研究テーマ
機械が動くと必ず発生する振動・騒音を低減し、機械の性能や信頼性,快適性などの付加価値,の向上を目指した研究を行っています。
とくに,軽量化や構造簡素化により顕著となる「弾性振動」を低減する研究に力を入れています。
また,鉄道の専門研究機関での長年の経験に基づき,鉄道車両の快適性に関わる車体弾性振動問題などについても取り組んでいます。
最近の研究テーマ
鉄道車両をはじめ,一般の機械構造物に広く適用可能な振動低減技術の開発を目指したテーマで卒論・修論テーマを設定しています.
卒論や修論の成果は,講演会や
査読付論文として積極的に公表しています。
また,これまで何名もの学生が学会講演等において
表彰を受けています。
卒論・修論研究テーマの例
- 人体の制振効果を模擬した新しい制振デバイスの開発
- 連続体の振動解析に基づく多モード制振
- 鉄道車両の簡便で詳細な振動解析モデルの構築
- 減衰評価・減衰のモデル化に関する研究
- 新しい材料の減衰性能の評価と向上
- 波動伝搬理論に基づく制振
- 回転体の状態監視
- 編成車両の挙動の波動解析
研究内容の紹介
人体の制振効果を模擬した新しいマルチモード制振デバイスの開発
鉄道車両を設計する際,乗客は付加質量とみなしています.しかしこれまでの研究により,乗客に
よる車体振動への影響としては,質量付与効果(固有振動数を低下させる効果)というより減衰付与効果(振動を減少させる
効果=制振効果)が大きいことが明らかになっています.定員の数分の一以下の少人数の乗車でもかなりの制振効果が
認められることから,この効果を適切に模擬できれば,軽量な制振デバイスが実現できると期待されています.
これは人体が粘弾性体であることや,いろいろな方向に振動することに起因するものと考えられますが,
このような「乗客の影響を模擬した制振」はこれまでにない新しい発想です.
この発想に基づき,これまでに鉄道車両の実車の制振に成功していますが,これを他の機械構造物や,
音の領域にも拡張することを目指して研究を進めています.
連続体の振動解析に基づく多モード制振
例えば鉄道車両や航空機の機体,高層ビル,農業用播種機のアームのような細長い柔軟構造は,「はり」
(曲げモーメントを受けてたわみ変形する棒)としてモデル化することが可能です.はりのような
比較的単純な形状については,その形状の特徴を生かして連続体として振動解析を行う手法が適用でき,
数値計算を簡略化することができます.そのうえで粘弾性体の変形を活用した多モード動吸振器,
アクティブマスダンパ(AMD)などを適用することで,合理的で効果的な多モード制振手法が実現できると
考えており,それらを目指した研究に取り組んでいます.
鉄道車両の簡便で詳細な振動解析モデルの構築
鉄道車両の車体は,薄板で構成された非常に細長い筒状の構造です.そのため,車体の弾性振動は車体が
一本の「はり」のように変形するものが主であると考えられており,車体振動低減に関する検討は,はり理論を
基に行われることが今でもよくやられています.ただし,実際の車体の振動は「はり」では表現できない複雑な
ものも多く,そのような複雑な振動を表現できる簡便な振動解析モデルが求められています.当研究室では,
鉄道車両の車体を,屋根と床は弾性平板,側面は複数のはりの組み合わせ,前後の妻は剛体平板,とみなして
それらをばねで接続することで箱形の構造を表現する振動解析手法の開発に取り組んでいます.