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微生物におけるD-アミノ酸の機能解析及びその応用

応用生物科学科 助教 牟田口 祐太

今進めていること

タンパク質を構成する20種類のアミノ酸のうちグリシンを除く19種類にはL体、D体と呼ばれる光学異性体が存在します。これらの化学的性質はほぼ同じですが、生物は主にL-アミノ酸を利用して生命活動を維持しています。しかし、近年、微生物からヒトを含む幅広い生物において、D-アミノ酸も重要な生理機能を持つ事が分かってきています。私たちは微生物が生産するD-アミノ酸及びD-アミノ酸代謝関連酵素の機能解析を行い、その成果の食品産業や医療分野への応用を目指しています。

少々詳しく言うと・・・

1. 基質特異性の高いD-アミノ酸酸化還元酵素の探索
 D-アミノ酸は近年、ヒトにおいて様々な病気の診断用 マーカーとして期待されており、安価で高感度に物質の濃度を測定できる酵素分析法へのニーズが高まっています。一方、D-アミノ酸酸化還元酵素(脱水素酵素や酸化酵素)を利用すれば、単一の酵素でD-アミノ酸の分光光学的酵素分析が可能となりますが、現在報告されている酵素は基質特異性が低く、特異的な定量に利用できません。 そこで、基質特異性の高いD-アミノ酸酸化還元酵素を、安定性も視野に入れ、好熱菌から見つけようと試みています。

2. イソロイシン2-エピメラーゼ(IleE)ホモログ遺伝子の機能解析
 乳酸菌Lactobacillus buchneriから見出されたIleEは非極性アミノ酸を主な基質とする新規異性化酵素です。しかし、そのアミノ酸配列はラセマーゼ等の異性化酵素よりも、アミノ基転移酵素と類似しており、データベース上ではIleE遺伝子はアミノ基転移酵素遺伝子として推定されています。このことは、他の微生物が持つアミノ基転移酵素推定遺伝子の中に、IleEと同様のアミノ酸異性化酵素の遺伝子が存在する可能性を示しています。そこで、微生物のアミノ基転移酵素推定遺伝子からアミノ酸異性化酵素を新たに見出し、その分布・酵素学的特徴・生理的機能を解明することを目指しています。

3. 乳酸菌におけるD-分岐鎖アミノ酸の生理機能の解明
 これまでの研究で、一部の乳酸菌がD-ロイシン、D-バリン、D-アロイソロイシンといったD-分岐鎖アミノ酸を生産することを発見しました。しかし、これらのD-分岐鎖アミノ酸が何故作られているのかは全く不明です。そこで、D-分岐鎖アミノ酸の乳酸菌における生理機能の解明に取り組んでいます。

4. D-アミノ酸の食品機能に着目した発酵生産の改良
 近年、多くの食品中にD-アミノ酸が含まれている事が明らかとなり、その食品機能が注目されています。その一例として、経口摂取したD-アスパラギン酸(D-Asp)がヒトの肌の保湿性を高める美容効果を持つことが知られています。また、D-アラニンは強い甘味を示し、食品(日本酒)の味を改善することが分かっています。一方、食品の中でも発酵食品には発酵微生物に由来すると考えられるD-AspやD-Alaが多く含まれており、発酵食品中のD-AspやD-Alaにも上記のような食品機能が期待できます。そこで、独自の発酵文化を持つ秋田県産の発酵食品に着目し、どのような食品にD-Asp・D-Alaが豊富に含まれているのか?また、発酵過程において、どのように生産されているのか?について研究を行っています。

ここまで到達したい!

1. 基質特異性の高いD-アミノ酸酸化還元酵素の探索
 新たに見出したD-アミノ酸酸化還元酵素を利用して、D-アミノ酸特異的且つ、簡便な酵素分析法を構築し、キット商品化を目指しています。

2. イソロイシン2-エピメラーゼ(IleE)ホモログ遺伝子の機能解析
 IleEの発見は乳酸菌が様々なD-アミノ酸を積極的に生産し、利用している可能性を示しました。乳酸菌以外の微生物においても、IleE類似酵素を見つけることで、微生物におけるD-アミノ酸利用の多様性を示したいと考えています。

3. 乳酸菌におけるD-分岐鎖アミノ酸の生理機能の解明
 D-アミノ酸の生理機能を利用することで、乳酸菌が関与する発酵生産の管理や、腐敗菌となる乳酸菌の制御に新たな方法を提案できればと考えています。

4. D-アミノ酸の食品機能に着目した発酵生産の改良
 発酵食品中D-AspやD-Alaを強化した新たな発酵食品の開発を目指しています。

おまけの一言

D-アミノ酸は他のアミノ酸に比べて、研究が遅れていた分野であり、まだまだ未知の世界が広がっています。このD-アミノ酸研究の発展に少しでも貢献したいと考えています。