建築提案コンテスト2010総評

建築提案コンテスト2010

「地震を『災害』にしない建築・都市・くらし」総評

 

 

 今年度は「地震を『災害』にしない建築・都市・くらし」の提案として、家具の収納に関する提案から都市全体の免震化まで幅広いスケールのアイディアなど全部で42点の応募をいただきました。これだけ多くの作品を提案していただいた高校生のみなさん、本コンテストの企画にご理解くださった参加校の先生方に深く感謝の意を表します。

 

 提案内容はさまざまでしたが、大きく2つに整理できると思います。ひとつは建物の耐震技術に関する提案、もうひとつはまち都市を対象とした地震防災に関する提案です。

 建物の耐震技術に関する提案では、既往の耐震技術や免震技術を応用する提案が多く見られました。ここで建物の重さに着目してみると、例えば、提案が多くみられた2階建ての木造住宅の一般的な重さは、1平方メートル当たり約600kg(建坪50平方メートルの場合は約30トン)にもなります。このような重さをどうやって支えるのか。また地震で建物が揺れた場合は、この重さに比例した力が建物に作用します。このような力にどのように抵抗するのか。建物の構造安全性を考えるうえで建物の重さを意識すると、より実現性が高くなると思います。

 また地震防災からみた地域コミュニティのあり方や都市計画、避難所計画に関する提案も多く見られました。いつ、どこで発生するのか予測が難しい大地震を災害にしないためには、普段の生活での使いやすさを考えることも大切です。大地震という「非常時」と普段の生活(「平常時」)との連続性、提案する新しいコミュニティとすでにある地域との関係性、避難所でのプライバシー空間と公共的な場との関係性など、ひとつの着目した点をいろいろな側面から見つめると、より完成度が高くなると思います。

 

 提案作品には、大地震時の構造安全性のアイディアとして実現性が高く、完成度も高いもの、実現性は低くともアイディアとして魅力あるもの、構造安全性だけでなく、環境への配慮、美観の観点からもバランスとれたものなど、高く評価された作品がありました。おしくも賞を逃してしまった作品でも、免震や制震などの既往の耐震技術や、現在の地震防災上の問題点などがよく調べられていることに感心しました。

 今回のコンテストを通じて、地震防災にも関心を持ってもらい、より質の高い空間創出の可能性について考えていただければ幸いです。また、こうした建築・都市環境の根本的な課題に応える、高校生の自由でのびのびとした発想にもとづく提案作品の応募に今後も期待したいと思います。

 

 

秋田県立大学 高校生建築提案コンテスト選考委員会

 

 

 

 

 

【参考サイト】

高校生建築提案コンテスト2010結果発表 

建築提案コンテスト2010募集要項および関連資料

建築環境システム学科紹介

 

 

 

秋田県立大学本荘キャンパス

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