本学教員が日本畜産環境学会で奨励賞を受賞しました
6月15日(木)、東京都・全国家電会館で開催された「日本畜産環境学会第22回大会」において、アグリビジネス学科家畜資源利用推進プロジェクトの山中 麻帆 助教[専門:飼料機能科学]が奨励賞を受賞しました。山中助教は、地域資源の循環利用に基づいた家畜生産技術の基盤構築を目指し、主に農業残さなどの未利用資源の利活用などについて研究を進めており、これらの研究業績が高く評価され本賞の受賞につながりました。
受賞内容
日本畜産環境学会第22回大会奨励賞受賞論文
『ウシへのモヤシ残さ給与がルーメン内メタン生成量に与える影響』山中麻帆 堀牧人 奥野紗千佳 平山琢二
研究要旨
モヤシ残さは、市販モヤシの調整過程で廃棄される根部、未熟な子葉を含む殻部など廃棄されるもので、嗜好性や栄養価が高いことから、アルファルファなどの代替飼料として活用されている。一方で、モヤシ残さにはポリフェノールが多く含まれていることから、ルーメ ン由来メタンの生成量を抑制できる可能性があるが、モヤシ残さ給与とルーメン内メタン生成量に関する報告はほとんどない。また、モヤシ残さの活用に関する報告のほとんどがサイレージでの利用に関するものとなっており、低コストで持続可能な飼料利用を考えた場合、モヤシ残さの排出頻度から、生の状態での利活用についても検討する必要がある。そこで本試験では、生のモヤシ残さをウシに給与した場合のルーメン内性状およびメタン生成量について検討した。試験には、ホルスタイン種雌6頭を供試し、モヤシ残さを給与するモヤシ残さ給与区およびモヤシ残さを給与しない対照区を設け、それぞれに3頭ずつを配置 して2×2のクロスオーバー法で実施した。モヤシ残さ給与区には、1 日 1 頭当たり生のモヤシ残さ2kgを朝の給餌時に給与した。調査項目は、ルーメン内pH、揮発性脂肪酸(VFA)濃度、プロトゾア数およびガス濃度(メタン、水素および二酸化炭素)とし、それらの区間 差について検討した。ルーメン内 VFA 濃度は、いずれの成分において、有意な区間差はみ られなかった。また、ルーメン内pHに有意な区間差はみられなかった。一方で、ルーメン内プロトゾア数は、モヤシ残さ給与区で高くなる傾向がみられた(P<0.10)。ルーメン内メタン濃度およびメタン生成量は、いずれもモヤシ残さ給与区で対照区に比べ有意に低くなった(P<0.01)。これらのことから、ウシへのモヤシ残さ給与は、ルーメン内における飼料 消化性を損なわずにメタン生成量を抑制できる可能性がある。山中助教のコメント
現在は、地域資源の循環利用に基づいた家畜生産技術の基盤構築を目指し、主に、地域における食品工場から発生する残渣や規格外野菜などの農業残さなどの未利用資源の利活用について研究しています。今回の日本畜産環境学会第 22 回大会では、モヤシ製造工場から排出されるモヤシ残渣の利活用について発表しました。モヤシ残さをウシに給与した場合のルーメン内性状およびガス生成量について検討した結果、モヤシ残渣を給与することでウシの呼気中のメタン量を削減できる可能性を見出したことが、今回の受賞に繋がったと考えています。この受賞を励みに、今後の研究をさらに深化させていきたいと考えています。持続的な環境保全を目指し、地域資源の循環利用や未利用・低利用資源を活用した新たな産業創出などに貢献できるよう、引き続き意欲的に研究活動に取り組んでいきたいと思います。
学生自主研究「地域資源の探索と飼料化技術の検討」
秋田の特産品であるジュンサイの飼料活用に挑戦