国際学術誌「Environmental Science & Technology」に論文掲載されました

 システム科学技術学部経営システム工学科の川島洋人准教授と小野瑳恵さん(2018年度卒業)の「アンモニアガスの粒子化による窒素同位体分別係数の算出」という研究が国際学術誌「Environmental Science & Technology」に掲載され、Supplementary Coverとして選出されました。


雑誌名:「Environmental Science & Technology」 
論文タイトル:Nitrogen isotope fractionation from ammonia gas to ammonium in particulate ammonium chloride
著者:Hiroto Kawashima*, Sae Ono
DOI:10.1038/s41586-018-0225-9,https://pubs.acs.org/doi/10.1021/acs.est.9b01569

【研究内容】
 大気汚染物質の一つである浮遊粒子状物質に含まれるアンモニウムイオンや硝酸イオンの起源推定や環境動態解明のために、安定同位体比を用いた研究が世界各地で行われ始めています。粒子に含まれるアンモニウムイオンは、アンモニウムガスが何らかのカウンターイオンと結合して、粒子を形成しますが、その際にどのような同位体比になるのかは、重水素の発見でノーベル化学賞(1934年)を受賞したハロルド・ユーリーの理論的な同位体の計算結果や、一部の実測値が応用されていましたが、実際の環境では何が作用して分別係数が決まってくるのかよくわかっていませんでした。本研究では、温度と大気の循環回数によって決定することを、ラボ実験より初めて解明し、また、それらの複雑な関係を一つの式で統一させることも出来ました。今後は、発生源解析にも加えて、大気の循環等の解明にも応用可能だと考えています。

 本研究は、環境省環境研究総合推進費(代表:川島洋人、5RF-1401、2014〜2016年度)によって実施されました。また、その研究費によって、川島准教授が2015年夏にスタンフォード大学のK.Casciotti准教授の研究室へ訪問し、脱窒菌法という高感度な窒素、酸素の安定同位体比の分析手法を学び、本学においても分析可能になっています。上記の研究は、小野さんによって行われた卒業研究の一つであり、また2018年には第59回大気環境学会年会にてポスター賞を受賞した研究です。

【小野さんのコメント】
 卒業研究を国際学術雑誌の論文として残すことができ、大変嬉しく思います。研究内容を理解し、実験し、結果をまとめる作業は容易ではありませんでした。山あり谷あり、もがきながら、川島先生や研究室のメンバーと研究した日々が蘇ります。川島先生には日々熱くご指導いただき、多くの貴重な経験をさせて頂きました。今年の4月から島津アクセスという島津製作所の分析装置の据付やメンテナンスを行う仕事につきました。今後は、研究室で学んだ知識や経験をもとに、研究を支える側の一人として研究者の方々を応援したいと思います。
 


装置のメンテナンスをする現在の小野瑳恵さん