携帯端末に代表される最近の情報機器の進歩は目覚ましく、毎年のように小型化・高性能化が進んでいます。ユーザーが簡単にカスタマイズできるアプリ等を含めたソフトウェアが注目されていますが、実はそれを支えている内部のハードウェアも驚くべき進歩を遂げています。

　一見地味ですが、技術の源流にあり応用のすそ野が広大となる基盤技術を目指すところが私たちの研究分野の特徴です。特に私たちの研究室では、液晶材料というユニークな物質に注目し、材料・物性研究に基礎を置きながらディスプレイ以外の様々な新しい応用分野の開拓を目指しています。

• 能勢　敏明　教授
• 本間　道則　准教授
• 伊東　良太　助教

　液晶ディスプレイは、誰もが良く知っている身近な機器になりました。しかし、"液晶"とは、本来液体と固体の両者の性質を併せ持つ、大変ユニークな材料群を示す広い意味の物質の名称です。したがって、液晶ディスプレイは人間の目に見える可視光の制御に特化した機器と言えます。

　私たちは、電磁波の一領域を占める可視光を起点として、電磁波の周波数軸で応用の展開を考えました。実は、周波数軸で電磁波を眺めると、電波と光の間には大きな技術の谷があって、利用できない帯域が長らく残されていました。この領域は、ミリ波・テラヘルツ波領域と呼ばれ、新しい応用の開拓が進められています。スマホなどの携帯端末の爆発的な普及やデータ通信量の急増によって電波が不足し、ミリ波やテラヘルツ波領域の開拓が急務となっている社会的背景もあります。そこで私たちは、液晶材料を用いた様々な制御デバイスをこの領域で実現することを大きな目標にしています。

　また、液晶材料を光の領域で眺めても、可視光だけでなく光ファイバー通信に使われる赤外光の制御も可能であるし、小型軽量性を利用すればコンパクトな計測システムを実現する事も可能になります。そのような観点から、液晶材料の光計測分野への応用にも取り組んでいます。