【プレスリリース】農業用ドローンによる「水稲湛水直播農法」実践マニュアルを公開
ドローン×衛星測位で稲作を変える5年間の産学官実証が結実――水稲湛水直播の全国展開へ
農業用ドローンによる「水稲湛水直播農法」実践マニュアルを公開
― 食料安全保障と中山間地域保全に資する次世代稲作モデル ―
秋田県立大学、東光鉄工株式会社、秋田県大仙市は、2021年度から5年間にわたり、農業用ドローンを活用した水稲湛水直播農法の確立を目的とする産学官連携の現場実証に取り組んできました。本実証は、内閣府の地方創生推進交付金事業(Society 5.0)として採択され、「秋田版スマート農業モデル創出事業」(予算額16億円)の一環として実施したものです。
このたび、その成果を体系的に整理した「農業用ドローンによる 水稲湛水直播 作業と栽培の手引き」を作成し、全国に向けて公開します。本マニュアルは、ドローンと高精度衛星測位を組み合わせた超省力・高再現性の稲作技術を、実装可能な形で整理したものであり、全国の水稲生産者、自治体、農業関係機関における活用を想定しています。
背景 地域課題から国家的課題へ
| 水稲生産者の高齢化、担い手不足、耕作放棄地の拡大による里山荒廃や獣害の深刻化など、秋田県をはじめとする地方農業は、いま未曽有の社会課題に直面しています。これらは一地域の問題にとどまらず、国の食料安全保障、国土保全、地方定住の維持と密接に関わる国家的課題でもあります。 本実証は、こうした課題に対し、収穫期まで水田に立ち入る必要がない超省力型の稲作体系を確立することを目的に、産学官が連携して実施されました。 |
農業用ドローンによる湛水直播作業の様子

技術的特徴|日本独自技術を活用した「稲作DX」
本取り組みの最大の特徴は、我が国が誇る準天頂衛星「みちびき」によるセンチメートル級測位補強(CLAS)を活用した、高精度自動飛行による水稲直播技術です。
・国産農業用ドローンを採用し、安全性・情報セキュリティに配慮
・播種および除草剤散布を高精度自動航行で実施
・中山間地域や小区画・不整形圃場にも対応可能な作業体系を実証
これらの条件を満たした、本格的な直播実証は全国的にも例が少なく、日本の地形・農地条件に適合した独自モデルといえます。
播種作業時の農業用ドローンの自動飛行軌跡

・青色線:復路の飛行軌跡 ・赤色線:往路の飛行航路 ※圃場を往復して、二度撒き散布
主な実証成果|5年間の知見
作業能率
・水稲湛水直播:1haあたり約1時間・除草剤散布:1haあたり約0.25時間
収量評価
・4年間平均では移植栽培比で若干減収・新型粒剤散布装置と高精度自動飛行を導入した直近3年間では
・移植栽培比 平均3%減まで改善
経営・地域効果
・育苗作業の削減、春作業の平準化による労力低減・経営面積拡大への対応力向上
・中山間地域における作業継続性の確保と国土保全への寄与
水稲湛水直播と移植栽培の収量比較

※なお、栽培年によって天候等が大きく変動することもあり、実証試験で得られた収量を担保するものではありません。
マニュアル編成の意義
本マニュアルでは、5年間の実証を通じて得られた成果と課題を踏まえ、・使用機体・散布装置の仕様
・播種量・飛行設定の具体例
・種子コーティング方法
・播種後の水管理・除草体系
・現場で留意すべき課題と対策
を、現場で再現可能な形で体系化しています。
生産者のみならず、自治体や農業関係機関、スマート農業導入を検討する地域にとって、実装を前提とした実践的技術資料として活用されることを想定しています。
今後の展望
本技術は、・国の食料安全保障政策への貢献
・次世代を担う若年層の稲作参入促進と地域定住
・中山間地域における持続的な農地利用
といった観点から、今後さらに重要性を増すことが期待されます。
また、本取り組みは耕作放棄地の抑制を通じて、里山環境の維持にも寄与し、近年、特に東北地方で問題となっているクマの出没抑制への波及効果も期待されています。
農業用ドローンによる水稲湛水直播作業と栽培の手引き
「農業用ドローンによる水稲湛水直播作業と栽培の手引き」については、こちらよりダウンロードできます参考情報
最終年度(2025年度)の実証風景 AKT秋田テレビ「LiveNewsあきた」
お問い合わせ先
秋田県立大学 アグリイノベーション教育研究センター E-mail:aic-jimu@akita-pu.ac.jp東光鉄工株式会社 UAV事業部 E-mail:info-uav@toko-akita.co.jp
秋田県大仙市農林部 TEL:0187-63-1111
