生物有機化学

 

 

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発表日 / 紹介論文 / 担当者 / 概要
を掲載しています。
2008.11.25
"Two highly divergent alcohol dehydrogenases of melon exhibit fruit ripening-specific expression and distinct biochemical characteristics "
Plant Mol. Biol. 2006, 61, 675-685.
[MC2] 齋藤
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アルコールデヒドロゲナーゼ(ADH)は、アルデヒドからアルコールに相互変換してエステル体生成のための基質を与えることにより、揮発性の香り生合成経路に関与している。 メロンの2つの大きく異なるADH遺伝子が単離されている。Cm-ADH1は亜鉛結合型のmedium chain ADHに属し、これまでに単離された、果実で発現している全てのADH遺伝子と高い相同性を示す。 またCm-ADH2は、short chain ADHに属する。それぞれのコードされたタンパク質は、酵母による発現で酵素活性が見られた。Cm-ADH1は補酵素としてNADPHを強く優先し、Cm-ADH2はNADHを優先的に用いた。 どちらのCm-ADHタンパク質もリダクターゼ活性を示し、アルコールからアルデヒドへの脱水素化よりもアルデヒドからアルコールへの変換において、10〜20倍低いKm値を示した。 どちらも脂肪族アルデヒドを強く優先したが、Cm-ADH1は3-methylbutyraldehydeなどの分岐アルデヒドを可能であるのにCm-ADH2はできなかった。 Cm-ADH遺伝子は果実において特異的に発現しており、成熟中に上流制御されている。全ADH活性だけでなく、発現はアンチセンスACCオキシダーゼや、エチレン拮抗剤の1-methylcyclopropene (1-MCP) で処理することで強く阻害されることから、 Cm-ADHはエチレンによってポジティブに制御されていると考えられる。これらのデータより、Cm-ADH1, 2 タンパク質は、メロン果実における香りの生合成の制御に特異的に働いていると示唆される。
"An Arabidopsis thaliana methyltransferase capable of methylating farnesoic acid"
Arch. Biochem. Biophys. 2006, 448, 123-132.
[MC1] 松崎
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我々は以前にSABATHファミリーと呼ばれる植物メチルトランスフェラーゼの新規ファミリーの同定について報告した。それは S-adenosyl-L-methionine (SAM) を利用し、多様な一連の植物の化合物におけるカルボキシル部位や含窒素官能基をメチル化する。 Arabidopsis ゲノムは単独で24の異なるSABATH遺伝子を含んでいる。Arabidopsis でのこのタンパク群の基質特異性を同定するため、可能性のある多くの基質を用いて組み替え型精製酵素をスクリーニングした。 ここに我々は、Arabidopsis thaliana 遺伝子 At3g44860 がコードするタンパクがファルネシル酸(FA)に対して高い基質特異性を示したことを報告する。 定常状態で、このファルネシル酸カルボキシルメチルトランスフェラーゼ(FAMT)のKm値は FA に対して 41 uM、SAM に対して 71 uM を示した。 FAMT の3次元モデルは、実験的に決定された Clarkia breweri のサリチル酸メチルトランスフェラーゼ(SAMT)の構造との類似性に基づいて構築され、それは FAMT 活性部位での FA 認識に対する適切なモデルを示唆した。 転写レベルにおける植物の防御応答を誘発することが過去に示されたいくつかの化合物の外的添加に対応して、植物体における At3g44860 の mRNA レベルは増大する。 メチルファルネシル酸(MeFA)は未だ Arabidopsis においては検出されていないが、Arabidopsis 内の FA に特異的で MeFA を生産できる カルボキシルメチルトランスフェラーゼの存在と、いくつかの植物によって作られる食害に対する防御と推定される昆虫若年性ホルモンは、MeFA もしくは類似化合物が Arabidopsis の新規代謝産物である可能性を示唆している。

