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ナラティブ/社会構成主義について

(1)ナラティブ/社会構成主義について
 社会構成主義では、人は客観的事実の世界に生きているのではなく、自ら意味づけた(または周囲から意味づけられた)世界に生きていると考えます。 そして自らや環境に意味を与え、それを再構成し、それに基づいて思考・行動していきます。別の言い方をすると、個人の学習は環境との相互行為によって 成り立ちます。即ち周囲の人からの評価や周囲の人たちとの関係の中で、その行為の意味が個人の中に形成されていきます。そしてその大きな物語に沿って 個人は人生を歩んでいきます。
 例えばある人が「自分はダメだ」と自己評価すると、それに合った「親によく怒られた」「学校の教師にもよく怒られた」「成績も良くなかった」「友達も 少なかった」というような個々の小さな物語を思い出して、自分の評価を正当化(=大きな物語化)していきます。「自分はダメだ」という大きな物語を作った 「自分はダ人は、「自分はダメな人間だから、人に迷惑をかけないように、目立たないようにしよう」「役職には立候補しないようにしよう」と重要な経験をし ないままに人生を送るかもしれません(図1)。人生の重要な選択も、親や教師に任せるかもしれません。
 一方、同じ経験をしても、人により受け取り方は違います。「親によく怒られた」「学校の教師にもよく怒られた」「成績も良くなかった」「友達も少なかった」 別のある人は、「大人は分かってくれない」「周囲の人間も理解してくれない」「自分だけが正しい」「いつか仕返しをしよう」という意味づけをするかもしれません。 このように、客観的事実よりも個人の意味づけのほうがその人の態度・行動には重要となります。



 同じような経験をしたとしても、人によって「その経験の意味づけ」は異なります。後からの振り返りや考え直し、また後からの異なる経験によっても 「その経験の意味づけ」は変化します。例えば小さい頃に算数・数学が得意だった人は「僕は数学が得意だ」と考えるでしょうが、大学に入って数学が 難しくなって解けなくなると「数学が得意だ」というアイデンティティーは変化を余儀なくされるでしょう。ある人は「数学は得意ではなくなったが、 でも相変わらず好きだ」ということになるかもしれませんし、ある人は「数学は好きでなくなった」「数学はトラウマだ」「これからは数学や数字に関連 した仕事は避けよう」というストーリーになるかもしれません。
 また「自分はダメな人間だ」と自己評価をし、目立たないように・何もしないようにと育った人も、実は「ダメじゃない部分」を当然に持っています。 例えば「集中力がある」「狭いけれど深い人間関係」などの部分です。そうしたオルタナティブ・ストーリーが語られないまま残されている、と社会構成主義 では考えます(図2)。語られなかった「自己」が存在し、啓発的な人との出会いや啓発的な体験、重要な進路決定の岐路など、何らかのきっかけで自分の中の 別の小さな物語に気づくことで「新しい、別の大きな物語」に気づくことがあるかもしれません。しかし多くの場合、そのまま埋もれてしまっていることも 少なくありません。これを意図的に掘り起こして「あって欲しい未来」を構築しようとするのがナラティブ・キャリア・カウンセリングです(図3)。
掘り起こすことで自分自身が作り出している「しがらみ」を断ち、より自分自身や環境に適応していこうとするのです。
 人には誰でもいつかどこかに「好きなもの/こと」「楽しかったこと/場面/時間」「感心・感動したこと」「頑張ったこと」があります。それらを想起して 「自分にとってどういう人生を送ると幸せ/満足と思えるか」「これからどういうもの/こと/価値観を大切にしていきたいか」「そのためにはこれから何をしたら いいか/何をしたいか」と考えること(=語られていない自己の中にある未来のための資源を探すこと)で、未来に向けたキャリア構築をイメージするのがナラティブ・ キャリア・カウンセリングの考え方です。



(2)意味を掘り起こし(あるいは作り出し)、未来につなげる
 ナラティブ・キャリア・カウンセリングでは、クライエントへの質問を通じて、未来や現在の「意味」を掘り起こしたり、新たに定義したりしていきます。  ヒトは生き物ですから、快不快原則に基づき苦痛や不快、不安感を本能的に避けようとします。しかし「野球が上手くなりたい」と思えば、ランニングや つらい練習にも自主的に取り組むかもしれません。「医者になりたい」と思えば、数学や理科が苦手でも取り組むでしょう。未来や未来につながる現在に意味が 生じれば、その意味に基づいて積極的に行動しはじめます。
 「あって欲しい未来」を考えることで気持ちも前向きになりやすく、「あって欲しい未来に向けて今使える資源」を考えること、「あって欲しい未来に向けて これから頑張ること」を挙げていくことは、現時点の行動としては苦痛や不快、不安感であるかもしれないけれども、「未来につながる努力」という意味が生じる ことで「頑張れること」「頑張りたいこと」になります。


  (3)未来の生物的・心理的・社会的な適応に向けて
 人は必ずしも自分のことを客観的に評価できる訳ではなく、むしろ自分のことを(または/合わせて周囲の環境のことを)否定的に評価している人も少なくありません。 その自己評価/環境評価が、未来に向かって個人に不利に働きます。例えば「未来への不安」「現在の自信のなさ」に由来する消極性や後ろ向きさです。
 誤解を恐れずに言えば、ナラティブ・キャリア・カウンセリングでは「今、ここ」を重視しません。ナラティブ・キャリア・カウンセリングにおける「今、ここ」は、 あくまで「あって欲しい未来に向けた通過点」であって、どういう未来を構築したいかというほうを優先します。即ち「今、自信がないから何もしない」ではなく 「未来に自信を持ちたいから今、何かをする」と考えるのであり、「未来が不安で何をしていいか分からない」ではなく「未来の不安をなくするために、今何かをしておく」 と考えるのです。
 未来が不安な人たちに対して「未来に向けて適応していこう」「これから少しでも自分にとって居心地のよい未来を作っていこう」と一緒に考えていくのが、ナラティブ・ キャリア・カウンセリングなのです。

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