私は農業経営学をきちんと学んできたわけではないのですが、いま感じているのは、
イノベーションについてはとりあえずシュンペーターの新結合を引用しておけばよし。
経営戦略論についてはとりあえずアンゾフ、余力があればドラッカーを引用しておけばよし。
こんな風潮です。そう思いません?
経営戦略論を論じるのなら、ポーターとかバーニーくらい参照してはどうかと思います。
経営戦略論はわりと成熟した学問分野で、かなり体系化されていて学派とかも明瞭に分かれています。アンゾフの時点で論点は出つくしているとも言えるけど、個々の論点についてはいろいろな研究が展開されているわけです。
そういうのは大企業を相手にするもんだと思っているのかもしれません。しかし、農業の側では、いろいろな企業的経営が出現してきていることは周知の通りですし、経営戦略論の側からも、農業経営に適用できるような概念や研究の枠組みが増えてきていると思います。経営戦略論自体、勉強していておもしろいですし、それを農業に適用すれば、今まで見えなかったことがわかってきそうで、知的刺激に満ちた世界が広がっているように思います。
いま、農業経済学の分野で研究者になろうという大学院生が少ないわけですが、この類の知的刺激を打ち出せていないのが1つの原因なのではないでしょうか。
何か突発的に、その理論を生み出した学説史的な文脈を踏まえずに経営学の理論を持ち出してきて、「えー?その事例にその理論なの?」みたいな分析をしてみせるやつは時々見かけますが・・・。
今日は、イノベーションの方の研究動向については触れませんでしたが、これについては今本を書いていますので、出版されたら読んでください。1年後くらいには出せるように頑張ります!