子吉川レガッタ2013観戦記
2013年9月8日,由利本荘市の一大イベント「子吉川レガッタ2013」が開催された.
34回目となる今年のレガッタには,95クルーが出漕し,熱戦が繰り広げられた.



本学からは6年連続6回目の参加となった.
成年男子,壮年男子,成年女子の3枠で,3クルーが出漕した.

秋雨前線の影響で,夜から雨が降り続いていた.
雨の中でのレースを覚悟していたが,朝には降り止んでいた.
練習期間も含めて今年は,天気に恵まれている.
去年のような,東北には希有な残暑もない.
この日も無風で,レガッタには絶好のコンディションであった.

早朝から多くのテントが立ち並んでいた.
開会式は朝8時から行われた.
テントから近かったので,全員で参加した.
始めに昨年度の優勝クルーから,優勝杯の返還があった.
続いて,大会会長の挨拶,副市長の祝辞,来賓の紹介があった.
いずれの方々も,東京五輪の開催決定を祝していた.
子吉川で育った選手が東京五輪に出場する.
夢物語ではなく,由利本荘市の競技レベルなら,十分に実現可能だろう.



無風だが,静水ではなく,けっこう流れがあった.
特にゴール付近では,ブイに引き波が見えるくらいに流れていた.
水流を肌で感じるために,漕手みずからが水に足を浸し,確認していた.



予選のレースは,参加クルー数が最多の成年男子から始まった.
Aクルーは,これが初レースでデビュー戦.
スタート練習が不足していたため,早めに出艇したかったが,艇のトラブルで蹴り出しが半時間以上遅くなった.
バウのシートの止め具が破損して,配艇係が予備シートの手配に時間を要していた.
初っ端からトラブルに見舞われたものの,漕手は動揺することなく堂々としていた.
早朝レースだったので,まだ体が起きていなかったとも考えられる.



全員20代のAクルーは,予選から本領を発揮してくれた.
練習なしで挑んだスタートも,失敗することなく決まっていた.



持ち前の体力を活かして,後半もぐいぐいと艇速が伸びた.
そのまま差を広げ,トップでゴールを切った.



着順の1番が光っている.
タイムも3分3秒01と,まずまずの記録である.



続いて壮年のPクルー.
スタートから苦戦した.
後ろの3人が整調と全く合わない.
遠目で見ていてもバラバラであった.



瞬く間に他艇が見えなくなり,審判艇にも抜かれる始末.
阿部ヘッドコーチから,バウサイドのシート変更指令が下った.



タイムは危うく4分の大台に乗るところであった.



続いて,Uクルーの予選.
バランス,テクニックとも抜群で,スタート数本で他艇を圧倒する.



後半はレートを上げることなく,大きく水を空けて余裕のゴール.



逆流であることを差し引けば,まずまずのタイムであろう.



その後,機器のトラブルで,1時間以上の遅れが発生した.
中断したレースを傍目に,早めの昼食に入った.
100グラム500円の由利牛を堪能する.
熾烈な争奪競争で,瞬く間になくなった.



昼過ぎにレースが再開され,昼休憩なしで続けられた.
Uクルーの敗者復活戦.
阿部ヘッドコーチの指示通りバイサイドを入れ替えたのが功を制した.
両舷のタイミングも合っている.
熟練に近づきつつある漕ぎで,見事復活を遂げた.



敗復なしで迎えたAクルーの準々決勝.
由利牛でパワーを充電した.



いつもよりレートを上げて,懸命に3レーンのクルーを追い上げる.
2位に入れば準決勝だったが,一歩及ばず,ここで敗退となった.



学生3名は全員卒業,3番は来月ご栄転なので,最後のレースとなった.



Pクルーの準々決勝.
短い間隔で迎えた3レース目.
体力的にもきつかったと思うが,粘り強い漕ぎで接戦となった.
一方でスタート直後に事件が起きていた.
トップをひた走っていたクルーがレーン侵害.
審判艇と本部による協議の結果,失格となった.
ということは,Pクルーが決勝進出?
一瞬,甘い期待に包まれたが,1秒差で及んでいなかった.
熟練クルーとして,来年度以降の更なる成長と成熟が期待される.



Uクルーの準々決勝.
レーン抽選のクジ運が幸いして,宿敵との準々決勝での潰し合いは免れた.
組み合わせは,予選のタイム的にも問題ない.
好スタートを切り,数本で半艇身ほど飛び出す.
3レーンだが,既にバウが見えている.
他艇を見ながら,気持ち良く漕げただろう.



慣れない旧艇でのレースで,途中で何回かミスが生じた.
艇が止まるほどでもなかったが,瞬く間に差が詰んだ.
だが冷静に対処して,予定通りトップでゴールラインを通過した.
2年連続の決勝進出を果たした.



