教員の自己紹介とメッセージ
嶋崎真仁(戦略プランニング講座 准教授)
現在,どのような研究・教育をしていますか?
大学を活用した地域活性化において、地元商工業と専門教育を受けた学生とをつなぎ、産学の両者がメリットを享受する仕組みを開発しています。従来、大学における産学連携といえば、研究面では技術の共同開発があり、教育面ではインターンシップという仕組みがあります。しかし、従業員十数人という小規模の会社を対象に考えると、現業に支障のない範囲で産学連携を行うことは難しいのが実情です。一方、大学に取ってみれば、学んだことを具体的に適用する機会を作ることは、座学を越えた教育効果が期待できるのですが、企業経営を対象とする経営システム工学では、その機会をなかなか作れていないのが実情でした。 そこで、本学科では平成21年に由利本荘市商工会と組み、商工会の経営指導業務をベースに、そこへ学生を派遣して企業改善を考える演習を始めました。平成22年からは学部必修の演習科目にも採用し、経営を実戦的に学ぶ場として、履修した学生からも好評を得ています。学生が派遣される企業は小売業・サービス業を中心として小規模に事業展開しているところが多いのですが、そこでは一定期間、企業外の若い視点での業務改善の気づきが得られる点で意義があるとして申し込まれており、実際、多くの気づきが得られたとの感想を多数戴いています。また商工会においても、この活動で得られた多くの気づきが、その後の経営指導に役立っているとのことです。大学としても、地元の経営の現場で困っている点を多く抽出することができ、その後の卒業研究指導や研究活動に具体的な事例を意識した取り組みができる点で、地に足のついた研究・教育活動につながるのではないか、と考えています。 こうした意味で、この取り組みでは「三方よし」ならぬ「四方よし」の産学連携の枠組みができていると考えています。現在は、こうした取り組みを他の業種に拡大する際に問題になる点を抽出し、その改善方法について研究しています。
研究・教育をするようになった経緯を教えてください。
元々は品質管理・信頼性工学が専門で、部品の寿命データを統計的に解析するという研究をしていました。東京で教員を始めた頃、東京で聞く生産現場の常識が日本全体の常識だと思っていたのですが、秋田へ赴任して地元の技術者の皆さんの声を聞いているうちに、地方のモノづくりが東京で考えるとおりには動いていないことを知りました。しかし同時に、東京近郊の生産現場には頼りにする大学教員も人材育成のための研修機関も手近にあるのに対し、地方にはこうしたインフラが充実しておらず、こうした機会にも恵まれていないことも分かってきました。そこで、この大学に赴任してから地方公立大学に求められる産学連携のあり方を私なりに模索してきました。一方、大学誘致に参加された地元の皆さんが、大学をどのように活用すれば良いか分からず戸惑っている実情をみるうちに、地域活性化に効果的な大学の活用方法を実践するのも、大学の仕事ではないか、と思い至ったのでした。そして、地域企業へスマートに入っていける方法を模索する中で現在の仕組みが形成されていきました。
研究・教育は社会にどのように役立てられると期待していますか?
若い世代への実戦的教育と地域活性化を結びつけた新たなモデルの構築を通じて、地域社会の知識の底上げに役立つのではないかと思っています。
研究・教育の面白さ,喜びは何ですか?
問題意識に根ざした研究を通じて、課題が発見され、それが解決できれば、当事者は好ましい方向に前進することができます。例えば、ここで紹介したような制度で、学生が課題発見・問題解決の実践を実施することを通じて、関係者が好ましい状況に少しでも近づけば、それが私にとって一番の喜びです。
学生or受験生に一言お願いします
高校での勉強と同時に、社会にも広く目を向け、関心事を増やしていってください。そして、ご両親や先生を含めた大人の人とも積極的に話をして下さい。最近は Twitter や Facebook といったソーシャルメディアがインターネット上に広がっていますので、皆さんの関心事に関係のある人を探して質問を投げかけてみても良いでしょう。そうやって関心事に対する理解を深めていけば、関連する知識を吸収するための基盤が必要となることも分かるでしょう。それを提供しているのが大学です。是非、そうした問題意識を持って大学へ進んで下さい。現在皆さんが持っている問題意識が、皆さんを将来に導いてくれることでしょう。