秋田県立大学 地域連携・研究推進センターHOME研究紹介

量子もつれ制御による生物電子顕微鏡の分解能改善

知能メカトロニクス学科 准教授 岡本 洋

今進めていること

生物学の教科書を開くと、きれいな分子や微小な器官の絵がまるで見てきたかのように描かれています。しかし、生体分子を高分解能で観察することは容易ではありません。先人たちはX線回折や核磁気共鳴(NMR)などを駆使して少しずつ生命の神秘のペールがはがしてきましたが、まだまだ問題は山積しています。私たちはこの問題に電子顕微鏡を使ってアプローチしたいと思っています。しかし、電子顕微鏡では電子そのものが試料を傷めるので、電子数が少ないと暗くて見えない、また逆に電子数が多いと試料が壊れる、というジレンマがあります。これを装置面から解決したいと思っています。

少々詳しく言うと・・・

新しい形式の透過型電子顕微鏡のハードウェアを開発します。新しいハードウェアは「電子ミラー」を含み、その表面に超伝導単一電子デバイスを実装します。超伝導単一電子デバイスはイメージングのための電子を量子力学的に制御します。その結果として「量子もつれ」という量子力学の不思議な性質により分解能を向上させられることが理論的にわかっています。技術的詳細に興味のある専門家の方はH. Okamoto, Phys. Rev. A 85, 043810 (2012)または arXiv:1102.4691をご参照下さい。成功すれば、生物電子顕微鏡は量子テクノロジーの新奇かつ有用な応用になるでしょう。

ここまで到達したい!

大変な長期目標ですが、0.8nmの分解能をひとつの生物分子で何とか実現したいと思います。この分解能が得られると、タンパク質の2次構造が見えてきます。また、凍結細胞試料の中の生体分子を同定できるようになるかもしれません。その場合、医学生物学に対する有意義な貢献になると思います。しかし、新型の装置の実証をしますので、上記の目標を念頭に、当面は出来るだけシンプルな装置で実現可能性の証拠を積み上げます。

おまけの一言

私はこれまで手作りで20mKに到達する冷凍機や、超高真空・極低温で動作するトンネル顕微鏡などを製作してきました。科学技術の中で、研究開発に使う装置の発明や開発は時間もかかり、すぐに利益が得られるわけでもありませんが、一般の研究開発活動に劣らず重要と考えています。私たちが目標とするのは全く新しい方式の装置の開発なので、手作りでじっくり研究を進めます。