教員の自己紹介とメッセージ

川島洋人(持続可能マネジメント講座 准教授)

現在,どのような研究・教育をしていますか?

安定同位体を用いて,有害化学物質の発生源解析,起源推定の研究を行っています。環境分野というよりも,鑑識分野などに移行しつつありますが,分野にはあまりこだわらず,社会に必要な研究をしたいと思っています。最近のテーマとしては,冷凍餃子のメタミドホスの異同識別や,粒子状物質の越境汚染,VOCs(揮発性有機化合物)の発生源解析,シャケの生態学の研究など,社会的にも話題になった問題にどんどん取り組んでいます。研究室は菊地英治先生梁瑞禄先生と一緒に運営しています。

研究・教育をするようになった経緯を教えてください。

横浜国立大学にて研究をスタートさせました。その時出会った恩師達(中西準子先生,益永茂樹先生)や先輩,後輩達に,社会へ研究の貢献,研究の面白さ等,様々なことを教えて頂きました。私は出身は藤沢市で神奈川県から出たことがなかったのですが,親戚も知り合いも誰もいない秋田県に7年ほど前にやってきました。秋田県立大学では安定同位体比質量分析計を購入したばかりで,あまり使用されていない状態だったため,安定同位体の研究の立ち上げや学生の教育を熱心にやって欲しい,そのような経緯で私に白羽を矢を立てて頂き(と言っても,安定同位体は一度も測定もしたことがありませんでした),はるばる秋田までやってきました。当初は心細く,色々と大丈夫かいな?と思うこともありましたが,すぐに慣れて,楽しく研究させてもらっています。

研究・教育は社会にどのように役立てられると期待していますか?

大学での研究は一見すると理論的で机上の空論と思われがちですが,短期的な利益や便益に支配されないため,長期的に様々な可能性を追求することが出来る場所だと思います。それらの無数の可能性のうち,いくつかが社会に影響を与え,時間をかけて浸透し,社会をよりよくすると思います。例えば,今,我々がトライしている研究でも,もし冷凍餃子の問題などで正確かつ迅速に異同識別が出来る手法が確立されれば,あれほどまでに中国産の冷凍食品が長期的な不買運動にはならなかったでしょうし,日中間で妙な国際問題にはならなかったと思います。研究が出来ることは本当に色々とあると思います。

研究・教育の面白さ,喜びは何ですか?

研究の面白さは,誰もやっていない,知らないことを知れるということ,社会をよりよく出来る可能性があることなどがありますが,人とのつながりも大事な点だと思っています。研究をやっていると,それに興味を持ってくれる人がいます。海外の人ということもあります。海外の人は,言葉も文化も宗教も違いますが,研究では同じ言語で話すことが出来ます。秋田とか,日本という小さな枠組みで考えずに,世界を相手にしようと,やや大げさに思っています。 また,教育というものが何なのか,はっきりとしたことはわかりませんが,一緒に研究している学生達と未知なる世界にトライできるのは何物にも変えがたいです。一緒に研究していると,学生達がある瞬間に研究の面白さを感じてくれる時があるのですが,そういう学生を見ると,うれしく思うと同時に,自分もまたがんばろうと感じます。現在,川島チームは院生2人,4年生3人,2年生2人と,徐々に人数が増えてきて,責任と共に,やれることが大きくなってきています。そういった学生達とは,研究以外にも,社会や大学の問題など様々なことを毎日,明け方まで熱く議論しています。そこから生まれた様々なことが現実化するのは,本当にうれしく思います。

学生or受験生に一言お願いします

大学に来ると,その淡々とした日常にびっくりすると思います。特に受験勉強をした後では,拍子抜けすると思います。そのため,時間を有効に使おうと資格を取ったり,パソコンのスキルを上げたり,「わかりやすいこと」に走りたくなります。しかし,私は,大学生にとって,大事だなと思うことは,哲学や倫理について考えたり,古今東西の本を濫読したり,映画や絵画や建築物を見たり,様々な文化や人に触れること,もしくは孤立することで,人間形成されるのではないかなと思っています。最近では震災や原発の問題を自分達の問題として議論し,話し合うことが本当に大事なことではないかなと思います。そういう時間は会社に入ってからは,なかなか作り辛く,貴重な時間になると思います。下手にスケジュー帳を埋めるくらいならば,孤立してしまった方がいいとさえ思います。少し青臭いですが,私も未だに自分とは何者なのか,自分は何が出来るのか,社会は何が問題なのか,そんなことを必死(!)に,学生達という仲間と,(笑いながら!)考えています。こんなどんよりした社会ですが,きっと,世の中はゆっくりと良くなっているんだと思います。あまり,深く考えず,時に深遠に,楽しくがんばっていってください。