パスカル著「パンセ」(新潮文庫、上巻p218)より
思考に人間の偉大さがある。
人間は、自然のうちで最も弱い一本の葦にすぎない。しかしそれは考える葦である。これを押しつぶすのに宇宙全体が武装する必要はない。一つの蒸気、一つの水滴もこれを殺すのに十分である。しかし宇宙がこれを押しつぶすとしても、そのとき人間は、人間を殺すこのものよりも、崇高であろう、なぜなら人間は、自分の死ぬことを、それから宇宙の自分よりずっとたちまさっていることを知っているからである。宇宙は何も知らない。
だから我々のあらゆる尊厳は考えるということにある。我々が立ち上がらなければならないのはそこからであって、我々の満たすことのできない空間や時間からではない。だからよく考えることを努めよう。ここに道徳の原理がある。
私は私の尊厳を空間によってではなく、私の思惟の規則によって求むべきである。私は領土のかずかずを所有したとしても、ただそれだけのことであろう。空間によって宇宙は私を一点であるかのように包み込む。思惟によって私は宇宙を包容する。