フジツボ研究の意義

ジツボとは:
フジツボはエビやカニなどと同じく節足動物門、甲殻綱の一員で、蔓脚亜綱、官胸目に属します。岩場でよく見かける生き物です。岩などに付着して生活することから、付着生物と言われています。

フジツボは困り者?:
フジツボは身近な生き物です。海水浴などで裸足で岩場に行って足を切ったりするという意味でも確かに困り者なのですが、実は想像以上に我々の生活に影響を与える困り者なのです。
フジツボはなぜか船底、発電所、ブイなどの人工構造物に(好んで?)付着します。さらに一旦付着するととても剥がすのがむずかしいくらい強固に付着するのです。船の燃費や故障の原因となること、発電所を止めてしまうということは大変なことです。そこで、フジツボなどを付着させなくする研究、”付着防除研究”が世界中で行なわれています。

フジツボキプリス幼生の研究:
フジツボを付着させなくするにはどうしたら良いでしょうか?それはフジツボのキプリス幼生が付着できないように塗料を塗ることが通常の方法です。これまで、有機スズ化合物を用いて、かなり効果があがっていました。ところが有機スズ化合物の毒性や環境ホルモン作用が深刻になるにつれ、有機スズ化合物を使うことは禁止されました。
私たちは逆の考え方をしました。すなわち、どのようなしくみでフジツボが付着するのかを明らかにできれば有効な付着防除法も見つかるのではないかというものです。そこで、フジツボの付着するためだけに特化したキプリス幼生に着目し、研究を始めました。実際に研究を始めてみると、フジツボのキプリス幼生はなかなかチャーミングでおもしろいことがいっぱいつまった幼生であることがわかってきました。私たちの研究の一端をこのホームページからわかっていただければうれしく思います。
現在の私たちの興味は幼生の接着剤の構造にあります。実は海水環境下で有効に働く有機高分子接着剤はありません。そこで、フジツボから海水中で強力に働く原理を教えてもらい、海水や塩水環境で働く合成接着剤のアイデアを教えてもらいたいと考えています。

アカフジツボキプリス幼生(左)とそのキプリス幼生が付着変態し、フジツボ型になった幼体(右、付着後、数日たって餌をとり始めるころ)

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