本学大学院生の論文が国際学術雑誌「Scientific Reports」に掲載されました

 大学院・生物資源科学研究科 生物資源科学専攻 博士後期課程2年の柿崎 哲哉さん(指導教員:応用生物科学科 村口 元 准教授[専門:菌類遺伝学])の論文が、Nature Research社が刊行する国際的な学術誌『Scientific Reports』に掲載されました。
 

雑誌名

Scientific Reports

論文タイトル

Live-cell imaging of septins and cell polarity proteins in the growing dikaryotic vegetative hypha of the model mushroom Coprinopsis cinerea
☆Webサイト:https://www.nature.com/articles/s41598-023-37115-y

著者

Tetsuya Kakizaki, Haruki Abe, Yuuka Kotouge, Mitsuki Matsubuchi, Mayu Sugou, Chiharu Honma, Kouki Tsukuta, Souichi Satoh, Tatsuhiro Shioya, Hiroe Nakamura, Kevin S. Cannon, Benjamin L. Woods, Amy Gladfelter, Norio Takeshita & Hajime Muraguchi

論文要旨

キノコの形態形成に関する発生生物学は、菌類が陸生環境と地球の炭素循環において重要な役割を持っているにもかかわらず、未だによく解明されていません。ウシグソヒトヨタケは、真菌の形態形成の分子的・細胞的基礎に関するモデル生物として有用な菌です。この菌の二核栄養菌糸は、先端生長により、クランプ細胞形成、共役核分裂、隔壁形成、次端領域のペグ形成、そしてクランプ細胞とペグの融合によって生長します。これらのプロセスの研究は、菌類細胞の形態形成に関する洞察を得るための多くの機会を提供します。本研究では、EGFP、PA-GFP、mCherry等の蛍光タンパク質でタグ付けされた5つのセプチンおよびその調節因子CcCla4、CcSpa2、およびF-アクチンの生長中の二核栄養菌糸における動態を報告します。また、蛍光タンパク質でタグ付けされたSumoタンパク質とヒストンH1を用いて、核も観察しました。5つのセプチンは、菌糸先端に穴の開いたドーム状の形で局在していました。CcSpa2-EGFPの蛍光はその穴の中で観察され、一方でCcCla4は菌糸先端で変動するドーム状に観察されました。隔壁形成の前に、CcCla4-EGFPは隔壁形成部位周辺に一時的に集合する様子も時々観察されました。蛍光タンパク質でタグ付けされたセプチンとF-アクチンは、隔壁形成部位で収縮性リングを形成しました。これらの異なる部位に特化した生長機構は、子実体形成に必要な様々な細胞の分化プログラムを研究する基盤となります。
 

今後の目標・研究の展望

私は横手市のシイタケ農家の子として生まれ、幼い頃より植物やキノコの生態を見つめ生物学に興味を持ってきました。大学では農学部の修士号を頂きながら、農業と関係ない企業に就職し会社員として10年以上勤めました。そのうち、やはり自分のルーツである農業に関わる仕事がしたい、特にキノコ栽培の改良に貢献できないかと思うようになりました。そんな中、村口先生とのご縁を頂き、一大決心して、二度目の大学院生生活を送らせていただいています。分子生物学・遺伝学の素養がほとんどない状態で四苦八苦しながら、村口先生の優しく丁寧な指導のお陰で1本目の論文発表にこぎ着けることができました。最終的には日本のキノコ研究の発展に貢献できる技術を身に着けるべく、日々精進してまいります。
 


2人とも幼い頃よりきのこが大好き!!