研究テーマの紹介と解説 |
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籾殻に存在するイネ生育促進物質の研究
籾殻(もみがら)は、細胞壁に珪酸(けいさん)が沈着した硬い上表皮を有することから、胚や胚乳が外力によって破壊されるのを防いだり、種から幼苗に生長する間のエネルギー源である胚乳を微生物に食べられないように守っている鎧のような働きをしていると考えられてきました。
ところが、生物制御化学講座でのこれまでの研究の結果、籾殻にはイネの生長を促進する物質が含有されていることが明らかになってきました。
下図は、種籾および種籾から籾殻を取り除いた玄米を用いて、幼苗の初期生育を調べた生物検定(バイオアッセイ)の結果を模式的に示したものです。玄米を播種する際、籾殻の粉末を加えて発芽・生育させました。すると、籾殻を加えた試験区では、種籾や玄米のみを発芽・生育させた対照区と比較して顕著な生育促進効果が確認されました。
いくつかの検討を行った結果、籾殻の生長促進活性は、籾殻中に含まれる何らかの化学的因子によるものであると推測されました。
現在、私たちの講座では、この化学的因子の解明を進めています。
このように、籾殻は、外敵から身を護るための単なる殻ではなく、雑草に負けることなく速やかに育つように生育促進物質まで周到に用意されたゆりかごであることが明かになりつつあります。
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