AI技術を活用した生活保護業務支援

目的

生活保護とは、資産や能力のすべてを活用しても生活に困窮する人に対し国が経済的な援助を行う制度である。 生活保護申請者に対応する生活保護ケースワーカーは、その4分の1が1年未満、3分の2が3年未満の経験しかもたないことが報告されており、 ケースワーカーが生活保護手帳等の膨大な業務文書を効率よく検索できる機能の要望が高い。 そこで、情報工学科では、北日本コンピューターサービス株式会社との共同研究を通して、人工知能(AI)技術より膨大な業務文書を効率よく検索できる機能の実現に向けて研究を進めている。

取組み

生活保護業務支援のための質問応答システムの開発

生活保護ケースワーカーが膨大な業務文書を効率的に検索する機能の実現を目指して、生活保護業務支援のための質問応答システムの開発に取り組んでいる。 質問応答システムとは、ケースワーカーが業務に関する質問を自然言語(日本語)で入力したとき、生活保護手帳等の業務文書の該当箇所を検索し提示するシステムである。 これにより、ケースワーカーの業務効率が改善し、生活保護業務システムの付加価値が向上することが期待される。

図1に示すように、質問応答システムは、質問応答データベースと質問応答アルゴリズムから構成される。 質問応答データベースには,典型的な質問と,その回答根拠となる業務マニュアルの該当文章(以下,応答と呼ぶ)の対が蓄積されている.質問応答アルゴリズムは,入力された質問と類似した質問・応答対をデータベース中から探索する. これまでの共同研究の成果として、2022年9月の時点で、5,760件の質問応答対から成る生活保護質問応答データベースを構築し、1位正解率82%、3位内正解率94%の質問応答アルゴリズムを開発した。 今後は、生活保護システムの実際の利用者による評価を行い、生活保護業務支援のための質問応答システムの性能向上を目指す。

成果の報告、発表

  • 堂坂浩二, 金子和樹, 木村幸司, 伊東嗣功, 石井雅樹, 「生活保護業務支援のための質問応答システムの開発と評価」, 第21回情報科学技術フォーラム講演論文集, pp.235-238 (2022.9)