2008.7.24
"Structure-Activity Relationships of Flavonoids as Potential Inhibitors of Glycogen Phosphorylase"
J. Agric. Food Chem. 2008, 56, 4469-4473.
[BC4] 加藤
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フラボノイドは野菜、果実、茶、ワインに広範に分布する成分である。従って、フラボノイドは普段の食事で大量に消費される。いくつかのフラボノイドは抗糖尿病薬としての可能性を示されてきた。 本研究で、我々はフラボノイドによるグリコーゲンホスホリラーゼ(GP)の抑制に焦点を合わせた。6-Hydroxyluteolin、hypolaetin、quercetagetin は脱リン酸化GP(GPb)の優れた阻害剤として同定された。 それぞれのIC50値は、11.6、15.6、9.7 uMであった。さらに、構造活性相関の研究は、フラボンとフラボノールのB環上3'-, 4'-OHと、C2-C3二重結合の存在が、酵素の認識と結合の重要なファクターであることを示した。 quercetagetin は非拮抗阻害でGPsを阻害した。Ki値は3.5 uMであった。Dixonプロットによる多重阻害の研究は、quercetagetin がアロステリック部位と結合することを示唆した。 初期培養ラット肝細胞において、quercetagetin と quercetin はグルカゴン刺激によるグリコーゲン分解を抑制する。IC50値はそれぞれ、66.2、68.7 uMであった。 これらの結果は、新規のGP阻害剤のグループとして、フラボノイドが保護作用や糖尿病II型のコントロールの改善に寄与する可能性があることを示唆した。

2008.7.10
"Neuroprotective Principles from Gastrodia elata"
J. Nat. Prod. 2007, 70, 571-574.
[BC4] 佐々木N
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血清欠乏に誘導される神経細胞様PC12細胞のアポトーシスは、伝統的な中国の薬である天麻の根茎からの神経保護作用化合物をスクリーニングするために虚血性で低酸素性のモデルとして使用された。 2つの活性化合物であるbis(4-hydroxybenzyl)sulfide (1) とN6-(4-hydroxybenzyl)adenine riboside (2) は既知の15の化合物と一緒に活性フラクションから得られた。化合物2は化学合成によって確認された。 化合物1と2はPC12細胞のアポトーシスを濃度依存的に強力に阻害し(それぞれEC50=7.20μM, 3.7x10-8M)、adenosine A2A receptor binding assayにおいてIC50=42.90μM, 4.660μMであった。

2008.7.3
"Jasmonic acid carboxyl methyltransferase: a key enzyme for jasmonate-regulated plant responses"
Proc. Natl. Acad. Sci. USA 2001, 98, 4788-4793.
[BC4] 佐々木Y
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ジャスモン酸メチルは植物に含まれる揮発性物質で、様々な発生プロセスや防御反応を仲介する重要な制御因子である。 著者らは、Arabidopsis thalianaのジャスモン酸カルボキシルメチルトランスフェラーゼ(JMT)をコードする新規JMT遺伝子をクローニングした。大腸菌で発現した組み換えJMTタンパクはジャスモン酸からジャスモン酸メチルの生成を触媒した(Km=38.5uM)。 JMTのRNAは若い種子では検出されなかったが、ロゼット、葉、開花初期の花には含まれていた。さらに遺伝子発現は、傷害やジャスモン酸メチル処理によって局所的・全体的に誘導が起きた。 この結果は、外部刺激によって発生するシグナルをJMTが認識して反応することができ、そしてこのシグナルにはジャスモン酸メチルそれ自信も含まれているのではないか、ということを示唆している。 JMTを過剰発現した遺伝子組み換えシロイヌナズナは、ジャスモン酸含有量は変化せずに、内生ジャスモン酸メチルが3倍増加した。 組み換え植物体は、VSP, PDF1.2を含むジャスモン酸応答遺伝子の恒常的発現を示した。さらに、毒性を有するボツリヌス菌に対して強い耐性を示した。 著者らのデータは、ジャスモン酸カルボキシルメチルトランスフェラーゼがジャスモン酸制御の植物応答の鍵酵素であることを示唆している。 JMT発現の活性化は、細胞内制御因子や拡散性細胞内シグナルトランスデューサー、そして植物体内外の伝達を媒介する風媒性シグナルであるジャスモン酸メチルの生産を導く。

