人間は自然のふところに抱かれながら特定の地球表面に生活しています。それぞれの地域にはそれぞれの営みの積み上げ(歴史)から個性豊かな風土と地域社会がかたちづくられてきました(図1)。その地域社会を成り立たせる基礎単位=中核には生物資源と地域環境があります。情報革命を基礎に経済活動が国家を大きく越えるグローバル時代になったいまでも、地域社会の中核にその地域の生物資源と地域環境があるという事実は変わりません。
図1 自然・風土・人間社会の関係
私達地域計画学研究室は、グローバル時代になればなるほどその基礎単位となる地域の個性発揮が大切になるという観点から、魅力的で個性輝く地域づくりをめざします。具体的には、地域資源や環境に関する経済学など社会科学的な手法を基礎として、地域社会の人々が直面する問題点を解明し、解決するための方策(社会的技術)を追求し、提言していきます。
地域計画学の究極的な目標は、地域に住む人々の総福祉(total
welfare)を高めることにあります。そのためにはかけがえのない地球環境を維持できる生活スタイルと地域社会のあり方を身近なところから追求していき、その経験をおしひろげていくことが大切だと私たちは考えています(図2)。
図2 研究目標へのアプローチ
ところが、ある地域では問題解決が順調に進んでも、置かれた条件があまり違わない別のところでは一向に進まないということがよく見られます。それはいったい何によるのでしょうか?
実はそこにこそ私たちが解明しようとしている地域問題の核心があります。その問題解決能力、地域(社会)力とは何か?それを多面的に解いてグローバル時代に生き抜く地域人の力を本質的に高めていくことに貢献しませんか!
@地域資源管理における自給・贈与・交換などの非市場関係形成の意義
A農業水利施設の維持管理水準の規定要因の解明
B環境保全・創造型農業の形成過程の目標、組織、コスト負担の特徴
Cコミュニティ形成による農業構造変革の可能性
D米価下落期における地域農業の自治集団組織の構築
以上の諸テーマの追及から私たちは、わが国の地域資源の賦存状況に適合した資源維持的農業マネジメント・システムとして「共同経済領域の多様な展開による地域力強化方策」を析出しています。今後は、グローバル時代にあって地域定住条件を確保できるviableなシステムの具体像を提示していくことが課題です。
@地域における組織や制度の変化が住民に与える影響の解明
A地域における組織や制度の変化に適応した住民組織の構築
私たちはまた、市町村合併などの地域における組織や制度の大きな変化が住民に与える影響を解明し、それに対する住民の力を強化するための組織構築のあり方を検討しています。
最近、学生が取り組んだ研究テーマ(卒業・修士・博士論文)は次のとおりで、研究室の理念に即しながらも、幅広い課題に取り組んでいるのが特徴です。
・ 無代かき稲移植栽培に対する実施農家の評価と改善可能性
・ 菜の花の多段階活用における経済性の評価−秋田県小坂町をフィールドとして−
・ 水環境に配慮して栽培された米に対する市場評価向上の可能性−無代かき栽培を事例として−
・ 山間地域における木質バイオマスエネルギーの持続的利用条件
・ 地域資源管理における集落活動の現代的意義
・ 地域資源保全向上活動を通じての地域コミュニティ活性化の条件−「農地・水・農村環境保全向上支援対策実験事業」モデル地区を対象として−
・ 持続可能な地域社会形成に向けた菜の花プロジェクトの展開と課題
・ 地域経済停滞下における作業受託型の農業法人を介した地域農業継承の特質−秋田県羽後町のB法人を事例として−
・ 祭りが地域コミュニティに果たす役割−秋田市竿燈まつり参加町内会の比較を通じて−
・ 地域自治組織が住民生活に果たす役割と今後の課題
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