研究テーマ

音空間情報のモデル化・符号化

ある空間において,音源から聴取者まで音が伝わるときに,直接到達する音に加えて,部屋の壁や天井,あるいは聴取者の頭部,耳介などで反射・回折した音も耳に入射されます.このような音の伝搬特性を伝達関数の形で表し,任意の音信号に畳み込むことで,耳に入力される音を再現できます.そのような処理をした音を聞かせると,例えば,何もないところから音が聞こえてくるかのように聴取者に感じさせることができます.つまり,音源の位置や部屋の音響特性(音空間情報)を含んだ音を合成し,仮想的な音源を作ることが可能となります.この技術は,音響バーチャルリアリティに応用できます.しかし,一般にそれらの伝達関数は複雑な特性を示すため,そのままでは計算量が多くなるなど実用上の問題があります.そこで,周波数領域,時間領域それぞれでデータ削減を目指した簡略化の検討を行ってきました.聴取実験による主観評価を行った結果,周波数特性の一部の帯域を平坦にして(下図)も,聴感上影響が見られないことがわかっています.

聴覚ディスプレイ

任意の音空間情報を合成し,仮想的な音空間を制御して聴取者に提示するようなシステムのことを”聴覚ディスプレイ”と呼びます.その実装方法の一つは,下図のように音源信号に音響伝達関数を畳み込んでヘッドホンで提示する方法です.音響伝達関数には,頭部や耳介での反射・回折の影響が含まれているため,個人性を考慮しないと再現精度が低下し,臨場感が損なわれるという問題があります.そのような問題を解決するため,個人に合わせた伝達関数のモデル化や推定法の研究をしています.また,GPUを用いた並列処理による高速化によって,多数の仮想音源(100以上)を制御するシステムの開発なども行っています.

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