佐藤文隆・海部宣男著「星と宇宙の科学」(新潮文庫、p232)より

 人類をはじめて月に送ったアポロ・プロジェクトの最大の功績は何であったか? もちろんたくさんの天文学上の発見や波及効果としての技術の進歩もあった。しかし、最大のものは人間が地球全体をひとつの星として、宇宙という大会の中に浮かぶさまを目の当たりにしたことだろうと言われている。それは人類のメンタリティーに計り知れない衝撃であったというのである。わたしもそのとおりだと思う。

「人間とは何であるか?」これは人間自身にとって尽きない問いであり、終わりになることはないであろう。さまざまな切り口でこれに答える試みもなされたが、宇宙の中での人間を考えることが人間自身の理解に欠かせないものである。宇宙を知ることは人間の理解にも連なり、そして、そのことがまた人間自身に影響を与えるであろう。