醸造学を学ぶ


 世界で日本人の寿命は男女とも最長ですが、肥満に悩む欧米諸国から日本人の食生活が注目されています。 日本人の食生活といえば味噌、醤油、食酢、みりん、清酒、焼酎など伝統的な醸造物は重要な役割を担っていますが、日本固有の醸造物の摂取と日本人の長寿命との関係が推論されます。 醸造物は我が国に古くから伝わる発酵食品であることは誰でも知っていますが、その特色は製造に際して麹菌を穀類に生やした「麹」を使うことであります。 麹菌を使う食文化は西洋には見られませんので、麹菌の使用の中に日本人の長寿命の秘密が隠されているように考えられます。 酵母もまた重要な醸造微生物です。 お酒造りの主役ですが、味噌、醤油、食酢の製造にも酵母は大きな働きをしています。 酵母は増殖・発酵の過程で有機酸や香気成分を生成し、アミノ酸バランスを整えるという働きもあり、醸造物すべての風味に大きく関係しています。 我々の祖先は麹菌と共に酵母、乳酸菌、酢酸菌などの醸造微生物を上手に使い、米、麦、大豆などの穀類から、滋味あふれる味噌、醤油や酒類を造りだし、食生活を豊かなものにしてきました。 最近は日本人の食生活が洋風化の傾向にありますが、日本古来の伝統的な醸造物の意義を再検討する必要があります。 秋田県立大学醸造学講座は、麹菌、酵母、乳酸菌、酢酸菌などの醸造微生物の機能解明と新しい優良微生物の育種を研究目標として研究を行っています。 醸造学は応用微生物学の一分野のため1、2時間の講義で済まされている大学が多いのですが、秋田県立大学醸造学講座では研究対象を醸造に特化して主に麹菌と酵母の研究を行っています