2008.6.26
"Purification and characterization of S-adenosyl-L-methionine nicotinic acid-N-methyltransferase from leaves of Glycine max"
Biologia Plantarum 2004, 48, 531-535.
[MC1] 松崎
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トリゴネリン(TRG)は細胞周期調節因子として、また塩や水ストレスに応答する浸透圧調整剤として機能するといわれている物質であり、S-アデノシル-L-メチオニン/ニコチン酸-N-メチルトランスフェラーゼ触媒によて形成される、ニコチン酸のNメチル化体である。 その酵素はダイズ(Grycine max L.)の葉から2650倍に精製され、回収率は4%であった。精製は硫安沈殿(45-65%)、リニアグラジエントDEAE-Sepharoseクロマトグラフィー、アデノシン-アガロースアフィニティークロマトグラフィー、ハイドロキシアパタイトクロマトグラフィー、ゲル濾過(Sephacryl-S-200)によって行った。 精製酵素の調製では、SDS-PAGEの41.5kDaのバンドが酵素活性を示した。native酵素はゲル濾過によって分子量約85kDaと推定された。 S-アデノシル-L-メチオニンとニコチン酸を基質としたときのKm値はそれぞれ31μM、12.5μMであった。精製酵素の至適pHは6.5、至適温度は40-45℃であった。また、高濃度のジチオスレイトール(DTT)(10mM)とグリセロール(20%)が精製・貯蔵中に酵素を安定化させた。Hg2+は酵素活性を強く阻害した。
"Effects of Flavonoids and Phenolic Acids on the Inhibition of Adipogenesis in 3T3-L1 Adipocytes"
J. Agric. Food Chem. 2007, 55, 8404-8410.
[BC4] 宗像
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肥満は発展国と発展途上国で世界的な流行病となっており、糖尿病、がん、心臓病、高血圧のような様々な病気の危険因子となっている。本研究では、天然に存在する抗酸化物(フラボノイドとフェノール酸)の、3T3-L1脂肪細胞における脂肪生成抑制の効果について調査した。 試験を行った15個のフェノール酸と6個のフラボノイドの中で、o-クマル酸とルチンが最も高い細胞内トリグリセリドの抑制を示す結果となった。しかしながら、オイルレッドO染色物質(OROSM)は3T3-L1脂肪細胞の細胞数がこれらの化合物によって影響されないということを示した。 グリセロール-3-リン酸デヒドロゲナーゼ(GPDH)活性において、データは試験を行った化合物中、o-クマル酸とルチンが最も高いGPDH活性抑制を持っていることを示した。また、o-クマル酸とルチンはPPARγ、C/EBPα、レプチンの発現を抑制し、アディポネクチンの発現をタンパクレベルで増加させた。 いくつかの天然由来の抗酸化物は、3T3-L1脂肪細胞の脂肪生成を効果的に抑制した。これらの結果は、o-クマル酸とルチンが脂肪細胞の機能をターゲットとして、メタボリックシンドロームの症状改善に影響を与えることを示唆している。
"Isolation and functional characterization of a beta-eudesmol synthase, a new sesquiterpene synthase from Zingiber zerumbet Smith"
FEBS Lett. 2008, 582, 565-572.
常盤野
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本論文において、筆者らはZingiber zerumbet Smith(別名ハナショウガ、白ウコン)の新規セスキテルペン合成酵素遺伝子(ZSS2)を同定した。 大腸菌での機能発現とin vitro酵素アッセイは、この酵素がbeta-eudesmol に加えて5種の副生成物の合成を触媒することを示した。 定量的RT-PCR 解析で、根茎における転写物の蓄積は季節によって大きく変動することが明らかになった。 更なる酵素活性の確認とbeta-eudesmol 生産の代謝工学のポテンシャルを評価するため、メバロン酸経路の6種の酵素遺伝子を大腸菌に導入し、ZSS2 と共発現させた。 メバロン酸経路を補うと、遺伝子導入した大腸菌はin vitro酵素アッセイに類似したセスキテルペン化合物群を生成し、beta-eudesmol の収量は100 mg/L に達した。

