成27年度卒業式が執り行われ、学部生372名、大学院生71名が新たなる決意と希望を胸に卒業・修了しました。
 小間学長は告辞の中で、「21世紀に入り、わが国並びにわが国を取り巻く世界の状況は、かつて無いほど大きくかつ急速に変わりつつあるが、それぞれの立場で、人類の持続的発展に資する活動を常に心がけて欲しい。」と卒業生・修了生を激励しました。
 また、卒業生・修了生代表の生物資源科学部 栢森 藍佳さんは「大学での学びや学生自治会での活動を通して、学ぶ楽しさや目標を立ててそれを達成することの大切さを知りました。」と答辞を述べました。

 

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 【卒業式・修了式の様子1】

   【卒業式・修了式の様子2】

 

 


【学長告辞全文】


 卒業生のご家族の皆様、ご来賓の皆様、本日は秋田県立大学の卒業式・大学院修了式にご出席いただき、まことに有難うございます。


 システム科学技術学部227名、生物資源科学部145名の卒業生の皆さん、卒業おめでとうございます。大学院システム科学技術研究科及び生物資源科学研究科において、後期課程を修了し博士の学位を得られた2名の皆さん、前期課程を修了し修士の学位を得られた69名 の皆さん、修了を心からお祝いを申し上げます。また、今日まで学生・院生の皆さんを支えてこられたご家族の方に、大学を代表して心からお喜びを申し上げます。


 さて21世紀に入り、わが国並びにわが国を取り巻く世界の状況は、かつて無いほど大きくかつ急速に変わりつつあります。この変化により、われわれにはさまざまな課題がつきつけられ、その解決が求められています。人類は20世紀後半、史上まれに見る技術革新とその恩恵を享受してきましたが、同時に、資源・エネルギーの大量消費、人口の爆発的増加、CO2排出による地球温暖化のいわゆるトリレンマ問題に直面し、その問題の早急の解決を迫られています。特にこの数年、スーパー台風の発生や、かつて経験したことのないような局地的豪雨など、荒々しい異常気象に世界各地が悩まされるようになり、その一因である地球温暖化を抑えるためのCO2削減の努力は、今や待った無しの状況になりつつあります。これらの問題の解決には、特にわれわれ理系の人間の努力と工夫が求められています。そのような認識に立って、本学は、研究が目指す方向を「人類の持続可能な発展に資する科学・技術」と定め、努力しています。本日、卒業、修了する皆さんにも、「人類の持続的発展」の視点を常に持って、今後活躍していただきたいと思います。たとえば、大きな省エネルギー化を可能とする新しい技術の開発、資源の効率的リサイクルを可能とするように設計時から考えられた製品の開発、新たに立ち上がろうとしている水素社会の実現など、目指すべき課題は、数多くあります。皆さんは、今後さまざまな分野で活躍されますが、それぞれの立場で、人類の持続的発展に資する活動を常に心がけて欲しいと思います。


 二番目の大きな変化は、産業構造の大きな変革です。かつての「ものづくり」日本が得意としていた、性能が優れた製品を、より安価に大量に生産して、世界に輸出して利益を上げていこうというやり方が通用しなくなってきています。 先端エレクトロニクス機器のディジタル化に伴い、製造装置と部品さえ手に入れられれば製造上のノウハウはあまり必要とされなくなり、製品の製造には、質の高い労働力を有する国より、より安い労働力を持つ国の方が有利になる状況になってしまいました。このような状況に立ち向かうには、製品単体の製造だけでなく、製品とサービスを組み合わせて利益を上げる仕掛けや、大量生産品ではなく、多様な要求にきめ細かく応えられるような多品種少量生産を可能とするシステムの構築など、今までに無い工夫が必要になります。また、食糧確保という点できわめて重要な農業においても、それに従事する人たちが十分利益を上げていくのがむずかしくなり、農業に大きなイノベーションをもたらすことが必須になりつつあります。たとえば、米の生産のみに頼るのではなく、高い付加価値を持つ野菜や果物の栽培を手がけ、販売にストーリー性を持たせるなどの工夫が必要になってきています。 3つめの大きな変化は、世界各地でひろがりつつある社会的格差と多様性の問題です。先進国と発展途上国との格差は南北問題として以前から言われてきたことですが、格差は、最近日本も含む先進各国の中でも拡大しつつあると思います。ISに共鳴しISに参加する先進国育ちの若者が少なからずいるのも、格差の広がりにその原因があると思われます。格差の問題の解決には我々理系の人間は適任とは言えないかもしれませんが、格差の拡大が、社会の安定に欠くことのできない中間層の減少をもたらしていることを考えれば、格差の問題には、われわれもセンシティブであるべきだと思います。一方多様性については、種々の民族、宗教といった、さまざまに異なる集団の考え方を、互いに許容し尊重することが求められているということですが、生物多様性の重要性を意識している我々は、ポジティブな考え方を提案できる立場にいるのかもしれません。


 現在我々が直面しているさまざまな重要課題を挙げてきましたが、皆さんは、その課題の多さに悲観する必要はまったくありません。本学では一貫して、問題発見、課題解決の能力を磨けるよう、さまざまな工夫をした教育を行ってきました。上述のような課題が多い社会で、最も活躍できるのは、まさに本学の教育を受けた皆さんのような人たちです。複眼的でしなやかな発想を駆使して、それぞれの分野でこれから大いに活躍していただきたいと思います。


 秋田県立大学は創立以来今年で17年経ち、本学の卒業生及び修了生の数は、今日卒業ないし修了される皆さんを加えると約6000名に達し、さまざまな分野で活躍する卒業生がいる大学になりました。企業に就職すると、他の企業、特に異業種の人と意見を交わすことはむずかしくなりますが、同じ大学の同窓生同士であれば、会って意見を交わすことも容易にできます。そこで本学では、皆さんが、大学の先輩や同期生、後輩たちと、所属組織を越えて相互に連絡しあえるよう、パスワードで保護されたWeb上の同窓会名簿である「風ネット」システムを立ち上げました。このシステムにできるだけ多くの卒業生の方たちに登録していただくことにより、卒業生間や教員とのネットワークが一層充実することになります。システムの立ち上げ以後、教員及び毎年卒業、修了していく人たちには、ほぼ全員が登録していただいているので、登録者数も年々増え、建学以来の卒業生総数の3分の1近くになりました。システム立ち上げ以前に卒業した卒業生の登録も日々増えつつあります。複眼的な視点からの柔軟な発想には、異分野で活躍する人との交流が特に有用ですが、「風ネット」はその目的に最適のツールとなると思いますので、是非活用して下さい。


 本学の教職員は、本学の特長である少人数教育を生かして、在学中いろいろな形で皆さんサポートしてきました。これからも喜んで皆さんをサポートしていきたいと思っていますので、卒業後も気軽に母校を訪ね、アドバイスを受けて下さい。今日巣立っていく皆さんのこれからのご活躍を祈って、告辞と致します。

 

秋田県立大学長 小間篤