【プレスリリース】秋田スギから生まれた小型電気自動車「あきた もくまる」(秋田COI-NEXT)

“木材研究がモビリティを走らせる時代”を拓く、まさに走る研究プロジェクト!

[右]秋田県立大学 木材高度加工研究所 足立 幸司 教授(COI-NEXT「森と木材」研究開発課題リーダー)
[左]静岡大学 農学部ふじのくにCNF寄付講座 西村 拓也 特任教授(同、副リーダー)

 秋田県立大学では、国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)が公募する「共創の場形成支援プログラム(COI-NEXT)【地域共創分野・本格型】」として採択されたプロジェクト『森の価値変換を通じた、自律した豊かさの実現拠点』を推進しております。

 この度、秋田COI-NEXTにおける研究開発課題の一つ「環境親和型木質材料の開発」の成果として、木材高度加工研究所の足立 幸司 教授[専門:木材加工学]をリーダーとする共同研究グループが、秋田スギを原料とした木粉入り複合樹脂(TABWD® )を用いた小型電気自動車『あきた もくまる』を開発、令和7年11月18日に、秋田キャンパスで完成発表会を開催しました。地域の森林資源を、先進的な素材開発の現場に重ね合わせることで、森林とモビリティをつなぐ新たなスタートラインに立ちました。『あきた もくまる』の完成を契機に、森とまち、森と世界、研究活動と社会生活をつなぐ“自律的な豊かさ”のかたちを、社会と一層共有して参ります。

研究成果の概要

 『あきた もくまる』は、トヨタ車体株式会社の1人乗り電気自動車「コムス(P-COM)」をベースに、同社が開発した木粉複合樹脂TABWD(Toyota Auto Body Wood-plastic material)を活用し、秋田県産スギの木粉を原料として組み込んだ外装パーツを試作したモデルです。

 本車両の開発は、秋田COI-NEXTが掲げる「森林の価値変換を通じた自律した豊かさの実現」を具現化する取り組みの一つで、単に木を使うことが目的ではなく、森の恵みを暮らしや働き方の豊かさに組み込むという視点から、研究と社会、素材と地域、森と人をつなぐ“移動する社会実装モデル”として位置づけられています。自動車の木質化は、森の恵みを“移動”という日常に取り入れる試みとして、森の価値を暮らしの中に広げ、人と森がともに豊かに、人と自然が共存する持続可能な社会の実現を目指しています。

 なお、今回の発表会では、車両本体『あきた もくまる』に加え、秋田県立大学が長年にわたり開発してきた多様な木質材料と技術を合わせてご紹介いたしました。特に、脱炭素社会と地域貢献を目指す秋田発の先進的な研究成果として、メカノケミカル処理木粉を用いた高機能な複合材、強度と耐久性を高めた秋田スギの圧密材を使用した床板、自由に曲げ加工が可能な可撓性積層材「やわらかい木」を応用した内装パーツなど環境配慮型素材は、木材の新たな価値と可能性を示し、環境負荷の低減と車両の軽量化に大きく貢献します。

記者会見(秋田キャンパス)


仙北市立西明寺中学校の皆さん


木質素材を多用した車両が走る日は近い!

足立教授のコメント

 秋田の森は豊かでも、生活の中ではその存在を感じにくくなっています。『あきた もくまる』には、森と人の距離をもう一度近づけたいという願いを込めました。木を使った車という挑戦は、単なる実験ではなく、森の恵みを暮らしの基盤に取り戻す試みです。世界の技術と秋田の素材を掛け合わせる“開かれたものづくり”が、地域の未来を強くすると信じています。木材の研究がモビリティを走らせる時代——その第一歩が、この一台です。『あきた もくまる』から、木と森がつくる明るい未来を実感していただけたら嬉しいです。“走る研究プロジェクト”は、今後もさらに進化していきます。

秋田COI-NEXT

 本学が代表機関となり、県内公立3大学(秋田県立大学・国際教養大学・秋田公立美術大学)が中心となって、人口減などで地域社会が縮小する中で、秋田県の「森林資源」を多角的に活用することで、資源や技術を受け継ぎ、人材と文化の交流を促して経済・産業を活性化させ、新しい循環システムの構築を目指すものです。

エコプロダクツ2025

 12月10日~12日、東京ビッグサイトで開催される「エコプロダクツ2025(エコプロ)」に、秋田COI-NEXTの海外連携国であるフィンランドの企業との協働により、木質系吸音材やウッドプラスチック複合材など、国際連携による新素材を実装した進化版を出展します。