2008.6.12
"A novel aromatic alcohol dehydrogenase in higher plants: molecular cloning and expression"
Plant Mol. Biol. 1998, 36, 755-765.
[MC2] 齋藤
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cinnamyl alcohol dehydrogenase(CAD)はp-hydroxycinnamaldehydeから対応するアルコールへの変換を触媒し、リグニン生合成の鍵酵素として考えられている。 前回の報告では、Eucalyputus gunniからCAD (CAD1) の異型を同定した。今回は新規芳香族アルコールデヒドロゲナーゼをコードするCAD1-5のcDNAのクローニングとキャラクタリゼーションの報告である。 CAD1-5の同一性は、cDNAと精製CAD1タンパクのアミノ酸配列との比較、およびCAD1組み換えタンパクの大腸菌内機能発現によって確認した。 nativeと組み換えCAD1はどちらも、リグニン前駆対とされる4-coumaraldehyde, coniferaldehydeに高い親和性を示したが、sianpaldehydeは受容しなかった。 さらに組み換えCAD1は無置換や置換ベンズアルデヒドを含む多くの芳香族を基質とした。 データベースとの配列比較で植物に広く見られるdihydroflabonol-4-reductase(DFR)と有意な相同性があることが明らかとなったが、最も高い相同性が見いだされたのは、リグニン生合成過程においてCADより先に働く酵素のcinnamoyl-CoA reductase(CCR)であった。 RNAブロット解析や免疫染色実験は、CAD1はリグニン化の前後ともに組織や細胞内で発現していることを示した。 in vitroの触媒活性や植物体内の局在性によると、CAD1はリグニン生合成過程において代替酵素として機能するのかもしれない。しかし、フェノール代謝における付加的な役割の可能性を否定するものではない。
"Antifibrotic Phenanthrenes of Dendrobium nobile Stems"
J. Antibiot. 2005, 58, 753-758.
[BC4] 吉富
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2種の新規フェナントレン(1と6)、4種の新規ジヒドロフェナントレン(2〜5)が、既知の13種のフェナントレンとジヒドロフェナントレン(7~19)とともに、Dendrobium nobileの茎のメタノール抽出物から単離された。 筆者らは、6種の新規化合物(1〜6)の単離と構造決定、そして不死化したラットの肝星状細胞系であるHSC-T6に対する、単離化合物(1〜19)の抗線維活性を報告した。 新規化合物(1〜6)の構造は、HREIMS、IRと各種NMR(1H-NMR, 13C-NMR, H-H COSY, HMQC, HMBC, NOESY)測定で決定した。
肝臓の星状細胞(HSC)は肝線維症の発病において鍵となる役割を果たすと考えられている。肝臓の線維形成の間、HSCは活性化され、そして増殖と細胞外基質合成の増加を伴う筋線維芽細胞のような表現形を獲得する。したがって、HSC活性の抑制は肝線維症に対する治療標的として提案された。
全ての単離化合物の抗線維化活性は、MTT(3-(4,5-dimethylthiazol-2-yl)-2,5-diphenyltetrazolium bromide)アッセイを用いて、HSC-T6細胞の増殖への効果を評価することにより測定された。EGCG((-)-epigallocatechin-3-gallate)をpositive controlとして使用した。 化合物6が最も活性が強く、IC 値は9.0μMを示し、positive controlの値と近かった。化合物11,16,18は強力な抑制活性を示した(IC 値はそれぞれ15.2μM,13.4μM,11.0μM)。対照的に、化合物2,7,8,9,13,15,19は不活性だった。本研究で試験された全ての化合物は10〜100μMの濃度範囲で、ラットの初代培養系肝細胞における細胞毒性を見出せなかった。炭素骨格上のヒドロキシ基とメトキシ基の位置は,HSC-T6細胞増殖抑制に重要であると考えられる。

