何を研究をしているか


1、麹菌の研究(岩野教授・伊藤助手)
 タンパク質がタンパク質分解酵素で加水分解されてペプチドやアミノ酸になること、ペプチドやアミノ酸には甘味、旨味、酸味、苦味を呈するものがあることは知られています。 醸造では麹菌が生産するタンパク質分解酵素がお米のタンパク質を分解してペプチドやアミノ酸として風味をつくっています。 しかし、お米のタンパク質といってもグルテリン、グロブリン、プロラミンなどいろいろあり、どんな分解酵素がどのタンパク質を分解して、どんなペプチドやアミノ酸をつくり、それがどんな呈味をしめすかはほとんど明らかではありません。 私達はお米の品種ごとのタンパク質組成の違い、麹菌のタンパク質分解酵素の菌株による違い、醸造物に含まれるペプチドの単離と呈味性、アミノ酸組成の違いと呈味性などについて研究を行っています。

2、酵母の研究(中沢助教授)
 お酒造りでは酵母は主役ですが、味噌・醤油・食酢の醸造でも酵母が重要な役割をしています。 それは醸造物の風味に関わる香りや有機酸は主に酵母がつくるからです。 また酵母は増殖・発酵の過程で苦味アミノ酸を食べて甘味・酸味アミノ酸を出すということを最近私達が明らかにしましたが、酵母は醸造物のアミノ酸組成を変えて美味しくするという働きをしていると思われます。 醸造に使われている酵母は一般に無性増殖で増えますので形質が保全されます。 しかし新しい酵母を交配でつくるには有性増殖能を回復する必要があります。 私達は醸造酵母の胞子形成に関与する遺伝子の発現制御機構明を分子生物学的な手法で解明する研究を行っています。 最終的にはいくつかの優れた醸造酵母に一時的に胞子を形成させ、それらを交配して新規な醸造酵母を育成することを研究目標としています。