本学大学院生がWater and Environment Technology ConferenceでWET Excellent Presentation Awardを受賞

 公益社団法人日本水環境学会が主催する「Water and Environment Technology Conference 2025 (WET2025)」 において、大学院生物資源科学研究科1年生の橋本 梨香子さん(生物環境科学科生態工学研究室、指導教員:宮田 直幸 教授)が、鉱山廃水処理に関与する細菌群のモニタリング手法に関する研究成果を発表し、WET Excellent Presentation Awardを受賞しました。本賞は、約30か国から寄せられた約200件の発表のなかで、特に優れた研究発表を行った者に対して授与されるものです。

研究発表タイトル・発表者

Quantitative PCR monitoring of manganese(II) oxidation-associated uetJ- and moxA-like genes involved in biological treatment of mine drainage wastewater(日本語訳:坑廃水の生物処理におけるuetJ およびmoxA 遺伝子の定量PCRによるMn酸化細菌のモニタリング)
橋本梨香子、岡野邦宏、渡邊美穂、宮田直幸(秋田県立大学)
保高徹夫、片山泰樹(国立研究開発法人 産業技術総合研究所またはAIST)
瀬元祐希、濱井昂弥(独立行政法人 エネルギー・金属資源機構またはJOGMEC) 

研究概要 

 休廃止鉱山で発生する有害重金属を含んだ坑廃水は一般的に薬剤やエネルギーコストが高い中和処理によって処理されており、自然の浄化機能を活かしたパッシブトリートメントへの転換が求められています。当研究グループでは坑廃水中の主要な重金属の1つであるマンガン(Mn)について、Mn(II)を酸化しMn(IV)として不溶化させるMn酸化細菌を適用した生物処理を実施してきました。また、これまでの研究において処理槽内では多様な従属栄養性のMn酸化細菌とともに、Mnをエネルギー源とする未知の独立栄養性の細菌群が優占することが明らかとなりました。本研究では、これらの従属栄養性から独立栄養性まで多岐にわたるMn酸化細菌の処理槽内での挙動を明らかにする手法として、Mn酸化細菌がもつ機能遺伝子に着目し、定量PCRによるMn酸化細菌のモニタリング技術を確立しました。

宮田教授のコメント 

 学会発表の場では研究成果を十分にアピールできていました。現場に設置した坑廃水処理プラントでは所定の処理成績が達成されているものの、どのような微生物が働いているのか解明できていません。本研究で、特定の機能遺伝子に着目して多様なマンガン酸化細菌の消長をモニタリングできるようになったことから、坑廃水処理に関与する微生物生態の全容解明に向けて、さらなる研究の発展を期待しています。

橋本さんのコメント 

 この度は、"The Water and Environment Technology Conference 2025" において、Excellent Presentation Awardを賜り、大変光栄に思います。学会関係者の方々をはじめ、本大会の運営にご尽力いただいた皆さま、多大なご協力を賜りました連名の皆さまに厚く御礼申し上げます。本大会は日本水環境学会が主催する国際学会であり、英語で口頭発表とポスター発表を行いました。英語での発表は初めてでしたが、国内外を問わず様々な方と議論することができ、大変貴重な経験となりました。今回の受賞を励みに、国際学会への参加や論文の執筆などにも積極的に挑戦していきたいと思います。
 


授賞した橋本 梨香子さん


新潟県長岡市の会場にて


現地で標的細菌の集積培養に挑戦中


現地での植菌作業の様子


未知のMn酸化細菌を求めてサンプリング


学部生が実施する実験の準備中♪

かけがえのない仲間と