2008.6.12
"Synthesis and Antiviral Activities of Amide Derivatives Containing the alpha-Aminophosphonate Moiety"
J. Agric. Food Chem. 2008, 56, 998-1001.
[BC4] 加藤
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alpha-Aminophosphonate部を含む化合物6は、ベンズアルデヒド誘導体を出発物質として5段階の反応により合成された。 ベンズアルデヒドを水酸化アンモニウム、続いてdialkyl phosphiteで処理してdialkyl N-(arylmethylene)-1-amino-1-aryl methylphosphonates (3)を得た。 3は容易に加水分解されてdialkyl 1-amino-1-aryl-methylphosphonates 5を与えた。5と安息香酸誘導体またはケイ皮酸誘導体との反応で目的物6が得られた。 化合物6群には抗ウイルス活性が認められ、6g, 6l, 6nは市販のNingnanmycin(EC50 = 55.6 ug/mL)と同程度の抗TMV(Tabacco Mosaic Virus)活性を示した。 筆者らが知る限りでは、本論文はalpha-Aminophosphonate部を有するアミド誘導体の合成および抗ウイルス活性の初めての報告である。
"Valinomycin Affects the Morphology of Candida albicans"
J. Antibiot. 2005, 58, 753-758.
[BC4] 佐々木N
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Candida albicansの菌糸増殖抑制を指標として微生物代謝産物のスクリーニングを行ったところ、土壌から単離された放線菌の培養液中の代謝産物の中から抑制物質が見つかった。 その活性物質は、菌糸生長誘発条件下で菌糸の生長を阻害し、酵母細胞の鎖状生長を誘導した。活性物質はValinomycinと同定された。 有効濃度は0.49-62.5ug/mlであった。ValinomycinはさらにCandida tropicalisAureobasidium pullulansの二形成真菌の菌糸生長も阻害した。これらの結果は、Valinomycinが二形成真菌の形態的変化の理解に有用な手がかりとなることを示唆している。

2008.5.29
"Caffeine in Citrus flowers"
Phytochemistry 1999, 52, 19-23.
[BC4] 佐々木Y
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柑橘類の花におけるプリンアルカロイドの役割は開花に関係があるといわれており、全ての花のうち99%でカフェインは雄しべに限定されている。 主なアルカロイドはカフェインで、次いでテオフィリンが相当量含まれている。葯におけるそれらのプリンアルカロイド濃度は全体の0.9%に達し、アラビカコーヒーのカフェイン含量と近い値である。花粉のアルカロイド濃度も同じ範囲にある。非常に低いが密においても有意な濃度で見いだされた。 密が生成される間には相当量のアルカロイド分解があると推定される。この特別な二次的化合物の分布だけでなく、ミツバチなどの鍵花粉媒介者に与えうる影響についてもその生物学的重要性を議論した。
"Antioxidant and antiproliferative activities of raspberries"
J. Agric. Food Chem. 2002, 50, 2926-2930.
[BC4] 宗像
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フェノール性ファイトケミカルが豊富なラズベリーの健康への寄与を研究するため、4種のラズベリー(Heritage, Kiwigold, Goldie, Anne)の抗酸化およびHepG2増殖抑制活性の総量を評価した。 それぞれのラズベリーの総フェノール量と総フラボノイド量を決定した。総フェノール量はHeritage(512.7+-4.7mg/100g)が最も多く、続いてKiwigold(451.1+-4.5mg/100g)、Goldie(427.5+-7.5mg/100g)、Anne(359.2+-3.4mg/100g)の順となった。 同様に総フラボノイド量もHeritage(103.4+-2.0mg/100g)、Kiwigold(87.3+-1.8mg/100g)、Goldie(84.2+-1.8mg/100g)、Anne(63.5+-0.7mg/100g)の順だった。 ラズベリージュースの色がフェノール類、フラボノイド、アントシアニンの総量によい相関を示した。 Heritageは抗酸化活性が最も高く、続いてKiwigold、Goldieの順で、Anneは最も低かった。HepG2ヒト肝臓がん細胞増殖はラズベリー抽出物の用量依存的に抑制された。 抗増殖活性とフェノール類やフラボノイド総量との間に相関は見られなかった。

