本学教員らの行った研究成果が米国電子ジャーナル「Scientific Reports」に掲載されました

 システム科学技術学部機械工学科の津川 暁 助教らの共同研究チームが行った研究の成果が、令和5年5月9日(火)に米国電子ジャーナル「Scientific Reports」に掲載されました。

★プレスリリース資料★
植物根部の浮き上がり現象の力学的仕組みを解明
~根は自身の成長浮力と土圧を上回る根毛の摩擦がなければ土に潜ることができない~


★掲載論文★
【タイトル】
A Mechanical Theory of Competition between Plant Root Growth and Soil Pressure Reveals a Potential Mechanism of Root Penetration
(植物根部の成長と土圧の競合を考慮した力学理論による根部貫入の潜在的な仕組みの解明)
【掲載誌】
Scientific Reports

研究概要

 植物の根は水と栄養を獲得するとともに地上部を力学的に支えるために土中に潜り込む必要があります。しかしながら、土中へ潜り込むには植物体の健全な成長や適切な土壌環境が必要であり、適切な条件でないと根は土中に貫入(かんにゅう)することができません。そのため、どのような環境条件あるいは力学条件で根の貫入が起きるかを理解することは植物科学の重要な課題でした。

 本研究では、若いハツカダイコンの根が、土に隙間が空いていない高密度の土壌において、貫入できずに浮き上がる現象を発見しました。また、播種から1日目の根毛の発達していない初期根でもまた貫入できずに浮き上がることもわかりました。これらの実験結果は、土の環境条件および根の成長力学条件が貫入にとって重要であることを定量的に明確にしました。

 秋田県立大学、奈良先端科学技術大学院大学、東京工業大学、熊本大学の共同研究グループは、土質工学の基礎杭に発想を得た根の貫入力学モデルを構築し、どのような力学条件下で根が貫入できるかを数理的に表現する根の貫入基準式を導出することに初めて成功しました。

 この知見を利用することにより、植物科学におけるミクロな細胞成長動態と人間の目で見えるマクロな根の貫入や浮き上がりを結びつけることができるため、植物生理学の進展に寄与するばかりでなく、生物模倣工学や新しい基礎杭の提案など他分野に波及性の高い研究手法になる可能性があります。