雪中乗馬体験記
後期試験明けの2月8日,アルビオン乗馬クラブ冬季練習馬場において,雪中乗馬体験会を開催した.



1〜3年生の学生7名と教職員6名の13名が参加した.

この日,関東地方は急速に発達した低気圧の影響により,大雪に見舞われた.
東京都心部の積雪は27cmに達し,1969年以来45年ぶりの大雪を記録した.

太平洋側に雪が舞う日は,日本海側は穏やかな天気になる.
気温は氷点下であったが,雪・風ともなく,澄み切った冬空が広がっていた.

本荘キャンパス北口に朝9時集合.
キャンパスから鳥海山が山頂まで見えていた.



後期試験明けの朝早い時間であったため,全員少し眠そうな表情であった.
研究室では卒論・修論が山場を迎えており,教員の表情にも疲れが滲み出ていた.

公用車3台に分乗して,西沢地区の馬場に向かった.
先頭は引退目前のランクル77.
1999年の開学以来,10万kmを超える走行を通じて,たくさんの人と物を運んできた.
時にはこの車でしか入れない,道なき道を走ることもあった.
しかし,ハイブリッド車が幅を利かす世の趨勢には勝てなかったようである.
ドナドナされる前の最後の御奉公として,大量に雪が降り積もる鳥海山に向けて先陣を切ってくれた.

乗馬クラブでは,指導員の方が2名,国体選手の高校生とその親御さん,そして相馬先生ご夫妻が,体験会の準備を進めながら,我々の到着を待ってくれていた.



特別ゲストとして,秋田県馬術連盟の三浦会長が,本イベントの視察に来てくれた.
馬術部の創設に向けて,本学への期待が感じられた.
また,大学生の国体出場について言及されていた.

三浦会長から直接聞いた内容ではないが,こちらのブログ記事を読む限り,本県における馬術競技の現況は極めて厳しいようである.
馬術部のある学校は角館高校のみで,県内の大学では取り組みがないのが現状である.
近県では,農学系の学部を有する岩手大学弘前大学に馬術部があるようだ.

生物資源学部と農業短大を母体とするアグリビジネス学科を有する本学は,県内の他大学より乗馬や馬術に取り組める環境にあるのではないだろうか.



馬への接し方や乗馬時の注意事項などの基本的な講習を受けた後,前回の下見に参加した教職員から優先的に乗馬を体験した.
最初は引き馬による乗馬で,コースを周回しつつ,前進,停止,旋回の基本動作を確認した.



続いて,学生,初参加の教員という順番で,引き馬による乗馬を体験した.



今回は3頭(騎?)に乗せてもらえたため,順番制であったが,比較的高い頻度で乗ることができた.
名前は,アルビオン,ドリーム,アッちゃん.
それぞれ個性があり,大きな馬の背中に揺られながら,乗り心地の違い全身で感じ,楽しむことができた.



引き馬の後は自由乗馬になったが,指導員の方々が各馬に付き添ってくれたため,暴走の心配もなく,安心して乗ることができた.



乗馬を重ねるごとに,試験後の疲労感が漂っていた表情に活力が戻り,精気が湧いてきた.
普段の教室ではなかなか見ることができない表情である.
大自然の中で,情動が自然と発露された結果であろう.



また,乗馬中だけでなく,馬の優しい顔立ちと,つぶらな瞳を見ているだけで,和やかな気持ちになれた.



最後に外周コースの走行を体験して,本イベントは終了となった.



今回は常歩が中心であったため,馬たちは途中眠そうであった.
とは言っても,半日に渡るお務めで,空腹になっていた.
感謝の気持ちを込めつつ,餌やりを体験させてもらった.



馬と言えば人参のイメージだが,リンゴの方が好物とのこと.
口いっぱいに涎を垂らしながら,むさぼるように食べていた.



馬小屋を見学させてもらった後,クラブハウスに移動して豚汁と焼き餅をご馳走になった.
学生たちには,白米も用意してくれた.
食べ盛りの20代には,非常にありがたかった.



お腹を満たした後,薪ストーブを囲んで歓談を楽しんだ.
貴重な体験ができて,会話が弾んだ.

また,勝手な構想(妄想)も膨らんだ.



全世界でグローバル化が進んでいる.
人,物,情報が世界中を駆け巡っている.
特に1990年代後半から急速に普及したインターネットにより,情報の世界ではグローバル化とボーダレス化が急速に進んだ.
インターネットという巨大コンピュータネットワークを通じて,情報は瞬時に世界を駆け巡る.
今や情報に垣根はない.

インターネットが普及する前は,居住する場所によって,得られる情報に格差が生じていた.
メディアでは何かと格差を問題視するが,居住する地域によって視聴できる番組に差があったTVこそ,格差社会の象徴であった.



人々は情報を求めて都心部に移り住み,戦後のベビーブームと相まって,瞬く間に東京一極集中が完成した.
首都圏にこれだけ人口が集中するのは,先進国では珍しい現象だろう.

一方,インターネットの普及により,情報の格差は解消された.
都心部や都会に住まなくても,十分に情報が得られるようになった.

都会にキャンパスを置く大学も,地方に立地する大学も,同じように情報が得られる.
得られる情報に差がないため,どこに住んでいても同じように学問や学究活動ができる.

MIT OCWiTunes Uを始めとするオープンコースウェアの普及により,世界の最高学府はインターネット上にあるとも言われている.
高い生活費を払って都会の大学に通わなくても,勉学の環境に差はなくなった.



一方,グローバル化は画一化の波でもある.
画一化が進めば,幅広く性質の異なるものが存在する環境が損なわれる.
つまり,多様性が失われる.

社会のグローバル化が進んでも,大学は多様であり続けたい.

大学の多様性は様々な要素に支えられているが,そのひとつに,多種多様な部活やサークルの存在がある.
メジャスポーツからマイナスポーツまで,いろいろな活動に取り組めるのが大学である.

バスケ,サッカー,野球などのメジャスポーツは,強い弱いは別にして,どこの大学にもある.
したがって,マイナスポーツの存在こそが,大学の多様性を支える土壌になっている.

名古屋大学には,和式馬術部というユニークな部活がある.
今回の体験を踏まえて,秋田県立大学雪中乗馬部なんかはどうだろうか.
もちろん冬場だけでなく,年間を通じて活動してもらいたい.



本荘キャンパスは,コンクリートで囲まれたビルの中にある大学ではない.
キャンパスの目の前には,子吉川という豊かな水域が広がっている.
豊穣で肥沃な米作地帯の本荘平野と日本海に面し雄大にそびえ立つ鳥海山.
キャンパスから少し足を延ばすだけで,これだけの環境がある.

スキーやスノボなど,降雪地域でしか楽しめないスポーツにも取り組める.
一方,バレーやバスケなどの屋内スポーツと違って,屋外スポーツは天候や気候の影響を受ける.

積雪の多い由利本荘地域では,屋外で一年を通して楽しめるスポーツは,貴重な存在である.



今回は,落馬時の安全性を考慮して雪中での乗馬体験であったが,雪上を軽快に駆け巡る馬たちを見て,雪国でも一年を通じて楽しめる競技の存在に気づかされた.

地理的条件を活かして,大学として多様な活動に足を踏み出す絶好の機会である.

国体出場への切符も決して遠くない.

| 乗馬体験 | 15:37 | comments (x) | trackback (x) |

  
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