2008.5.15
"Trigonelline concentrations in salt stressed leaves of cultivated Glycine max"
Phytochemistry 1999, 52, 1235-1238.
[MC1] 松崎
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Trigonelline(N-メチルニコチン酸)はマメ科植物では乾燥種子や葉に比較的高濃度で蓄積されており、塩ストレスに応答して蓄積量が増大する。 論文では17品種のダイズの実生に塩ストレスを与えて栽培した葉と、無ストレス下の葉のTrigonelline濃度と相対的水分含量を分析した。 栽培したダイズは一様にTrigonelline生合成能を有しており、葉のTrigonelline濃度は、塩無処理区が63.8ug-162.4ug/g DWであったのに対し、塩処理区は75.4-218.7ug/g DWであった。 また品種間では17品種中10品種が塩ストレスによりTrigonelline濃度増加を示したが、5品種は減少し2品種は変化が見られなかった。 Trigonellineは浸透圧調節に寄与している可能性があり、ストレス対抗のために細胞を保護する役割があるかもしれない。
"Mono-tetrahydrofuran Annonaceous Acetogenins from Annona squamosa as Cytotoxic Agents and Calcium Ion Chelators"
J. Nat. Prod. 2008, 71, 764-771.
[BC4] 吉富
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8種類の新規mono-tetrahydrofuran(THF)型バンレイシアセトゲニン、squafosacins B,C,F,G (1-4), squafosacins A-c (5-7), cis-annotemoyin-1 (8)がバンレイシ種子から単離された。化合物5, 6はhuman Hep G2 肝癌細胞に対して著しい細胞毒性活性を示した。 またhuman MDA-MB-231乳癌細胞に対しても細胞毒性活性を示した。squafosacins B (1)はhuman Hep G2 肝癌細胞とMCF-7乳癌細胞に対して細胞毒性活性を示した。さらに、mono-THFアセトゲニンとカルシウムイオンとのキレーションについて、等温滴定熱量測定を行った。

2008.5.8
"Characterization of a Saccharomyces cerevisiae NADP(H)-dependent alcohol dehydrogenase (ADHVII), a member of the cinnamyl alcohol dehydrogenase family"
Eur. J. Biochem. 2002, 269, 5738-5745.
[MC2] 齋藤
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(論文の発表当初)酵母プロテオームデータベース(http://www.proteome.com)には260種類の酸化還元酵素があり、そのうち160については同定されている。 この研究グループは、酵母由来の新規アルコール脱水素酵素(ADH)の機能同定を行った。 酵母のMDR(the medium-chain dehydrogenase/reductase)遺伝子の可能性がある21種のうち、活性部位にZnを有するADHに固有のモチーフを持つものは12種であり、さらにそのうち10種の同定は終了している。 今回は残りのうち1種のADHII(YCR105W)の機能解析を行った。 ADHIIは、先に同定されたADHI(64% identity)に似た広い基質特異性を有しており、これらはcinnamyl alcohol dehydrogenaseファミリーに属する。 両者はフーゼル油合成やリグニン分解、そしてNADP(H)ホメオスタシスに関与していると考えられる。

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