本学教員らの行った研究成果が米国の植物生理学会の学会誌である「Plant Physiology誌」オンラインサイトに掲載されました

 システム科学技術学部機械工学科の津川 暁 助教らの共同研究チームが行った研究の成果が、2月28日(火)に米国の植物生理学会の学会誌である「Plant Physiology誌」オンラインサイトに掲載されました。

★プレスリリース資料★
マメ科植物の葉が動くしくみに迫る
葉の運動を駆動する細胞が伸展・収縮する際に 細胞壁にあるスリットが開閉することを発見 
~ダーウィンらが注目した植物の運動力の謎解明へ~

研究概要

 奈良先端科学技術大学院大学(学長:塩﨑 一裕)先端科学技術研究科 バイオサイエンス領域の中田 未友希 助教、出村 拓 教授らは、アカシア園芸の高原 正裕研究員、秋田県立大学の津川 暁 助教、産業技術総合研究所の坂本 真吾 主任研究員らと共同で、マメ科植物の葉の運動を駆動する細胞が、他の細胞にはない特殊な細胞壁構造を持つことを発見しました。

 植物の運動は、1880 年に発表されたチャールズ・ダーウィンらの著作「The Power of Movement in Plants(植物の運動力)」においても取り上げられるなど、長い間多くの研究者を魅了してきました。そのなかでもマメ科は、昼に葉を開いて夜閉じる「就眠運動」をはじめとして、様々な葉の運動を示すことで有名な植物グループです。この運動は、葉の小葉や葉柄の付け根にある構造「葉枕(ようちん)」の細胞「運動細胞」が大きな伸展と収縮を繰り返すことで起こります。このような繰り返しの細胞伸縮は、硬い細胞壁に囲まれた植物細胞においては非常に稀な現象です。しかしながら、運動細胞がなぜ繰り返しの伸縮が可能なのかについては、これまでわかっていませんでした。

 本研究では、繰り返しの伸縮を可能にするメカニズムに迫るため、運動細胞の細胞壁構造を、鮮明な高解像度の画像が得られる共焦点レーザー顕微鏡で詳細に調べました。その結果、運動細胞の細胞壁に切れ込み様の構造が多数存在することを発見しました。この切れ込み様の構造は、他の細胞の細胞壁にはない特殊な構造であったため、「葉枕スリット」と名付けました。葉枕スリットは、ダイズやインゲン、アズキのような作物から、おじぎ運動で有名なオジギソウ、クローバーやクズといった身近な雑草まで、葉の運動性を示すマメ科植物の葉枕に広く存在しました。詳細な細胞壁分析や、コンピューターシミュレーション、伸縮中の細胞における葉枕スリットの観察を組み合わせ、葉枕スリットが力学的に柔軟で、細胞の伸縮に伴って開閉する構造であることを明らかにしました。この研究の成果は、植物が葉の運動の進化の過程で、運動細胞を繰り返し伸縮させるために、細胞壁を特殊化することで切り紙のような伸縮しやすい構造を獲得した可能性を示す重要な発見です。