オパーリン他著「生命の起源への挑戦」(ブルーバックス、p86)より

 宇宙科学をとってみても、それが、人類に実際的な利益をもたらすから重要だと考える人もいます。たしかに、通信、気象、地質学などに役立つ面もありますが、もっと大事なことは、それが自然や生命の形成についての研究に大きな意味を持っているのだということです。

 聖書にもあるように、人はパンのみで生きるのではありません。人間は、各人が独自の自然観を持って生きており、それが、さまざまの自然と対応しながら生きる力ともなるのです。

 人間は、自然を理解するために、戦い続けています。歴史上には、この戦いのために生命を捨てた人たちもたくさんいます。当時の体制に抗して宇宙無限説を唱え、火刑に処せられた十六世紀イタリアのジョルダノ・ブルーノのように・・・。

 私たちのあらゆる行為は、その時代の持っている自然観で決めることができます。古代バビロンの人たちは、天に昇るために塔を築きました。しかし、今は、そんなことをする人はいません。人間の自然観が、それだけ違ってきているからです。