研究内容

IRカメラによる埋設対人地雷の探知技術

 地雷除去には特別に訓練された地雷探知・処理スタッフ(CMAC)にも専門家集団でありながら,処理地雷数千個に対して1名の割合で被害者が出ている報告がなされている.そこで,このような問題点を解決するための一手段として,遠隔から安全に探知が可能である赤外線カメラと冷却剤を使用したアクティブ地雷探知技術を提案する.この方式は,地雷埋設地域に冷水を一定量散布して強制的に地表面を冷却させる.この時,地中に対人地雷等の埋設物が存在する場合は,「土」と「埋設物(地雷)」の放射熱の違いによる差を赤外線カメラによって測定する.この結果,地雷探知及び処理を実施する隊員は直接地雷埋設地域に入ることなく,離れた所から安全に地雷埋設状況及び埋設位置を認識する.現状の金属探知器による探知作業では,地中の金属片と埋設地雷を正確に分類することは非常に困難であり,その確認のためにはプロッダ(接触式プロ―ブ)による確認作業を実施している.カンボジアにおける実施資料によると,現状の地雷探知器が金属片等の探知物の中から地雷を発見する確率は,約1/700である.これらのことから,下井が考案した散水による地表面の冷却方式後の赤外線カメラ画像による探知結果は,従来の探知方式と比べ作業の安全性と効率を格段に向上させることが可能である結果が得られた。赤外線カメラによる探知結果と画像処理後の結果を示す。 

 世界中の紛争地域には,戦闘が終了した現在も約8千万個以上の未処理の地雷が埋設されたまま放置されている.この放置された埋設地雷の数は,平和時に国連等の援助により地道に除去されても対象国間で戦闘が始まれば再び(対人地雷等が)埋設される.このため,更に放置地雷の数を増加させる結果となり,地雷の被害者を増やす終わりのない地獄を繰り返している.その結果,埋設地雷による農作地の使用面積が制限されること及び森林や河川の立ち入りも困難になるため,住民の生活及び経済復興にも著しく悪影響を与えている.戦闘終了後の平和時において,最も非人道的な兵器として問題とされている。


72A対人地雷


プロッダに夜地雷探知技術


赤外線カメラによる埋設地雷の探知画