国際学術雑誌「Scientific Reports」に本学学生の論文が掲載されました

 システム科学技術学部経営システム工学科の川島洋人准教授と須藤百香さん(大学院1年)の「Compound Specific Carbon Isotope Analysis in Sake by LC/IRMS and Brewers’ Alcohol Proportion (LC/IRMSによる日本酒中の個別成分分析と醸造アルコールの割合の算出)」という研究が国際学術誌「Scientific Reports」に掲載されました。

雑誌名:Scientific Reports 
論文タイトル:Compound Specific Carbon Isotope Analysis in Sake by LC/IRMS and Brewers’ Alcohol Proportion
著者:Momoka Suto, Hiroto Kawashima*
DOI:https://doi.org/10.1038/s41598-019-54162-6
Webサイト:https://www.nature.com/articles/s41598-019-54162-6
 
【研究内容】
 日本酒は、日本食ブームを背景に、国内外で非常に人気が高まる一方で、悪質な食品偽装事件が発生し、問題視されています。日本酒における、食品偽装の明確な識別基準は未だ確立されておらず、早急な識別基準確立が求められています。
 そこで、本研究では、液体クロマトグラフ/安定同位体比質量分析計(LC/IRMS)を用いて、秋田県産を中心とした40種類の日本酒中のエタノールとグルコースの個別成分分析を行いました。さらに、実際に、純米酒に醸造アルコールを添加し、醸造アルコールと糖類の添加識別基準を初めて提案することが出来ました。

 本研究で使用したLC/IRMSという分析装置は、2000年代後半に開発された装置で、非常に取扱いが難しく、安定した分析ができる研究機関は国内外でほとんどありません。本研究室では、装置内部のほぼ全ての部品を改良し、国内外でもトップクラスに安定した高精度・高確度な分析法を確立することに成功しました(Kawashima and Suto, 2018)。今後は、日本酒だけでなく、様々な食品への応用研究など、幅広い分野で応用が広がっていくと考えています。

 本研究を実施するにあたり、初めに日本酒業界の情報収集として、今年3月に行われた酒蔵開放に研究室の皆で訪れました。また6月には由利本荘市内の齋彌酒造店に訪問し、日本酒業界の状況や作り手の方の意見を直接伺うことも実施しました。社長や杜氏の方からの意見やコメントは、論文を書く際に、非常に参考になりました。
 また今年9月には、イタリアで開催されたForensic isotope ration mass spectrometry(国際同位体鑑識学会)にも初めて参加し、本研究についてポスター発表を行いました。初めての海外かつ国際学会だったので、非常に緊張しましたが、海外の専門の研究者に英語で説明をし、その場で活発な意見交換を行うことが出来ました。その後、先生が共同研究をしているドイツのデュースブルクエッセン大学にも訪問させて頂き、貴重な経験もさせて頂きました。

 川島先生、一緒に日本酒の研究を進めている武田恭君(学部生4年)、研究室のメンバーに助けて頂きながら、なんとか論文執筆までたどり着くことが出来ました。このように国際学術雑誌の論文として結果を残すことができ、大変嬉しいです。日本酒で有名な秋田県にとっても、研究という形で地域貢献できたのではないかと思います。今後は、秋田県内の日本酒メーカー共、サンプリング等の協力体制を整えながら、さらに研究を深めていきたいと考えています。

 本成果は、英国のNature Publishing Group(NPG)が発行する学術雑誌「Scientific Reports」に11月27日付け(日本時間)で掲載されました。
 


本研究の概要図


酒蔵開放に訪問


齋彌酒造店に訪問


学会での集合写真


訪問ポスター前で質疑応答


Hiroto Kawashima*, Momoka Suto, Nana Suto, Determination of carbon isotope ratios for honey samples by means of a liquid chromatography/isotope ratio mass spectrometry system coupled with a post-column pump, Rapid Communications in Mass Spectrometry, 32, 1271–1279, 2018
DOI:https://doi.org/10.1002/rcm.8170
Webサイト:https://onlinelibrary.wiley.com/doi/abs/10.1002/rcm.8170