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地域ビジネス革新プロジェクトの教員が日頃考えていること、研究成果や取り組み、学生たちとの日常についてご紹介いたします。

2018.08.30 PM 07:08

価値共創について

先日出席した学会で、大学院生の発表を聞いたのですが、生協産直は農家と消費者の交流があるから価値共創になっているという内容でした。

 

「価値共創」など、マーケティングとか経営戦略論の概念は、経営の改善を図るうえでヒントを与えてくれる発想の転換なんだと考えた方がよい場合が多いと思います。

例えば、「バリューチェーン」は価値が創造されてゆく過程のことを指しています。蛇足ですが、ポーターは複数の企業にまたがっておこなわれる価値創造過程は「バリューシステム」と呼んでいるのですが、どうしてそれをバリューチェーンと呼ぶ人が多いのでしょうね。複数の企業にまたがっていると、価値創造の局面に加えてその価値の分配が問題となります。これは「ファイブフォース」というポーターの競争戦略論の中心的な概念に関わってくる問題なので、バリューチェーンとバリューシステムの違いは重要だと思うのですが。

それはともかく、バリューチェーンでもバリューシステムでも、まったく価値を生まない経営や流通というのは、まともな会社ではないですよね。ペーパーマージンだけ取って何の役にも立っていない会社とかはあるかもしれませんが、経営戦略論やマーケティングの研究対象としてはさしあたり除外してもよいでしょう。すべての企業や流通は何らかの価値を生み出しているということは、それらはすべてバリューチェーンだったりバリューシステムだったりすることになりますから、ある事例を取りあげてそれがバリューチェーンかとか、バリューシステムかといったことを論じることは、意味が無いと言うことになります。論じるまでもなく、答えはイエスですから。

ではなぜバリューチェーンという概念があるかというと、価値が創造されることに注目することで、新しい経営の発展方向が見えてくるからとか、そんな理由ではないでしょうか。だから、事例を論じるとしたら、それがバリューチェーンなのかどうかではなく、バリューチェーンとして見た場合にどれほど優れたものなのかとか、そういう観点で論じることになるかと思います。

今回の発表で取りあげられていたのは「価値共創」ですが、それと方向性が同じものに、「サービスドミナントロジック」という概念があります。これは消費者に何かモノ(グッズ)を売ったとしても、本当に売ったのはモノではなくて、それが提供する便利さのようなもの(サービス)を売ったと考えるといいですよ、ということのようです。そう考えると、今まではレジでお買い上げの時点までを考えるのがマーケティングだったのが、消費者がモノを生活のなかで実際に使う場面まで深く考えなければならなくなるとか、新しい発想が出てくるということです。   これとかも、サービスドミナントロジックという概念の登場前後で現実に起きていることは何も変わっておらず、見方を変えただけだし、あらゆるモノの販売にあてはまりそうなことですから、ある商品の販売がサービスドミナントロジックになっているかを問う意味はないですよね。

 

まあそれでも、価値共創については消費者が価値の創造にどの程度参加しているかを論じる余地はあるかなぁ、でも生協産直ではそんなに参加しているという話にもならないかなぁ、とか発表を聞きながら考えていたら、他の先生から「生協産直はもともと消費者との連携を前提にしたものだから、それを価値共創といっても同義反復ではないか」という発言がありました。

 

わ~言い方がキツいなぁ・・・ 大学院生にはもっと教育的配慮をもってコメントしてあげた方がよいのではないかなぁ プラハラードを読んで価値共創がおもしろいと思ったとか、そこまではいいことじゃないですか。

私は大学院生ではありませんが、ほめられて伸びるタイプです!

みなさんよろしくお願いいたします。

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