10キロ以上重い旧艇であったが,タイムは予選より1秒以上縮まっている.
ストロークサイドの残留漕手2名は,レース感覚が戻ってきているようだ.
バウサイドの大型ルーキー2名も,持ち前の勝負強さを発揮している.
コックスの指揮力も抜群だ.
パワーとチームワークを高めつつ,決勝に備える.



ゴール付近に陣取った県大のテントには,関係者がたくさん来てくれた.
栄養ドリンクや果物,アイスクリームなど,様々な差し入れを頂いた.
在籍している学生や教職員だけでなく,元職員もこのような形で大学の応援に来てくれるのは,嬉しい限りである.
たくさんの人たちが応援に来てくれたのは,個々の選手の人柄と,決勝まで駒を進めたクルーへの期待感によると思う.



午後になると,負けた団体からテントを片付け始める.
最後まで陣取って応援できるのは,一握りの団体だけ.
テントは遠くても,最終レースに残るという優越感.
予選や準決勝にはない,決勝にだけ漂う空気感.
陽がやや傾きかけた頃,決勝レースのスタートが切って落とされた.



昨年は,熾烈な2位,3位争いで,トップポール差で勝ち抜いた.
だが1位とは大差であった.
今年は違う.
3番手を大きく引き放し,トップとの熾烈なレースとなった.
懸命に追い上げる中盤.



後半は1艇身差まで詰め寄った.
一漕ごとに艇速が伸びていた.
応援の声が飛び交っていたが,差し切ることはできず,なだれ込むようにゴールとなった.
500メートルを漕いでで1艇身.
ストローク数にして,一漕半ほどの差である.



結果は昨年度と同じ準優勝であったが,トップとの差は確実に縮まっている.
優勝は逃したものの,トップクルーは射程範囲内に入った.

昨年は初出場で準優勝という快挙に歓喜した.
今年は同じ結果でも,受け止め方が違う.
追いかける立場の宿命であろう.
1.5ストローク及ばなかったが,二年連続の準優勝である.
本学にとっては快挙である.
また,来年に向けて期待感の大きなレース結果であった.



最終レースは成年男子の決勝.



トップクルーのタイムは2分17秒56.
全国大会でも上位に残る実力である.
由利本荘市のボート競技のレベルの高さを垣間見る記録である.
学生あるいは若手教職員クルーで,成年男子枠で勝ち上がりたい.



応援に来てくれた方々と記念撮影.



閉会式で賞状を受け取った後,再び記念撮影.



大学は流動性の高い組織である.
流れる水は澄んでいるように,流動性は大学の活力のひとつになっている.
したがって,他団体と比べて本学は,固定メンバで出漕を続けるのは難しい.

学生は単位を取って進級し,卒業する.
卒業式が終われば,瞬く間に新入生が入ってくる.
毎年,入れ替わる.
職員にはキャンパス間の異動がある.
教員は学外への大異動と常に背中合わせ.

このため,基本的には,毎年,漕手を入れ替えてクルーを編成する.
一度きりのクルーとして,レガッタに臨むことになる.
漕手は入れ替わるが,団体登録する県立大学の名前に変わりはない.
そして,3位まで入賞できれば,プログラムに名前が残る.
入賞するクルーの,個々の漕力は偉大である.
だがプログラムには,残念ながら個人名までは残らない.
団体名しか残らない.

3年目の2010年に決勝進出を果たしたが,4位に留まった.
5年目にして,大会プログラムに本学の住所が刻まれた.
6年目の今年は,同じ位置に本学の名前を残すことができた.

何か新しいことを始めるのは,それほど難しくない.
アイデアという名の,単なる思い付きで始められる.
時には,その思い付きに振り回されることもあるだろう.
一方で,続けてゆくことは難しい.
貞観政要には「草創と守成と執れが難き」とある.
子吉川レガッタへの参戦が一過性の活動に終わらず,漕手や関係者が入れ替わっても参加し続けられる仕組みを,今後は築いてゆかなければならないと思う.
そのためには,男子枠を含めて,プログラムの至るところに,本学の名前を刻むことであろう.

9月の第二週末に,子吉川に足を運ぶ.
レガッタが開催されている.
市民総出で熱戦が繰り広げられている.
川沿いに,県立大学と書かれたテントが張られている.
何気なく訪れてみる.
多くの学生,教職員,関係者がつどっている.
そして,最終レースまでテントをたたむことなく,応援をつづける.
いつまでもそのような団体であってほしい.
守成の難きを背負って,この活動が相伝されることを願っている.

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