材料と方法 調査地点は、八郎湖に流入する主要5河川の、田畑、民家をほぼ含まない森林流域を空間的に網羅する形で、計35地点としました(図)。
背景と目的 八郎湖は平成20年3月に指定湖沼に指定され、その水質改善が大きな課題となっています。八郎湖には大小合わせて20ほどの流入河川がありますが、そのうち、馬場目川、三種川、井川、豊川、馬踏川の5河川が主要河川となっています(図)。河川は、その流域内で生じた富栄養化の要因物質である栄養塩(窒素やリン)を湖沼や沿岸まで輸送します。そのため、八郎湖の水質汚濁には、河川から輸送される栄養塩も大きく関わっていると考えられます。河川から輸送される栄養塩の起源には、大きくわけて点源と面源があります。わが国では、下水処理場や工場といった点源からの負荷量は規制や整備により年々低下傾向にあるものの、八郎湖をはじめとした湖沼などの閉鎖性水域の水質はなかなか改善されないことから、森林や農地といった面源の影響が重視されるようになってきています。森林からの栄養塩の流出の実態を把握することは、富栄養化の原因や実効ある負荷削減対策を検討する上でも重要な課題です。
渓流水質は、気象、地形、土壌、地質、降下物、樹種、林齢、森林管理といった様々な要因から形成されます。そのため、一般に渓流水質の空間的なばらつき(不均一性)は大きいと認識されています。八郎湖流域の森林は、複雑な地形、多様な地質と土壌の上に成立し、自然林と人工林が混在し、その管理も様々であるため、比較的狭い範囲であるにもかかわらず、渓流水質が地点によって大きく異なると考えられます。しかし、八郎湖流入河川の渓流水質の空間的な不均一性はよくわかっていません。八郎湖流入河川の本来の水質はどのようであり、それが地点間でどう異なっているのでしょうか?本研究は、八郎湖集水域において、空間的に多点数の採水を行い、森林河川水質の空間的不均一性の把握とその要因を明らかにすることを目的としました。
八郎湖集水域における森林河川水質の空間的不均一性の把握とその要因の解明
自然生態管理学研究室
秋田県立大学 生物資源科学部
生物環境科学科 環境管理修復グループ
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