本学修了生の論文が国際学術雑誌「Food Chemistry」に掲載されました

 ーシステム科学技術学部 経営システム工学科ー
 
 システム科学技術学部経営システム工学科の川島 洋人 准教授と、令和2年度に本学大学院を修了した須藤 百香 さんの「Discrimination for Sake Brewing Methods by Compound Specific Isotope Analysis and Formation Mechanism of Organic Acids in Sake(個別物質同位体分析による日本酒の醸造方法の識別と有機酸の生成メカニズムの解明)」という研究が、国際学術雑誌「Food Chemistry」に令和4年2月1日付で掲載されました。
 須藤さんは現在、公益財団法人 日本分析センターに勤めております。

雑誌名:Food Chemistry
論文タイトル:Discrimination for Sake Brewing Methods by Compound Specific Isotope Analysis and Formation Mechanism of Organic Acids in Sake
著者:Momoka Suto, Hiroto Kawashima
Webサイト:https://doi.org/10.1016/j.foodchem.2022.132295

〇須藤 百香 さんのコメント 
 今回は、日本酒の醸造方法の識別について、食品科学の国際雑誌である「Food Chemistry誌」に報告を行いました。本研究は、修士1年時に分析手法を確立し(Analytical and Bioanalytical Chemistry誌に報告)、その方法を使って修士2年時に秋田県を中心とした49種類の日本酒を集め、分析しました。論文の執筆は卒業後に働きながら、休日や時間がある時を見つけてこつこつと執筆を続けて形にすることが出来ました。働きながらの執筆は、少し苦労する部分もありましたが、何とかアクセプトまでこぎつけることが出来て、ほっとしています。
 川島先生はじめ、研究補助の藤嶋 楽さん、研究室のメンバーのおかげだと思っています。また、日本酒で有名な秋田県にとっても、研究という形で恩返しできたのではないかと思います。

〇川島 洋人 准教授(システム科学技術学部経営システム工学科)のコメント
 日本酒中の有機酸は、風味、色、香りや微生物活動を制御するのに役立つ等、重要な役割を果たしています。特に近年では、リンゴ酸を多く生成する酵母やクエン酸を多く生成する麹を用いて有機酸の量やバランスを変えることで、特色のある日本酒が増えています。
 日本酒の有機酸の主成分である乳酸は、不要な酵母の増殖を抑える作用があります。日本酒の元となる酒母の製造方法には、乳酸菌が生成する乳酸を利用する「生酛系酒母」と人工的に醸造用乳酸を加えることで不要な酵母の増殖を防ぐ「速醸系酒母」の2種類があります。「速醸系酒母」は、大幅に労力を削減出来るため、最近では多くの日本酒の製造方法になっています。
 そこで,本研究では,液体クロマトグラフ/安定同位体比質量分析計(LC/IRMS)を用いて、秋田県産を中心とする49個の日本酒中の有機酸の個別成分分析を行い、生酛系と速醸系の識別方法を確立しました。本研究では、87.8%の確率で生酛系と速醸系の識別が可能となりました。さらに、有機酸の生成メカニズムにおいても安定同位体の視点から解明することが出来ました。これらの研究は、本研究が世界で初めての報告となります。
 研究を行った須藤 百香 さんは、本論文で 8報目(うち第一著者5報)の国際学術雑誌への報告となります。修士課程の成果としては、何らかの記録になっているのではないかなと思うほど多くの成果を出すことが出来て、学生時代には「大学院生の優れた研究成果」も授与しています。コツコツと地道に進める力は研究にとって本当に大事な資質で、それは彼女の最も得意とする点だと思います。今、働いている日本分析センターにおいても、研究活動は継続しているとのことで、今後もさらに研究を進めて欲しいと思っています。また、本学の学生達がこういう先輩の活躍に刺激を受けてもらえればと思っています。
 本研究は、科学研究費基盤A、本学学長プロジェクト「産学連携推進事業」にて、実施されました。また、共同研究を行っている秋田酒類製造株式会社(高清水)の古木様、倍賞様や国内の酒造メーカー等からは、試料の提供や様々な情報提供を快くして頂くなど、非常に感謝しております。
 なお、川島研究室では、日本酒に関しては、日本酒中の醸造アルコールの添加識別基準を提案した論文、日本酒中の有機酸の炭素安定同位体比の分析法の確立した論文の合計2報の報告を行いました。(下記記載のとおり)

●Momoka Suto, Hiroto Kawashima* (2019), Compound Specific Carbon Isotope Analysis in Sake by LC/IRMS and Brewers’ Alcohol Proportion, Scientific Reports, vol.9, Article number 17635

●Momoka Suto, Hiroto Kawashima* (2020), Carbon isotope ratio of organic acids in sake and wine by solid-phase extraction combined with LC/IRMS, Analytical and Bioanalytical Chemistry, page 1-9
 

 

★在学中の須藤 百香 さん★

優れた研究成果で受賞!


研究室の皆との思い出